日本企業の英文開示に不満、レピュテーションリスクも!
2024.3.23
海外投資家の7割が「不満」、レピュテーションリスクも踏まえて改善が急務
東証は海外の機関投資家を対象に、日本の上場企業の英文による情報開示についてアンケート調査を実施し、2023年8月31日に結果を公表しました。これまで東証は上場企業に対して英文による情報開示の充実を促しており、調査では回答者の75%が開示状況について「改善している」または「やや改善している」と評価しています。
一方で、現状評価については「不満」「やや不満」とする回答が72%に達しており、英文開示を充実させる近年の取り組みについて評価しながらも、依然として海外投資家の求めるレベルには達していない企業が多いことが浮き彫りとなりました。
調査は2021年に次いで2回目で、2023年6~7月に実施。英米や欧州、アジアを中心に75件の回答を得ました。日本の上場企業による英文開示の「不満」について、英文での情報開示が日本語の情報開示と比べて遅く、情報量にも大きな差があることが理由として挙げられ、「海外投資家が不利な立場に置かれている」「日本企業への投資意欲を減退させる」といった声も寄せられました。日本語の開示資料を読むことができるスタッフがいない回答者に絞ると、「不満」だとした割合は84%とさらに高い結果となりました。
海外投資家から寄せられた声
- 英語で開示していない情報を日本語で開示している会社がまだ多く、海外投資家にとって不利であり、日本企業への投資意欲を減退させる
- 外の投資家を惹きつけるためには英語のタイムリーな情報開示を増やすことほど簡単な方法はない
- 英文開示が日本語の開示に比べて2~3 週間遅く、この差は大きな投資機会コストを生み出している
- 若干改善されてきたが、外国人投資家が会社の基本的な情報を見つけることは依然として非常に困難だ
- 他国より遅れている
※株式会社東京証券取引所「英文開示に関する海外投資家アンケート調査結果」から抜粋し弊社で作成
英文開示が不十分なことによる投資活動への影響についての設問では、「投資対象から除外した」が35%、「ウエイトを減らした」が28%となっており、投資の減少に直結しているケースがあることも判明しています。「日本への投資リスクを評価することは、ほかの国と比べてはるかに難しい」とする回答もありました。
また、決算短信や有価証券報告書、ESG報告書など、一般的に投資家が参照する9つの資料について、英文開示の必要性をたずねたところ、すべての資料で「必須」または「必要」が60%を超えました。特に高かったのは決算短信で、「必須」または「必要」が89%にのぼりました。このほか、IR 説明会資料(87%)、有価証券報告書(85%)などのニーズが高いことが示されました。多くの回答者が、日本語と英語の同時開示を求めており、決算短信や適時開示資料は同時または同日中の開示を求める回答がそれぞれ約90%にのぼっていました。
一方、英文開示の充実を高く評価されている企業もあり、東証は調査結果の中で、英文開示が優れていると評価された82 社の社名を公表しています。東証は海外からの投資を呼び込もうと、プライム上場の企業を対象に英文での情報開示を義務付ける方針を示しています。各企業も外国人投資家の資金を集めるためには、今回のアンケート結果や他社の好事例を参考とした英文開示の充実化が求められています。
本アンケートは2023年6月26日~ 2023年7月31日に、海外機関投資家を対象に実施されたものです。75件の回答を受領し、回答者の地域は英国、欧州大陸、米国、アジア太平洋地域で約4分の1ずつ。
参考情報:2023年8月31日付 日本取引所HP
https://www.jpx.co.jp/corporate/news/news-releases/0060/20230831-01.html
※本記事は、2023年11月1日発行のMS&AD InterRisk Report・ESGトピックス「東証が英文開示に関するアンケート実施 海外投資家7 割が「不満」」を再編集したものです。