ESGリスクトピックス(2011年10月)
2011.10.1
国内トピックス2011年6~9月に公開された国内のCSR等に関する主な動向をご紹介、コメントします。
<ハラスメント>
厚生労働省の分科会がセクシャルハラスメントによる精神疾患の労災認定基準の見直し案をまとめる
(関連情報:2011年6月23日 毎日新聞、同省ホームページ)
厚生労働省の分科会は、本年6月23日、セクシャルハラスメント(以下、セクハラとする)による精神疾患の労災認定基準の見直し案をまとめ、公表した。
精神疾患の労災認定にあたっては、原因となった職場の出来事を心理的負荷が強い順にIII~Iの3段階(*)で評価する。セクハラに関しては、平均的負荷の強度は「II」であり、内容・程度等を踏まえて「III」または「I」に修正される。
しかし、セクハラはその性質上、被害者の労災請求や事実関係の調査が困難となる場合が多いなど特有の事情があるため、実態を適切に把握した上での労災認定基準検討が必要とされていた。
本案では、かかる問題意識を受け、セクハラによる心理的負荷の強度評価に際して考慮すべき要素を具体的に示している。その上で、強姦や本人の意思を抑圧してのわいせつ行為は、その出来事だけで強度「III」にあたるとし、また、以下の事例については行為態様等を踏まえて強度を「III」に修正すべきとしている。
<社会貢献(震災支援)>
グラクソ・スミスクラインが、節電分を原資とした奨学金制度を新設
(関連情報:2011年6月30日 日本経済新聞、同社ホームページ)
グラクソ・スミスクラインの日本法人では、東日本大震災の復興支援の一環として、今夏の電力不足を受けた節電による電気料金の節約分を原資とする奨学金を新設した。
対象は震災の影響で経済的に修学が継続困難な東北地方の大学生。薬学を学ぶ学生から約30名を募集し、月額5万円を卒業まで支給する。
Point!
本件は、被災地の学生の就学支援にあたり、同じく震災を契機に生じた社会的課題である電力不足への対応を絡めることで、着実に成果をあげることを狙ったものといえます。今夏に発せられた電力使用制限令もあり、企業における節電の取組は必須でしたが、さらに節電成果の復興支援への活用を明示することで、従業員の節電取組へのモチベーション向上を図っています。同社では秋以降も一部の取組を継続するとしており、今後の成果は注目に値します。
<社会貢献>
大塚製薬が早稲田大学競技スポーツセンターとスポーツを通じた社会貢献を目的とした協定を締結
(関連情報:2011年7月29日 日本食糧新聞、同社および同大学ホームページ)
大塚製薬は、本年7月、早稲田大学競技スポーツセンターと、スポーツを通じた青少年の育成、スポーツ技術の更なる向上、大学スポーツの一層の発展等の実現を目指す協定を締結した。
同社は、同大学の体育学部へ商品サンプルの提供や販売、商品やスポーツ栄養学についての情報提供を行う。また今後、シンポジウムやイベントなども共同開催する。
Point!
本取組は、スポーツを通じた社会貢献を目的としつつも、自社商品のマーケティングも志向した取組といえます。同社にとっては、本活動を通じ、自社商品の有用性をアピールすることはもちろん、スポーツ栄養学の情報提供による自社製品へのニーズ喚起、シンポジウムなどの共同開催による広範囲の消費者へのアプローチなどが期待できます。
本業と絡めたCSR活動の一例として、参考に値する事例です。
<社会貢献(震災支援)>
ユニリーバの東日本大震災支援策「クリック募金」「ツイッター募金」等が総額1,000万円を超える
(関連情報:2011年9月12日 同社ホームページ)
ユニリーバ・ジャパンが4月から自社ホームページ上で呼びかけている「ユニリーバ東日本大震災募金」の寄付総額が1,000万円を超えた。
募金は、閲覧者の個人負担がなく、「募金ボタンのクリック」や、「ツイッターでのつぶやき」毎に同社が1円を寄付する方法と、個人がクレジットカードにより1000円から寄付を申し込み、同額を同社が寄付するマッチングギフト型の二つの方法が用意されている。募金は、ユニセフ、WFP(国連世界食糧計画)、セーブ・ザ・チルドレン、オックスファムの4団体を通じて被災地に送られる。
Point!
本件は、「ツイッター」などの新メディアを活用することで、ホームページ閲覧者の社会貢献への参画意識を喚起する工夫がなされています。気軽に参画できることから、いわゆるリピーターも多く(同社リリースによれば、約30%が2日に1回以上閲覧している)、単に募金への協力を呼びかける以上の成果、更に中長期的には同社の「ファン」作りという成果が期待できる事例といえます。
海外トピックス2011年6~9月に公開された海外のCSR等に関する主な動向をご紹介、コメントします。
クラフトフーズが飢餓撲滅のためのプログラムに380万ドルを拠出
米クラフトフーズ社は、インドネシアおよびバングラデシュ両国で飢餓撲滅のためのプロジェクトに380万ドルを拠出すると発表した。両国のうち、5歳未満の子供の50%以上が栄養失調の状態にあるといわれる地域で実施する。
本プロジェクトでは、同地域における飢餓・貧困の解決を目的に、教育訓練施設を設立し、当該地域の女性数千人を対象に以下のプログラムを実施する。
- ①安定的な食糧生産を可能にする農業技術の伝授・支援
- ②農産物の販売に関するノウハウの伝授・トレーニングの実施
- ③自身の家族に栄養バランスのとれた食事を提供するための教育
Point!
本件は、食料または資金援助といった当座の課題解決に着目した支援ではなく、飢餓問題の抜本的解決策に対して支援を行うものです。かつ同地域における農業生産及び家庭内での女性の役割の重要性に着目し、女性を対象にした上記プログラムの実施及び費用の拠出を決定した点に特徴があります。
アフリカ東部の大規模飢饉被災者に対して企業が支援を開始
(関連情報:米コカ・コーラ社HP http://www.thecoca-colacompany.com/dynamic/press_center/2011/08/donations-to-kenya-ethiopia-somalia.html
米 UPS社 HP http://blog.ups.com/2011/08/11/ups-to-ship-100-metric-tons-of-food-and-supplies-to-aid-famine-relief-in-the-horn-of-africa/)
ソマリア、エチオピア、ケニアなどアフリカ東部で発生した大規模飢饉の被災者に対して、支援活動を開始する企業が増加している。
米コカ・コーラ社は、緊急人道支援として食糧や水、医療サービスのため140万ドル(約1億円)を同地域の赤十字・赤新月社に寄付。米UPS社は、世界食糧計画(WFP)が用意した50トンの緊急支援用食品を輸送するためチャーター機を手配した。
これらの支援は、国連が7月20日に行った同地域での大規模飢饉の発生の宣言と国際社会に向けた支援の呼びかけに応えたもの。同地域では過去60年間で最悪の干ばつと食料危機に見舞われ、1300万人が食料支援を必要とする状態。さらに栄養失調や感染症による死者も急増しているという。
Point!
今回のような大規模な飢饉の発生に対しては、あらゆる組織において素早い対応・緊急支援が求められています。
「ボランティア積極参加の社員ほど自社に好意的」との調査結果が公表される
(関連情報:デロイト・トウシュ・トーマツ HP http://www.deloitte.com/view/en_US/us/About/Community-Involvement/5243f30d90750310VgnVCM3000001c56f00aRCRD.htm)
米大手会計事務所のデロイト・トウシュ・トーマツが6月3日に公表した調査結果によると、会社で実施するボランティア活動に積極的・高頻度で参加する社員ほど、そうでない社員とよりも会社への忠誠心や満足度が高いことが分かった。
調査は、会社主導でボランティア活動を行っている米国企業(社員数1000人以上)の「ミレニアルズ」(2000年以降に成年した若年層)社員1500人を対象に実施。調査結果では、ボランティア活動への積極性と会社の評価の間に次のような傾向が分かった。
カッコ内の数字は、前者がボランティア積極参加者層で各回答が占める割合、後者が参加度合の乏しい層に占める割合、をそれぞれ表している。
- 自社の企業文化を高く評価する(56%、28%)
- 自社での仕事に誇りに思う(55%、36%)
企業と子どもの権利に関するポータルサイトを開設
(関連情報:Business&Human Rights Resource Centreプレスリリース)
英米に拠点を置き人権保護の活動を世界的に展開する非営利団体「ビジネス人権リソースセンター(Business&Human Rights Resource Centre)」は6月14日、企業が子どもの権利侵害の防止および権利保護に取り組む上で有用な情報をインターネット上で収集・発信する専門のポータルサイトを開設した。子どもの権利が企業活動により影響を受けたケースを紹介する一方、企業による子ども権利保護の取組に関する情報や論文・報告書等の様々な情報を掲載している。
本サイトで発信する主な情報は次の通り。
- 子どもの権利に関する問題(児童労働、製品安全、教育、強制労働、環境汚染、妊婦への差別、人身売買等)
- 企業活動と子どもの権利に関する国際規範等
- 子どもの権利の保護・促進等の好事例
- 子どもの権利の侵害・疑い事例
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