介護BCPガイドラインの改訂ポイントについて 「医療福祉RMニュース 2024 No.2」
2024.9.2
ポイント
- 厚生労働省より公開されている介護BCPのガイドライン及びひな形、研修動画が改訂された
- ガイドラインの改訂に重大は変更点はないが、介護事業所の実情に沿った修正がなされた
- 研修動画には新たに机上訓練の解説動画が追加された
- 介護事業者においては、改訂されたガイドライン等を踏まえ、策定したBCPの実効性向上を図っていくことが期待される
1. 介護施設・事業所等におけるBCP義務化の背景
令和3年度介護報酬改定に伴う運営基準の改正により、すべての介護サービス事業所に業務継続計画(以下「BCP」)の策定・研修・訓練の実施が義務となり、令和5年3月末をもって経過措置期間が終了したところである。令和6年度以降はBCP未策定の事業所には基本報酬の減算措置が取られることとなった(居宅療養管理指導及び特定福祉用具販売を除く、一部経過措置期間有)。BCP未策定の介護サービス事業所に対する措置とBCP策定状況については「医療福祉RMニュース<2024 No.1>」で詳報しているので、そちらを参照されたい。ここでは改めて、介護サービス事業所において自然災害及び感染症のBCPに関する取組が義務化となった背景について振り返る。
過去10年において我が国で最大震度7を観測した地震は3回あるが、最大震度6弱以上の地震は14回発生し、いずれにおいても建物の損壊や破損が発生した。記憶に新しい能登半島地震においても多くの介護サービス事業所から停電や断水、建物の損壊、インフラ寸断による孤立化等の被害が報告された。
表1 過去10年の我が国における最大震度6弱以上の地震
発生年月日 | 震央地名もしくは地震名 | 最大震度 |
---|---|---|
令和6年(2024年)4月17日 | 豊後水道 | 6弱 |
令和6年(2024年)1月1日 | 令和6年能登半島地震 | 7 |
令和5年(2023年)5月5日 | 能登半島沖 | 6強 |
令和4年(2022年)6月19日 | 石川県能登地方 | 6弱 |
令和4年(2022年)3月16日 | 福島県沖 | 6強 |
令和3年(2021年)2月13日 | 福島県沖 | 6強 |
令和元年(2019年)6月18日 | 山形県沖 | 6強 |
平成30年(2018年)9月6日 | 平成30年北海道胆振東部地震 | 7 |
平成30年(2018年)6月18日 | 大阪府北部 | 6弱 |
平成28年(2016年)12月28日 | 茨城県北部 | 6弱 |
平成28年(2016年)6月16日 | 内浦湾 | 6弱 |
平成28年(2016年)4月14日 | 平成28年(2016年)熊本地震 | 7 |
平成26年(2014年)11月22日 | 長野県北部 | 6弱 |
出典:「日本付近で発生した主な被害地震(平成8年以降)」(気象庁)を基にMS&ADインターリスク総研㈱にて作成
また、地震のみならず風水害についても多くの被害が発生している。地震や豪雨、洪水など災害対策基本法で規定される災害のうち、地方自治体や被災者に対し特別な助成が必要と政府が判断したまた、地震のみならず風水害についても多くの被害が発生している。地震や豪雨、洪水など災害対策基本法で規定される災害のうち、地方自治体や被災者に対し特別な助成が必要と政府が判断した災害が「激甚災害」に指定される。この激甚災害の指定を受けた風水害は、過去5年(令和元年~5年)に限定しても50件に及び、2020年7月豪雨では熊本県球磨村で特別養護老人ホームの利用者14名が犠牲になる等、介護サービス事業所においても甚大な被害が発生してきた。介護サービス事業所はその提供するサービスの性質上、休止や停止をすることが難しいため、BCPの策定や研修、訓練を通じて事前の検討や準備を進めることが…
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