コンサルタントコラム

オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)が製品安全の優先事項公表(2024―25年度)

2024.10.1

豪州競争・消費者委員会(Australian Competition & Consumer Commission 、以下ACCC)のキャスゴットリーブ委員長は2024年6月27日、豪州全国消費者会議において、2024-25年の製品安全に関する優先事項を公表しました。
以下は、優先事項5項目とその施策の概要です。

その一方で、(1)海外事業者が国内消費者に直接製品を販売した場合、製品の安全性について法的責任を有すべき国内の製造・輸入事業者が存在しない、(2)玩具をはじめとした子供用製品の安全性を業界の自主規制に委ねており、海外事業者に対して実効性を欠く、といった問題が指摘されていました。

今回の法改正はこうした課題を踏まえたもので、以下のような規定が盛り込まれました。

  1. 育児製品を中心とした、乳幼児用品の安全の強化
    哺乳瓶ホルダー※1のような新しい育児製品に関わるリスクの監視、ウェブサイトの更新、家具の転倒と乳児用睡眠用品の基準に関する啓発、など
  2. ネット販売における製品安全の強化
    国内外の規制当局との協力、ネット市場に関わる事業者との連携の強化、ネット購入における消費者の啓発、製品安全誓約※2 の改善、など
  3. 製品の安全性確保を通じた、持続可能な経済への移行の支援
    環境の持続可能性に障壁とならない方法での製品安全の推進、リチウムイオン電池など脱炭素及び循環型経済への移行に必要となるような製品の安全性向上に関する支援、中古品の製品安全向上のための取引関係者向けガイダンスの策定、など
  4. 新しい技術を用いた消費者製品に関連する製品安全リスクの調査
    国内外の規制当局との協力、新しい技術の適用による製品安全リスクの理解の推進、製品安全に関する法的枠組の新しい技術への適用の検討、など
  5. 製品安全データの改善
    製品安全に関する各種のデータの質の向上、製品安全に関する新しい課題の特定、事故報告義務に関するガイドラインの更新、など

キャスゴットリーブ委員長は談話で、「ACCCは今後も新しいタイプの製品の安全リスクを評価し、新しい技術を使用した製品の安全性をどのように確保できるか、既存の安全法制の枠組みをどのように適用できるかを検討していく」と述べています。また、「将来の製品安全リスクをより良く理解するよう努め、新たな製品安全問題を迅速かつ効果的に特定する能力を強化する」としています。

従来型の製品安全に加えて、ネット市場での流通量が拡大している中古品の安全など、製品や社会の変化による新たなリスクはこれからも生じてくることが予想されます。さらに、脱炭素社会の指向を背景にした新技術・新製品の登場による新たな製品安全上のリスクも考えられます。

わが国の事業者としても、足元の社会に適合した製品安全に遅滞なく取組むだけでなく、製品安全に関する状況の変化や新たなリスクに注意を払い、それらへの対応を先取りして検討していくことが期待されます。

出典: ACCC のリリース
https://www.productsafety.gov.au/news/emerging-technology-risks-among-accc-product-safety-priorities

1)ベビーカーやベビーベッドに取り付ける哺乳瓶ホルダー。米国では2018年から2021年にかけて窒息による3件の死亡事故が報告されている。
2)ネット市場の運営事業者が、製品の安全性の確保に関する自主的な取組を誓約するもの。

「PLレポート」は四半期に1回、国内外の製品安全、PLリスクに関連するニュースを紹介します。
また、昨今の技術革新や市場の変化等を踏まえた製品安全に関わる旬のトピックスを連載します。

この記事は「PLレポート(製品安全)<2024年9月号>」(2024年9月発行)の掲載内容から抜粋しています。
PLレポート全文はこちらからご覧いただけます。
https://rm-navi.com/search/item/1845

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