コンサルタントコラム

機関投資家が重視するESG課題で「生物多様性」が急上昇、GPIF調査

2024.6.19

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2024年3月11日、株式・債券の運用機関が考える今年の「重大なESG課題」を発表した。それによると、昨年に比べて「生物多様性」を重視する回答が大きく増えた。国内株パッシブ(1)運用機関の100%、国内株アクティブ(2)運用機関の71%が回答した。前年はそれぞれ83%、57%だった。なお、「情報開示」と「気候変動」はともに前年同様の100%で、ここ数年の関心の高さを裏付ける結果だった。

(出典:GPIFのデータをもとにMS&ADインターリスク総研が再編)

GPIFは増加の理由に、2023年9月の自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の最終提言の公表を指摘。一方、投資家側でも複数のイニシアティブが始動するなど生物多様性への関心や気運が高まる背景もあった。例えば、2022年10月には190の機関投資家(運用総額23.6兆ドル)によるイニシアティブ「Nature Action100」が開催。2023年10月には、責任投資原則(PRI)の年次カンファレンス「PRI in Person」が東京で初めて開催され、129の賛同機関(運用総額9兆ドル)からなる「Spring」の設立が発表された。

この調査はGPIFが毎年公表。今回は、国内株13機関、外国株28機関、国内債券14機関、外国債券9機関が回答した。

GPIFは、2023年度版の「優れたTCFD開示」と「優れた統合報告書」の結果も公表した。

「優れたTCFD開示」は、国内株式の運用を委託している運用機関13社に、それぞれ最大5社の選定を依頼。のべ29社(前回28社)を選んだ。結果、日立製作所が最も多い回答数を獲得し、選定した運用機関からは、▽TCFD提言・実施ガイダンスに沿った内容で取り組みレベルが高い ▽複数シナリオ下におけるセグメント別戦略を詳細なマトリクスで開示するなど、高いレジリエンスを有 していることを明確に提示している―などが評価された。

一方、「優れた統合報告書」は最大10社の選定を依頼。のべ70社(前回67社)が選出され、伊藤忠商事が最多だった。運用機関から、▽前期からの課題や施策・取組状況・新たな課題までの時系列を意識した組立て ▽それぞれの事業に関連性の高いリスク・機会の分析 ▽それらに対する事業投資の考え方を詳細に記載――などを評価するコメントが挙がった。

1)パッシブ:市場全体の値動きと同様の投資成果を目指す運用手法
2)アクティブ:株価の上昇が期待される銘柄を厳選して投資し、ベンチマークを上回る投資成果を目指す運用手法

【参考情報】
2024年3月11日付 年金積立金管理運用独立行政法人 HP:
https://www.gpif.go.jp/esg-stw/20240311_esg_issues.pdf

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この記事は「ESGリスクトピックス2024年度 No.2」(2024年5月発行)の掲載内容から抜粋しています。
ESGリスクトピックス全文はこちらからご覧いただけます。
https://rm-navi.com/search/item/1702

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