自然災害リスク定量評価サービス
2024.4.1
コンサルティングの概要
気候変動に関する財務リスクの把握やステークホルダーへの開示に関して支援いたします。
<気候変動リスク分析サービス>
パリ協定の成立やESG投資の拡大を背景に、投資家が企業に対して、気候変動に関連する財務リスクを把握し、開示することを強く求めています。リスクの対象範囲は、気候変動に起因した洪水、干ばつなどの物理的リスクだけではありません。エネルギー構造の転換などのように、2℃目標に則って社会経済が脱炭素社会に移行するリスク(移行リスク)についても、十分な検討を行う必要があります。気候変動のこれらのリスク対策を検討している企業への支援を実施します。<自然災害リスク定量評価サービス>
米国Jupiter Intelligence社と提携し、全世界90mメッシュの精度で、気候変動を考慮した将来の風水災や熱波などのリスクを定量評価します。TCFD対策強化を検討している企業やその関連企業への支援を実施します。(リリースページはこちら)
コンサルティングの詳細
自然災害リスク定量評価サービスの開発と分析事例
本サービスは全球気候モデル(GCM)を用いて、全世界を対象に2100年までの様々な自然災害リスクを評価するものである。MS&ADインシュアランスグループホールディングスが出資する米国のスタートアップ、Jupiter Intelligence社と連携して提供するもので、特長としては以下が挙げられる。
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1 GCMを高解像度化
一般的にGCMは、水平解像度が約100km程度であり、このままでは各地点での影響を詳細に評価することは難しい。この出力結果を補間(ほかん)して解像度を上げることをダウンスケーリングと言う。
計算機の資源に限りがあるため、通常ではダウンスケーリングは一部の地域に限って行われ、全世界で行うのは現実的ではなかった。しかし近年では機械学習によるダウンスケーリング手法などにより効率的な処理が可能となりつつある。本サービスでは最新の手法を用いて、解像度をGCMの数倍に高めている。その結果、全世界を対象に自然災害を90mの解像度で分析することが可能となった。 -
2 複数の気候変動シナリオの採用
IPCCが使用している代表的濃度経路(RCP)シナリオを用いている(図1)。選択可能なシナリオは、RCP8.5(21世紀末に工業化前比で4.3℃上昇)、RCP4.5(同2.4℃)、RCP2.6(同1.6℃)の三つである。
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3 幅広い時間軸での評価が可能
シナリオごとに2020年から2100年まで、5年刻みで評価できる。
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4 多様な自然災害の定量化
河川洪水、高潮、風災、熱波、山火事などの自然災害について、定量的なリスク指標を算定できる(図2)。
河川洪水と高潮については、特定の発生頻度(再現期間)の災害が発生した場合の浸水深や財務影響を推計することができる。例えば「再現期間100年の洪水」とは、100年に1回の確率で生じうる洪水を意味する。
図3では国内のある地点について、RCP8.5シナリオ下での各再現期間の洪水の浸水深を算出した例を示している。年を経るに従って、浸水深が増加していることがわかる。
また図4は、ある企業の23拠点について再現期間200年の河川洪水が発生した場合の被害額が大きい順に左から並べたものである。2020年に比べて、2070年は被害が増大していることがわかる。【図1】世界のCO2排出量の推移と気温上昇シナリオ(出典:IPCC第5次報告書にMS&ADインターリスク総研加筆)
【図2】評価対象となる自然災害と定量化指標 (MS&ADインターリスク総研作成)
【図3】RCP8.5シナリオにおける再現期間ごとの浸水深の推移例 (MS&ADインターリスク総研作成)
【図4】RCP8.5シナリオにおける再現期間200年の洪水による各拠点の被害額分布例 (MS&ADインターリスク総研作成)