コラム/トピックス

下請法に関する現状の課題を踏まえた改正の検討動向

2025.3.21

2024年12月25日、下請代金支払遅延等防止法(以下、「下請法」という)に関する課題と対応案(改正の方向性)を取りまとめた報告書が公表された。

現行の下請法は、2003年に主要な改正が行われてから約 20 年が経過している。公正取引委員会と中小企業庁は、2024年7月以降、有識者会議「企業取引研究会」において、適切な価格転嫁をサプライチェーン全体で新たな商慣習として定着させていくための取引環境を整備する観点から、優越的地位の濫用への規制のあり方について議論を重ねてきた。

今回の報告書では、下請事業者保護の不十分さや、下請法の適用逃れといった現行法の課題に対し、規制の強化や適用対象取引の拡大などの改正の方向性が示された。このうち、事業者が実務上の影響を受けることが想定される主な内容は下表のとおりである。

<主な改正の方向性と実務への影響>
主な論点 改正の方向性 想定される実務への影響
1 適正な価格転嫁の環境整備 親事業者が一方的に下請代金を決定する行為を規制 下請事業者との価格交渉プロセスの確保や、適切な価格交渉の実施を管理するための事前・事後のチェック体制の整備が求められる
2 下請代金等の支払い条件の見直し ・手形による支払いを禁止
・金銭以外の支払手段について、支払期日までに下請代金の満額と引き換え困難な手段を制限
・振込手数料等の下請事業者負担を禁止
支払手段の制限による資金繰り計画への影響の有無を確認の上、支払方法の見直しを検討する
3 物流に関する商慣習の問題への対応 荷主から運送事業者への物品運送の委託取引を下請法の適用対象に追加 運送事業者への委託取引について下請法に基づいた対応が求められる
4 下請法の適用基準の見直し 下請法の適用基準について、従業員数による基準(従業員数300人(製造委託等)または100人(役務提供委託等))を新設 既存取引や新規取引について新たな基準に基づいて適用対象となるかどうか確認の上、適用対象となる取引について下請法に基づいた対応が求められる

(企業取引研究会「企業取引研究会 報告書(令和6年12月)」を基に当社にて作成)

政府与党によると、2025年の通常国会での法改正を目指し検討が進められている。本報告書で示された方向性どおりに改正された場合、既存取引について下請法の適用対象となるかの確認を実施し、適用対象となる場合には下請法に基づいた対応への移行が求められる。また、下請法の適用対象となる取引が増加することで、下請法遵守のための管理に係る負担が増大するなど、多くの企業に影響が生じることが想定される。そのため、企業においては、今後の法改正動向に注視し、改正内容が明らかとなった場合には、早期に自社への影響や社内における管理態勢を確認の上、必要に応じて対策を講じる等のしかるべき対応を行うことが求められる。

1)企業取引研究会「企業取引研究会 報告書(令和6年12月)」:https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/dec/241225_kigyotorihiki_1.pdf

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