ESGリスクトピックス 2023年度 No.8
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2023.11.1
<自然資本>
TNFD、開示フレームワーク第一版を発表
自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は、9月18日に開示フレームワークの第一版を公表した。本フレームワークはTCFDと同様に「ガバナンス」、「戦略」、「リスクとインパクトの管理」、「測定指標とターゲット」の4本の柱と14の開示提言で構成される(下図)。ただし、自然特有の課題を踏まえて、TCFDと比較して一部の開示提言が追加、修正されている。
2023年3月に公表された草案(Beta v0.4)からの変更点としては、「リスクとインパクトの管理」に含まれていたステークホルダーに関する記述が削除された。代わりに「ガバナンス」に、先住民を含む幅広いステークホルダーに対する人権方針やエンゲージメント活動、それに対する取締役会と経営陣の監督状況を説明することが盛り込まれ、より経営陣の責任が問われる内容になった。
(参考情報:2023年9月18日付TNFD HP、2023年8月25日付GPIF HP)
<国際動向>
「プラネタリー・バウンダリー」第4版が公表。9領域中6つで地球の環境容量を超過
ストックホルム・レジリエンス・センターは9月13日、地球の環境容量の限界を示す「プラネタリー・バウンダリー」に関する最新の研究結果を公表した。プラネタリー・バウンダリーは2009年に同センターのヨハン・ロックストローム博士らにより提唱された概念で、「気候変動」「生物圏の一体性」「土地利用の変化」「淡水利用」などの9つの領域で、地球の環境容量を科学的に定式化したものである。第4版となる今回は、9つすべての領域に対する評価が初めて実現した。それによれば6領域で地球の環境容量を超過しており、また全ての領域で人間活動の圧力が増加していることが明らかになった(下図)。
(参考情報:2023年9月13日付 ストックホルム・レジリエンス・センターHP)
<コーポレートガバナンス>
企業統治の国際原則が改定、サステナビリティのリスク・機会の評価手法を提示
経済協力開発機構(OECD)は9月11日、「G20/OECDコーポレートガバナンス(企業統治)原則」の改訂版を公表した。改訂は2015年以来。今回の改訂では、「サステナビリティとレジリエンス」の章が新設。その中で気候変動などサステナビリティ関連のリスクと機会の管理で望ましい観点・手法を示した。同原則はコーポレートガバナンスの国際標準のため、今回の改訂内容を受けて、日本を含む各国のコーポレートガバナンス規範や法令の見直しに影響も予想される。
(参考情報:2023年9月11日付 OECD HP)
<気候変動>
デューデリ強化でグリーンウォッシュ回避を、AIGCCが金融機関向けガイドを公表
アジア各国の約60超の機関投資家で構成し、企業投資を通じた脱炭素化を目指すイニシアチブのAIGCC(Asia Investor Group on Climate Change、気候変動に関するアジア投資家グループ)は10月4日、企業のビジネスモデルや商品等について、実際よりも環境に良い影響を与えているように見せかける「グリーンウォッシュ」を回避するための金融機関向けガイドを公表した。
ガイドは、投資先企業と金融機関自体の双方によるグリーンウォッシュを対象に5つの回避策を提示。前者では、投資先企業へのデューデリジェンスの強化(排出量や各種環境関連データの要求、当該データの信頼性の精査など)や企業へのスチュワードシップ活動の強化など、投資先企業への直接的な働きかけを挙げた。一方後者では、自社の金融商品について、環境に関する表示の正確さや信頼性の精査などを挙げた。
(参考情報:2023年10月4日付 AIGCC HP)
<情報開示>
東証が英文開示に関するアンケート実施海外投資家7割が「不満」
東証は海外の機関投資家を対象に、日本の上場企業の英文による情報開示についてアンケート調査を実施し、8月31日に結果を公表した。これまで東証は上場企業に対して英文による情報開示の充実を促しており、調査では回答者の75%が開示状況について「改善している」または「やや改善している」と評価。一方で、現状評価については「不満」「やや不満」とする回答が72%に達しており、英文開示を充実させる近年の取り組みについて評価しながらも、依然として海外投資家の求めるレベルには達していない企業が多いことが浮き彫りとなった。
調査は2021年に次いで2回目で、今年6~7月に実施。英米や欧州、アジアを中心に75件の回答を得た。日本の上場企業による英文開示の「不満」について、英文での情報開示が日本語の情報開示と比べて遅く、情報量にも大きな差があることが理由として挙げられ、「海外投資家が不利な立場に置かれている」「日本企業への投資意欲を減退させる」といった声も寄せられた。日本語の開示資料を読むことができるスタッフがいない回答者に絞ると、「不満」だとした割合は84%とさらに高い結果となった。
(参考情報:2023年8月31日付 日本取引所HP)
<国外テロ>
国際テロ組織等の活動活発化懸念外務省がテロの脅威を注意喚起
外務省は2023年10月14日、中東での紛争に伴うテロの脅威に関して注意喚起を行った。
10月7日から続くイスラエルとパレスチナ武装勢力ハマスとの衝突を受け、同月19日以降、国際的巨大テロ組織であるイラク・レバントのイスラム国(以下ISIL)は、テロの標的について呼びかけを行っている。テロの標的として具体的に挙げられているのは、イスラエル関連権益(軍施設やインフラ施設等)・大使館、西側諸国の大使館、宗教施設、ナイトクラブ、アラブ諸国軍および政府、湾岸諸国の米軍基地等である。
(参考情報:2023年10月14日付 外務省HP)
<コンプライアンス>
公取委がインボイス制度における独占禁止法および下請法違反のおそれ事案を例示
公正取引委員会は、10月4日にリリースした「インボイス制度の実施に関連した公正取引委員会の取組」の中で、インボイス制度に関して独占禁止法上の優越的地位の濫用につながるおそれのある事案に対して、23年9月末時点で36件の注意を行ったことを発表した。注意した事例については、同日の事務総長定例会見でも言及された。主なものは以下のとおり。
(参考情報:2023年10月4日付 公正取引委員会HP)
<サイバーセキュリティ>
マルウェアを使わずに身代金要求「ノーウェアランサム」に警察庁が注意喚起
警察庁は9月21日、「令和5年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」を公開した。平成26年上半期から半期に1回、サイバー犯罪やサイバー攻撃等のサイバー空間の脅威について、事例や統計データ等とともに警察の施策等を警察庁が取りまとめ、掲載している。令和5年上半期の脅威情勢のうち、ランサムウェア被害が依然高水準であること等を挙げている。
企業・団体等におけるランサムウェア被害として、令和5年上半期に都道府県警察から警察庁に報告のあった件数は103件あり、警察庁は被害にあった企業・団体等にアンケート調査を行った。アンケート調査の結果、ランサムウェアの感染経路は、VPN機器からの侵入が71%、リモートデスクトップからの侵入が10%を占め、これらテレワーク等に利用される機器等の脆弱性や強度の弱い認証情報等を利用して侵入したと考えられるものが82%だったことが判明した。
(参考情報:2023年9月21日付 警察庁公表資料)
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