ESGリスクトピックス(2025年8月)
2025.8.1
『ESGリスクトピックス』では、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)に関する国内・海外の最近の重要なトピックスをお届けします。
2025年8月のトピックス
サステナビリティ情報開示
○ 国内企業の非財務情報開示が充実も、本業寄与の「説明力」が課題、IR実態調査
日本IR協議会が2025年6月12日に公表した「第30回IR活動の実態調査」によると、国内上場企業のIRやサステナビリティへの対応の意識がさらに向上したことが分かった。一方で、本業のビジネスへの統合や企業価値向上への寄与についての説明で課題も浮き彫りになった。
調査結果によると、ESGなどの非財務情報開示を「実施している」と回答した企業が75.9%と前回調査から2.4ポイント増加。また、ESG・SDGsと関連付けた開示やマテリアリティの特定と企業価値向上への貢献などの開示も着実に増加していた。さらに、「非財務情報を中長期的な経営戦略のKPI(成果指標)と結び付けて説明している」との回答も同5.8ポイント増の44.8%だった。これらから、非財務情報・ESG情報の開示および経営戦略への統合などの開示が充実する傾向が分かる。
一方で、非財務情報の開示や投資家などとの対話に関する課題認識の質問では、「本業のビジネスと非財務情報とを分かりやすく関連付けること」(60.0%)が前回同様に最多。次に「自社のESGへの取り組みが、中長期的に会社の業績といった経済的な貢献につながる蓋然性について、説得力のある証明を行うこと」(57.9%)が続き、多くの企業が開示の「質」と「説明力」を課題と感じていた。ESG取り組みが企業価値向上にどのように寄与するかの説明の必要性を認識し、非財務情報と財務的成果の関連付けに苦慮する姿が浮かび上がる。
さらに、東証プライム上場で時価総額上位の企業から有価証券報告書でのサステナビリティ情報開示で適用が義務付けられたSSBJ基準への対応について、2027年3月期の適用時期に先立って任意に開示すると回答した企業は「2026年3月決算から」が2.6%、「2025年3月決算から」も1.2%だった。一方、「未着手」との回答が50%。そのうち、プライム市場上場企業19.8%、スタンダード・グロース・その他市場上場企業30.2%だった。少数の先行企業が任意適用に向けて動き始めた半面、大半は義務化の先送りを見越した“様子見”姿勢のようだ。この姿勢の違いは、将来的なレピュテーションリスクや投資家からの信認格差につながる懸念もある。
そのほか、統合報告書の作成企業の割合は同 8.6 ポイント増の52.5%で、初めて過半数を超えた。ただし、「作成にあたる人員が不足していること」(46.4%)や、「ステークホルダーのニーズが充足されているか不明瞭であること」(41.6%)などを課題に抱える企業が多かった。
本調査は2025年3月から4月にかけて、3月末時点の全上場会社4,113社を対象に以下について調査を実施。回収率は23.4%(962社)だった。
【参考情報】
2025年6月12日付 日本IR協議会HP: https://www.jira.or.jp/activity/research.html
TNFD・自然資本
○ TNFD・GRI 生物多様性・自然関連情報開示に関する事例集を共同発表
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自然関連情報開示の促進・発展を目的として、2025年6月30日、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)と国際非営利団体のGlobal Reporting Initiative(GRI)は、企業の生物多様性・自然関連情報開示の好事例をまとめた事例集を公表した。事例集では、下表に示す7社の自然関連課題(依存・インパクト、リスク・機会)の評価事例が紹介されている。
| 企業名 | セクター | 依存、インパクトの評価方法 |
|---|---|---|
| CDL | 不動産 |
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| Ecopetrol | 石油・ガス |
|
| Enel | 公共事業 |
|
| Iberdrola | 公共事業 |
|
| JSWSteel | 金属・鉱業 |
|
| Reckitt | 消費財 |
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| Vale | 金属・鉱業 |
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出典:GRI & TNFD case studiesガイダンス情報をもとにMS&ADインターリスク総研作成
特にEnelは、依存・インパクトの大きい拠点であるホットスポット評価を、5つのステップ(どこの土地を占有しているか(STEP1)、占有している土地は自然を改変しているか(STEP2)、重要な種が生息しているか(STEP3)、インパクトの強度はどの程度か(STEP4)、事業との関連性はどの程度か(STEP5))で行っており、これから自然関連課題を検討する企業に対して参考となる事例として紹介されている(図1)。
<図1 依存・インパクトの大きい拠点(ホットスポット)の特定プロセス(Enel)>


出典:GRI & TNFD case studies資料より抜粋
STEPは当社が附番
リスク・機会の評価については、本事例集で紹介されている先進開示企業であっても具体的な手法は開発途上であり課題であると言及されている。各社の評価方法と課題として以下が述べられている。
| 企業名 | セクター | リスク・機会の評価方法と課題 |
|---|---|---|
| CDL | 不動産 |
|
| Ecopetrol | 石油・ガス |
|
| Enel | 公共事業 |
|
| Iberdrola | 公共事業 |
|
| JSWSteel | 金属・鉱業 |
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| Reckitt | 消費財 |
|
| Vale | 金属・鉱業 |
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出典:GRI & TNFD case studiesガイダンス情報をもとにMS&ADインターリスク総研作成
本事例集は、自然関連課題の評価手法や開示方法、開示にあたっての現状の課題等について具体的に把握することができるため、これから自然関連情報開示を検討する企業、または開示のステップアップを検討している企業は確認することが推奨される。
【参考情報】
2025年6月30日付 Global Reporting Initiative HP: https://www.globalreporting.org/news/news-center/gri-and-tnfd-advance-nature-reporting-through-practical-guidance/
SDGs
○ 2025年版「持続可能な開発報告書」:SDGs達成への課題と企業への示唆
2025年版「持続可能な開発報告書」が2025年6月24日に発表され、世界と各国の持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた現状と課題が明らかになった。この報告書は、国連の関連組織である「国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」が毎年公表するものであり、今年は昨今の国際情勢がSDGsの達成にどのような影響を及ぼしているかに焦点を当てて分析している。
報告書によれば、ウクライナやガザでの戦争、米国のSDGsに対する反対姿勢、世界的な国際援助の削減が、SDGs達成の大きな障害となっているとされている。特に、国連加盟国間の対立やパリ協定などの多国間合意の弱体化がSDGs達成への大きな壁となっている。
SDGsの169のターゲットのうち、2030年までに達成が見込まれるのはわずか17%であり、残りの83%は進捗が限定的か停滞している。報告書では、2015年からの進捗に基づくと17のゴールはいずれも2030年までに達成されないと見込まれている。特に、目標2(飢餓をゼロに)、目標11(住み続けられるまちづくりを)、目標14、目標15(海洋と陸地の環境保護)、目標16(平等と公平)について軌道から大きく外れていると指摘された。これらの目標が達成困難な理由として、COVID-19による経済停滞、貧困の拡大、自然災害の頻発、紛争による資源逼迫、国際協調の停滞などによる影響だと考えられる。日本のSDGs達成度は、世界167ヵ国中19位と比較的高い評価を受けているものの、昨年よりもランクが1下がった。日本の目標達成状況のうち大幅に遅れているのは、目標5(ジェンダー平等)、目標12(生産と消費)、目標13(気候変動)、目標14と15(海洋と陸地の環境保護)であり、これらの分野での積極的な取り組みが求められている。
この報告書は、世界および各国がSDGs目標をどの程度達成しているかを示すものであり、企業活動は国のスコアに間接的に影響を与えている。したがって、自社のサステナビリティ活動は、日本のSDGs達成の一部と捉えることができる。日本企業はこの結果を真摯に受け止め、SDGs達成に向けた対応を強化し、国際的な基準に基づく対策を推進することが求められている。特に遅れが見られる目標については、企業ごとのガバナンスや進捗状況を見直し、より野心的な取り組みを講じることが期待される。
| 世界での達成状況 | 日本での達成状況 | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| 目標 | 状態 | 進捗 | 状態 | 進捗 | |
| 1 | 貧困をなくそう | 大きな課題が残る | 停滞 | ほぼ達成 | 達成 |
| 2 | 飢餓をゼロに | 大幅な遅れ | 停滞 | 大幅な遅れ | 後退 |
| 3 | すべての人に健康を福祉を | 大幅な遅れ | 改善 | ほぼ達成 | 改善 |
| 4 | 質の高い教育をみんなに | 大きな課題が残る | 停滞 | 少々課題が残る | 停滞 |
| 5 | ジェンダー平等を実現しよう | 大きな課題が残る | 改善 | 大幅な遅れ | 改善 |
| 6 | 安全な水とトイレを世界中に | 大きな課題が残る | 停滞 | 少々課題が残る | 改善 |
| 7 | エネルギーをみんなにそしてクリーンに | 大きな課題が残る | 改善 | 少々課題が残る | 改善 |
| 8 | 働きがいも経済成長も | 大きな課題が残る | 停滞 | 少々課題が残る | 改善 |
| 9 | 産業と技術革新の基盤をつくろう | 大きな課題が残る | 改善 | 達成見込み | 改善 |
| 10 | 人や国の不平等をなくそう | 有効なデータ | |||
| 11 | 住み続けられるまちづくりを | 大きな課題が残る | 停滞 | 達成見込み | 改善 |
| 12 | つくる責任つかう責任 | 大きな課題が残る | 停滞 | 大幅な遅れ | 改善 |
| 13 | 気候変動に具体的な対策を | 大きな課題が残る | 停滞 | 大幅な遅れ | 停滞 |
| 14 | 海の豊かさを守ろう | 大幅な遅れ | 停滞 | 大幅な遅れ | 停滞 |
| 15 | 陸の豊かさも守ろう | 大幅な遅れ | 停滞 | 大幅な遅れ | 停滞 |
| 16 | 平等と公平をすべての人に | 大幅な遅れ | 停滞 | 少々課題が残る | 停滞 |
| 17 | パートナーシップで目標を達成しよう | 大きな課題が残る | 停滞 | 大きな課題が残る | 改善 |
出典: 2025年版「持続可能な開発報告書」(https://dashboards.sdgindex.org/ )をもとにMS&ADインターリスク総研作成
【参考情報】
2025年6月24日付 2025年版「持続可能な開発報告書」:https://dashboards.sdgindex.org/
2025年7月1日付 PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000077.000027673.html
ジェンダー
○ 男女格差ランキング、日本は今年もG7最下位、根強い政治・経済の低迷が全体引き下げ
世界経済フォーラム(WEF)が2025年6月11日に発表した「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書2025」によると、日本の男女間の格差は依然大きく、スコアが世界平均以下と低迷していることが明らかになった。
レポートによると、日本の「平等スコア」(男女平等達成度)は総合で0.666。前年比で0.003ポイント改善したものの、順位は前年と同じ118位(148か国中)。今年も、主要7カ国(G7)で最下位となった。なお、世界全体のスコアは0.688で、日本は下回った。同スコアは、「1」が完全に平等な状態を示す。
カテゴリー別では、教育や健康分野で例年通り、格差が比較的小さい。順位は、教育が72位(前年66位)、健康が50位(同58位)だった。一方で、依然深刻なのは経済と政治の両分野だ。レポートが「スコアの改善が顕著」と評した経済だが、順位は依然112位(同120位)にとどまる。労働参加率や賃金などが若干改善したものの依然低水準。とりわけ、女性管理職比率の低さは際立っており、前年より3ランク上昇したものの127位と低位に沈んだ。例えば、経済協力開発機構(OECD)の20年当時の統計で、フルタイム正社員の男女賃金差は22.1%と先進国中で最低クラスだった。経済参画において女性の能力発揮を阻害する社会構造的問題が根強く残ることが推察できる。
また、例年、全体スコアの引き下げ要因となっている政治は総合で0.085と前年(0.118)から大きく後退、順位も12位ダウンの125位だった。昨年のレポートでは、23年9月の第2次岸田内閣で女性が5人入閣したことなどを受けて政治のスコアは過去最高値を記録。しかし、24年11月発足の石破内閣で女性閣僚が2人に減ったことなどで一転した。女性の国会議員比率のスコアも0.186と低く、意思決定層での男女不平等が顕著と評価された。
日本政府は25年6月、格差改善を目指して「女性活躍・男女共同参画の重点方針(女性版骨太の方針)2025」を決定している。▽女性役員比率の向上▽女性活躍推進法の延長・強化▽賃金格差の是正と支援――などを重点項目に挙げた。
一方、今回のレポートでトップはアイスランドで16年連続。次いでフィンランド、ノルウェーと続き、上位はEU加盟国が目立つ。また、米国も所得格差や健康寿命に課題があるものの、教育は完全平等で、経済参加も高水準を維持した結果、前年より1ランク上昇の42位だった。
WEFは、同レポート初版の2006年から現在までに格差が改善したペースを前提にすると「世界のジェンダー平等達成にはあと123年かかる」と指摘し、極めて緩慢な改善状況に警鐘を鳴らしている。
上位の国では、2023~2024年にかけて以下のような政策が打ち出している。
| EU | 上場企業取締役のジェンダーバランス改善指令 | 全取締役の女性比率33%以上を求める。 |
| 賃金透明性指令 | 従業員100人超企業に男女賃金格差の定期公表義務化。 | |
| スペイン | 男女同数法(平等な代表法) | 政党の選挙候補者を男女各40%以上、上場会社の取締役会で女性40%以上などを義務化。 |
| 生理休暇の法制化 | 体調不良を伴う場合に有給休暇が取得可能。 | |
| 米国 | 賃金透明化法(ニューヨーク、カリフォルニア、コロラド各州など) | 求人票への給与下限・上限明示などを義務化。 |
| 妊娠労働者公平法(連邦法) | 妊娠中・出産後労働者への合理的配慮を企業に義務付け。 |
(出典:下記1~3をもとにMS&ADインターリスク総研作成)
1.Reuters(2023年3月4日)「Spain announces law promoting gender parity in politics and business」
https://www.reuters.com/world/europe/spain-announces-law-promoting-gender-parity-politics-business-2023-03-04/
2.欧州理事会プレスリリース(2023年4月24日)「Gender pay gap: Council adopts new rules on pay transparency」
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2023/04/24/gender-pay-gap-council-adopts-new-rules-on-pay-transparency/
3.Sustainable Japan(2023年4月26日)「EU給与透明性指令が成立。前職給与確認禁止。男女賃金格差の当局報告義務も」
https://sustainablejapan.jp/2023/04/26/eu-pay-transparency-directive/89368
【参考情報】
2025年6月11日付 世界経済フォーラムHP:https://www.weforum.org/publications/global-gender-gap-report-2025/
サイバーセキュリティ
○ 個人情報の漏えい、過去最多 個人情報保護委員会が年次報告を公表
個人情報保護委員会は2025年6月10日、委員会の所掌事務の処理状況について毎年国会に報告する資料「令和6年度個人情報保護委員会年次報告」(以下、「本報告」という。)を公表、個人情報の漏えいが過去最多となったことが明らかになった。
本報告は、個人情報保護委員会が法令に基づき作成し、国会へ提出する公式な年次行政報告書であり、個人情報保護委員会の活動状況や個人情報保護の現状を示す公的資料である。個人情報の漏えい等について、人数、種類(顧客情報、従業員情報またはその他の情報)、形態(電子媒体または紙媒体)、漏えい元、原因別に確認することができる。
本報告によれば、法令上報告が義務付けられている「漏えい等事案※1に関する報告の処理件数」が19,056件、前年度12,120件と比較すると57%増となり、過去最多を記録した。なお、19,056件は「漏えい等事案」の件数であり、実際に漏えい等した人数※2ではない。例えば、1件の事案で50,001人以上が漏えい等した事案はこのうち144件ある。
漏えい元に着目すると、報告者からの漏えい等の総件数9,494件のうち、最も多かった原因は、7,923件(83.5%)の誤交付・誤送付・誤廃棄であり、ヒューマンエラーに起因するものが多い。また、委託先からの漏えい等の総件数2,248件のうち、最も多かった原因は、1,429件(62.8%)の不正アクセスであり、報告者からの漏えい等とは傾向が異なる。
個人情報の漏えい等が増加の一途をたどる中、その防止のための施策を推進することが急務である。個人情報取扱事業者等は、組織内の運用プロセスや教育・訓練の見直しにより、漏えい等の原因として最も多いヒューマンエラーの防止のための施策を実施することが望ましい。また、委託先からの漏えい等の原因として最も多い不正アクセスを防止するため、委託先選定時のセキュリティ要件の明確化や定期的な監査・点検を行うことが推奨される。
<個人データ及び保有個人情報の漏えい等事案の状況(漏えい等元及び漏えい等原因)>
(期間:令和6年4月1日~令和7年3月31日)


出典:個人情報保護委員会「令和6年度個人情報保護委員会年次報告」をもとにMS&ADインターリスク総研作成
1)「漏えい等事案」には、「漏えい」のほか、「滅失」、「毀損」の事案及びこれらのおそれがある場合を含む。
2)「漏えい等した人数」とは、漏えい等した個人情報によって識別される特定の本人の数であり、人数が確定できない場合は、漏えい等した可能性のある本人を含む最大人数としている。
【参考情報】
個人情報保護委員会「令和6年度個人情報保護委員会年次報告」: https://www.ppc.go.jp/files/pdf/070610_annual_report.pdf
ガバナンス
○ 金融庁「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集」を公表
金融庁は2025年6月2日、「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集」(以下、「事例集」という)を公表した。本事例集は、取締役会の実効性向上に積極的に取り組む東京証券取引所プライム市場またはスタンダード市場に上場している18社へのヒアリング結果を集約・分析したものである。
本事例集では、取締役会の機能強化に向けて、「戦略的アジェンダセッティング」「リスクテイクを支える環境整備」「実効性の高いモニタリングを実現するコミュニケーションの深化」の観点から、さまざまに工夫された取り組みを整理している。特に社外取締役に対しては、社内取締役との間の情報の非対称性を解消すべく、事務局が追加的な配慮をしている場合が多く、事務局との適切な距離感を保ちつつ、必要な情報提供が受けられるよう、社外取締役からの能動的な働きかけも有用と指摘している。
| 戦略的アジェンダ セッティング |
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| リスクテイクを支 える環境整備 |
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| 実効性の高いモニ タリングを実現す るコミュニケーシ ョンの深化 |
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出典:金融庁「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集」の3頁をもとにMS&ADインターリスク総研作成
本事例は上記のほかにも、「コーポレートカルチャー」「レジリエンス」「人的資本経営」「女性活躍推進」等、多岐にわたる取り組みも紹介している。
金融庁によると、本事例集は最終版ではなく、今後、企業と投資家の議論の場を設けること等を通じて、継続的に質を高め、更新していくことを想定。コーポレートガバナンス改革の実質化に向けて、関係者と連携しつつ、企業の取締役会の機能強化に関する取り組み事例の収集や共有を継続していくという。
企業の置かれた環境やこれまでの歴史等はさまざまであり、取締役会の機能強化に向けた取り組みにベストプラクティスがあるものではない。一方、各社の課題において共通する部分も多い中で、本事例集で紹介された取り組み例は、参考になる部分は少なくない。今後、本事例集は随時更新されていく予定であるため、その動きを注視されたい。
【参考情報】
2025年6月2日付 金融庁HP: https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/siryou/20250602/05.pdf
コンプライアンス
○ カスハラ対策や就活セクハラ対策を企業に義務づける改正法が成立
労働施策総合推進法が改正され、2025年6月11日に公布された。
本改正は、近年、カスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」という)や職場に出入りする学生を含む求職者等へのセクシャルハラスメント(以下、「就活セクハラ」という)が社会問題化していることを受け、誰もが安心して働ける職場環境の実現を目的として行われた。本改正により、カスハラおよび就活セクハラへの対策が、企業に義務付けられることとなる。本改正法は、公布の日から起算して1年6月以内で政令で定める日に施行となる。
いずれのハラスメントにおいても、企業が講ずべき具体的な措置の内容等は、今後、指針が示される予定であるが、これらの問題の重大さから、すでに対応を進めている企業や業界団体も少なくない。
企業においてはパワハラやセクハラの対応と同様、これらのハラスメントへの対応として、
- 企業としての方針等の明確化と具体化、およびその周知・啓発
- 相談体制の整備・周知
- 発生後の迅速かつ適切な対応、抑止のための措置
を実施していくことが求められる。法規制を踏まえた制度整備にとどまらず、現場で機能する仕組みとして根付かせることが肝要であり、また、本問題を重大な人権侵害問題として捉え、対応していくことが企業には期待される。
【参考情報】
2025年6月11日付 厚生労働省HP: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html
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