
有報の総会前開示は上場会社の1.5%、金融庁が有報開示好事例集で公表
2025.3.28
金融庁が企業の有価証券報告書の優れた開示を紹介する「記述情報の開示の好事例集」第4弾に伴って2025年2月3日に公表した調査結果で、株主総会前に有報を開示した上場企業が2023年度では全体の1.5%に留まることが分かった。
総会前開示を実施した上場企業の実数は57社。株主総会の同日(44.9%)または翌日(40.3%)に開示する企業が大多数を占めた。1週間以上前に開示した企業は18社(0.5%)だった(図1参照。その他本稿で使用した図はすべて事例集(https://www.fsa.go.jp/news/r6/singi/20250203/01.pdf)から引用)。
好事例集では、実際に総会前開示を行った企業の経緯・背景・工夫を紹介。総会前開示に向けた開示タイミングの見直しを求めた。
多くの投資家・アナリスト・有識者は、株主総会での議決権行使の検討材料として総会前開示を求めている。また、金融庁も24年12月に「有価証券報告書の定時株主総会前の開示に向けた環境整備に関する連絡協議会」を開催。企業と投資家の対話促進などの観点から、総会前開示の有用性を確認し、論点整理を行っている。
【図1】総会前開示の状況

今回は好事例集24年版4回目の更新で「コーポレート・ガバナンスに関する開示例」を取り上げた。 取締役会の具体的な検討内容の開示で、特に重要な事項の記載を充実した例では、双日(24年3月期)を紹介(図2参照)。最も議論に時間を割いた議案について、検討の過程での議論内容、役員のコメント等を含め具体的に記載。総審議時間に占める割合を含め、表形式で分かりやすく示した点を評価した。
【図2】双日の例

一方、サクセッションプランについて、客観性のあるプロセスや仕組みの構築、選任に関する手続き、検討状況の開示が有用と指摘。エーザイ(24年3月期)が、CEO選定の考え方や手続き、突発的事態に対する備えを端的に記載している点を紹介した(図3参照)。
【図3】エーザイの例

また、スキルマトリクス等により取締役メンバー構成を開示する際に、スキルを選定した理由と定義、E・S・Gに分けて具体的に記載する事例として、ヤマハ発動機(24年3月期)を紹介した(図4参照)。
【図4】ヤマハ発動機の例

同庁は今後「経営上の重要な契約等」、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、「中堅中小上場企業の開示例」の好事例を公表する予定。
【参考】
2025年2月3日付 金融庁 HP :https://www.fsa.go.jp/news/r6/singi/20250203.html