BCP策定等の義務化で介護サービス事業者等に求められる取り組みと現状
2024.3.25
介護報酬改定のBCP策定等の義務化で求められる取り組み
令和3年度の介護報酬改定で、「業務継続に向けた取り組みの強化」として、全介護サービス事業者を対象に業務継続計画(以下BCP)の策定等として、以下(1)~(3)が義務化されました。
- BCPの策定
施設・事業所で新型コロナウイルス感染症発生時(疑い者を含む)の対応項目を定めた感染症BCPと、地震・水害等発生時の対応項目を定めた自然災害BCPの双方を作成することが義務化されました。BCP作成の目的は、「感染症や自然災害が発生した際にも、適正な対応をおこない、①利用者へのサービス提供を継続的に実施すること、②非常時の体制で早急に業務再開を図ること」とされています。また、各BCPに盛り込むことが必要な項目が例示されました(図1)。
- BCP研修の実施
作成したBCPの具体的な内容を職員間で共有するためにBCPに係る研修を年2回以上実施すること、新入社員に対しては入職時にBCPに実施すること、研修実施の記録を残すことも義務化されました。 - BCP訓練の実施
想定した出来事(感染症や自然災害)が発生した際に、迅速に行動できるように、①施設内の役割分担の確認、②対応策の演習 などの訓練を年2回以上実施することも求められています。机上訓練によるシミュレーション、実地での訓練、さらに机上と実地の訓練の組み合わせなど手法は問わないとされています。
令和6年3月31日までは努力義務であるため、それまでに感染症と自然災害双方のBCPを策定し、研修や訓練を行なっていくことが必要となります。
介護サービス事業者におけるBCPの策定状況
厚生労働省の社会保障審議会(介護給付費分科会)が令和5年9月に公表した「介護サービス事業者における業務継続に向けた取組状況の把握及びICTの活用状況に関する調査研究事業」の速報値によると、介護サービス事業者の令和5年7月時点における感染症BCPの策定状況は、「策定完了」が29.3%、「策定中」が54.6%、「未策定(未着手)」が15.6%でした。
また、自然災害BCPの策定状況は、「策定完了」が26.8%、「策定中」が54.9%、「未策定(未着手)」が17.1%でした。
この調査結果を考慮すると、令和6年3月31日までにBCPの策定が完了しない介護サービス事業者は、一定数存在することが想定されます。
BCP未策定介護サービス事業者に対する措置
厚生労働省は、令和6年1月22日の社会保障審議会(介護給付費分科会)の中で、令和6年度の介護報酬改定で、感染症や自然災害を想定したBCPを策定していない施設・事業所に基本報酬の減算を導入する方針を示しました。これは、感染症と自然災害、どちらか一方だけ策定していない施設・事業所にも適用されます。
ただし、令和7年3月31日までの間、感染症の予防及びまん延の防止のための指針の整備及び非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合には、減算を適用しないこととしました。令和3年度の介護報酬改定で3年間の経過措置期間を置いていましたが、一定の要件をつけることで、さらに経過措置期間を1年間延長した形です。
また、訪問系サービス、福祉用具貸与、居宅介護支援については、令和7年3月31日までの間、減算を適用しないしないこととしました。これは、訪問系サービスや居宅介護支援、福祉用具貸与などは、「感染症の予防・まん延防止の指針」の策定が義務化されて間もないこと、「非常災害対策計画」の整備が義務付けられていないことを考慮したものと考えられます。
まだBCPを策定していない介護サービス事業者においては、厚生労働省が示した基本報酬の減算の方針を踏まえ、早めにBCP策定を完了させることが必要です。また、具体的な方針はまだ示されていないものの、BCP研修や訓練の実施についても計画的に進めていくことも必要でしょう。