レポート/資料

災害時における社員の安全確保 ~東日本大震災から見えたこと~【BCMニュース 2011年 第6号】

2011.10.1

1. はじめに

東日本大震災からはや半年が過ぎ、この震災での体験を教訓として、災害対応の見直しを行っている企業も多いことと思う。多くの災害対策マニュアルの目的に、社員の安全確保が掲げられている。

企業経営における3大リソースは人、物、金であり、災害によりいずれか一つを失っても経営は多大な影響を受けるが、とりわけ人的リソースへの依存は大きく、人員の補充のみでは従来業務の知識を持つ社員の代替とはなり得ない。社員の安全が確保されてはじめて、緊急時対応に取り掛かれるわけであり、安全が確保されない状態での活動は二被災害を引き起こし、結果的に事業継続や早期復旧は困難を極めることになりかねない。

本稿では、災害時における社員の安全確保に企業がどう取り組むべきか、東日本大震災の事例に基づき解説する。

2. 釜石の奇跡

岩手県釜石市の市内14の小中学校にいた児童・生徒2,926名全員が、東日本大震災による津波から逃れ、生還を果たした(ただし、当日欠席するなど学校の管理下になかった5名が犠牲となった)。この事象は「釜石の奇跡」と呼ばれ、国内外から強い反響を呼んだ。

(1) 釜石東中学校の避難経緯

海岸から1kmもない場所に位置する釜石東中学校は、津波の浸水想定区域外ではあったが、震災後直ちに避難を開始した。指定避難場所であるグループホーム (A)に到着してからも周辺の状況を鑑み、さらに高台(B→C)へ避難した。

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