
CSPMとは? クラウドセキュリティを強化する新たな手段
2025.3.25
デジタル化が進む現代、クラウド環境でのサービスやシステム利用が拡大する中、セキュリティリスク管理はますます重要になっています。
そこで注目されているのがCSPM(Cloud Security Posture Management)です。CSPMはクラウド環境における設定ミスや脆弱性を検出し、セキュリティを強化するためのソリューションです。クラウドの内部セキュリティ管理を効率化し、リスクを低減することができます。
本記事では、CSPMの定義や機能、導入することで得られるメリットや、ASMとの関係について詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
CSPM(Cloud Security Posture Management)とは
CSPMについて定義やその必要性について解説します。
CSPMの定義
CSPM(Cloud Security Posture Management)は、クラウド環境全体のセキュリティ設定を監視し、設定ミスやコンプライアンス違反、脆弱性を検出して通知するソリューションです。
具体的には、クラウド環境の設定を継続的にスキャンし、セキュリティポリシーに基づいた基準と比較して問題を検出します。また、自動アラート機能により、設定の異常やリスクのある変更が行われた際、即座に通知し、迅速な対応が可能です。これに加え、修正アドバイスも提供します。
クラウドを多用する企業にとって、設定ミスや不正操作によるセキュリティリスクを未然に防ぐ重要なツールとなります。
なぜCSPMが必要なのか
2006年にアマゾンウェブ サービス(AWS)がパブリッククラウドサービスとして一般提供されたことを皮切りに、GoogleやMicrosoftも市場に参入し、クラウドの利用が急速に増え始めました。2010年代にはクラウドサービスの需要が増大し、IaaS ※1やPaaS ※2が主流となりました。クラウドがデフォルトのプラットフォームとして認識され始めたのもこの時期です。
※1 Iaas(Infrastructure as a Service):クラウドで仮想サーバーやストレージを提供するサービス
※2 PaaS(Platform as a Service):クラウドでアプリ開発環境を提供するサービス さらに2020年代になると、リモートワークの普及や柔軟なリソース管理の需要がますます増え、クラウドがインフラの中心となります。
しかしその一方で、設定ミス、コンプライアンス違反、不正アクセスによるリスクも増加しています。このような課題を解決するために、CSPMをはじめとするクラウドセキュリティソリューションの重要性が高まっています。クラウド環境では、アクセス権限の設定が複雑で、リソースも動的に変化します。そのため、適切に管理されなければセキュリティに抜け穴が生じる可能性があります。
CSPMはこれらの課題に対応し、企業が安全にクラウドを活用する基盤を整えることを目的としています。これにより、設定ミスやコンプライアンス違反を低減でき、クラウド利用の安全性が向上します。
CSPMの導入メリット
CSPMを導入することにより得られるメリットは、主に以下の3つです。
- クラウド環境のセキュリティを自動で可視化・最適化
- コンプライアンス遵守
- 運用効率の向上
1.クラウド環境のセキュリティを自動で可視化・最適化
CSPMはクラウド環境内の設定情報やリソース構成をリアルタイムで取得し、セキュリティリスクを自動的に可視化します。例えば、アクセス権限の設定ミスや不要なオープンポートなどの脆弱性を自動検出し、これらを最適な状態に修正します。これにより、クラウド全体のセキュリティ体制が強化されます。
さらに、機械学習などを活用した異常検知技術の進歩により、予期しない変更や異常な動作が発生した場合、即座にアラートを発信し対応が可能です。これにより、ダウンタイムやデータ漏洩といったリスクを最小限に抑えられます。
2.コンプライアンス遵守
クラウド環境の拡大に伴い、企業は各国の法規制や業界標準に準拠し続ける必要があります。CSPMは、クラウド環境がGDPR ※3やHIPAA ※4などの規制に適合しているかを継続的に監視し、自動でコンプライアンスチェックを行います。また、規制遵守の証明に役立つレポートを生成するため、効率的なコンプライアンス管理が可能です。
※3 GDPR(General Data Protection Regulatio):EUの個人データ保護規則
※4 HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act):米国の医療情報保護法
万が一、コンプライアンス違反が検出された場合でも、CSPMは即座にアラートを発信し、迅速な是正措置を支援します。これにより、企業は法的トラブルや罰則を回避し、安心してクラウドを利用できます。
3.運用効率の向上
CSPMは、クラウド環境におけるセキュリティ管理を自動化し、従来手作業で行われていた設定チェックや修正を効率化します。これにより、セキュリティ担当者は煩雑な運用管理業務から解放され、コア業務に集中できます。
また、セキュリティ管理のプロセスが効率化されることで、インシデント対応にかかる時間やコストも削減され、企業全体のコスト効率が向上します。この結果、クラウド環境を安定的に運用しつつ、リソースを最適に活用してビジネス成長を支えることが可能になります。
CSPM活用の注意点
CSPMを活用する際に、いくつか気をつけたい注意点があります。まず、CSPMの自動検出・修復機能を過信しないということです。誤検知や誤修正が発生する可能性があるため、修正作業は慎重に行う必要があります。
さらに、CSPMは一般的なセキュリティポリシーをベースに動作するため、企業ごとの業務要件やクラウド環境に合わせたポリシーのカスタマイズが不可欠です。カスタマイズを怠ると、不必要なアラートが多発し、運用負担が増加する恐れがあります。
また、クラウド環境はリソースが動的に変化するため、CSPMの効果を最大化するには継続的なモニタリングとポリシーの更新が必要です。特に複数のクラウドプロバイダーを利用している場合、設定やポリシーを整合させる難易度が高く、慎重な管理が求められます。
最終的に、CSPMを効果的に運用するにはセキュリティリスクとコストのバランスを取り、専任の人材が継続して対応する仕組みが欠かせません。
CSPM導入プロセス
CSPMの導入プロセスは、既存のクラウド環境のセキュリティ状況を評価することから始まります。セキュリティ評価では、クラウドプロバイダーごとに設定の現状を分析し、潜在的なリスクや問題点を特定します。この評価に基づき、業界標準や法規制、さらには企業独自の業務要件を考慮したセキュリティポリシーを策定します。
次に、選定したCSPMツールを導入し、環境内のリソースや設定をモニタリングする体制を整えます。この段階では、ツールの設定や監視対象を適切に定義し、運用テストを実施します。運用テストでは、誤検知や過剰なアラートが発生しないよう設定を微調整し、最適な動作状態を確立します。
また、全社的な展開を進める際には、関連部門への教育とトレーニングが欠かせません。特に、CSPMが自動で発信するアラートやレポートの内容を正しく理解し、適切な対応が取れるよう教育が必要です。導入後も、定期的なレビューを通じてセキュリティポリシーを更新し、新たなリソースの追加や環境の変更に即応できる体制を維持します。これにより、CSPMを効果的に運用し、クラウド環境全体のセキュリティリスクを低減することが可能になります。
ASM(アタック サーフェス マネジメント)との関連
CSPMとASMをどう活用するか
CSPMとASMは、クラウド環境を異なる視点から保護するソリューションですが、相互に補完し合うことでセキュリティの高い効果を発揮します。
CSPMは主にクラウド内部のリソースや設定を最適化し、意図しない設定ミスやポリシー違反を検出・修正します。一方、ASMは外部からの視点を重視し、攻撃面(アタックサーフェス)の管理に特化しています。具体的には、公開されたリソースやサービスを特定し、それらが攻撃者に悪用されるリスクを可視化します。
ASMは、特に外部の攻撃者が利用しそうな弱点(誤って公開されたストレージや不要なオープンポートなど)を早期に発見し、迅速に対策を講じることを可能にします。この機能は、クラウド環境が外部に公開されるリソースを持つ企業にとって重要です。
たとえば、誤って公開されたストレージバケットや未使用のオープンポートがある場合、ASMはそれらを検知して警告を発し、管理者が適切な措置を取れるように支援します。
ASMツールについて詳しく知りたい方は以下の記事もご参照ください
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まとめ
CSPMは、クラウド環境のセキュリティを強化するために欠かせないソリューションです。自動的な脆弱性検出、リアルタイムのコンプライアンス監視、セキュリティ設定の最適化により、クラウド利用に伴うリスクを効果的に軽減します。
さらに、ASMと連携することで、内部と外部の両面からクラウド環境を包括的に確認し、セキュリティ体制を強化することが可能です。クラウドがビジネスの基盤となる現代において、適切なセキュリティ対策を導入することは、業務の継続性やデータ保護、法規制遵守のすべてにおいて重要です。
CSPMやASMなどのソリューションを活用し、変化し続けるクラウド環境に対応した最適なセキュリティ対策を構築することが求められます。