コラム/トピックス

SBTNが初の海洋域に関する目標設定手法を公表

2025.5.20

Science Based Targets Network(SBTN)は2025年3月18日、海洋域に関する科学的根拠に基づく目標設定手法を公表した。本手法は、世界自然保護基金(WWF)とコンサベーション・インターナショナルのリーダーシップのもと開発された。海洋生態系の保護とビジネスの長期的なサステナビリティ強化を目的としており、サプライチェーンにおいて水産物を漁獲または調達している企業が対象となる。企業が最新の海洋科学をビジネス戦略に組み込むことで、サプライチェーンのレジリエンスを強化し、海洋劣化の主要因に取り組むことに資するものとなっている。

本手法は「1.評価」「2.優先順位付け」「3.目標設定」「4.行動」「5.追跡」の5つのステップに分かれている。ステップ1~3は既に詳細な技術ガイダンスが作成され、ステップ4、5についても2025年中にガイダンスが発表される予定だ。今回、発表された海洋域の目標設定手法は「3.目標設定」に当たる。

海洋域の目標は、①乱獲の回避と削減、②海洋生息地の保護、③ETP種(海洋漁業における絶滅危惧種や保護対象種)のリスク低減という3つが設定されている。

①乱獲の回避と削減
調達の削減、調達の制限、イニシアチブへの関与、調達の停止の4つの要素で構成されている。1つ目は調達量の削減目標であり、2つ目が調達量の上限設定に関する目標、3つ目は生物多様性上重要な場所において関連するイニシアチブに関与することで生態系の保全や漁業の改善活動を行い、資源を回復することを目標とする。4つ目は、目標期間内に資源の回復や自然管理の健全性が確保されなかった場合の調達停止を盛り込んでいる。

②海洋生息地の保護
重要な海洋生息地への影響を回避・軽減するための目標であり、具体的には湿地やマングローブ、サンゴ礁などの保全やトロール漁などのインパクトの大きい漁法の改善などのベストプラクティス基準を満たす取り組みを設定する。

③ETP種のリスク低減
ETP種へのリスクを軽減するために、②で挙げたベストプラクティス基準を満たす改善に取り組むこと、既存イニシアチブへの支援や新たなイニシアチブの開発を行うことを目標として挙げるとともに、絶滅危惧種への影響を及ぼす漁法や養殖場からの水産資源の調達停止にコミットすることが目標となる。

SBTNは現在、淡水と陸域、海洋域の目標設定ガイダンスが公表されているが、今後の展開として、他の産業分野にも目標を拡大し、持続可能な未来の実現を目指していくとしている。

SBTNの目標設定プロセスは非常に難易度の高い手法ではあるが、これを活用することで自然への影響を評価し、効果的な自然関連目標を設定することが可能となるため、多くの企業に広がっていくことが望まれる。

※詳細はサステナブル経営レポート第26号「企業に求められる土地利用・転換への目標設定 -SBTs for Nature 陸域ガイダンスの解説-」(2025.4.2/MS&ADインターリスク総研)参照
https://rm-navi.com/search/item/2106

【参考情報】
2025年3月18日付 Science Based Targets Network HP:
https://sciencebasedtargetsnetwork.org/news/news/sbtn-launches-first-ocean-science-based-targets-for-seafood/

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