
私立学校法の一部を改正する法律が施行
2025.6.19
「私立学校法の一部を改正する法律」が、2025年4月1日に施行された。
本改正は、近年、私立学校においてガバナンスの機能不全が疑われる不祥事が複数発生したことを受けて、私立学校が社会の要請に応え得るガバナンス改革を推進することを目的として行われた。理事・監事・評議員の選任手続きなどのガバナンス体制整備が規定化されるとともに、大臣所轄学校法人※1および一定規模以上の都道府県知事所轄学校法人※2(以下、「大臣所轄学校法人等」という。)は、理事会において、「内部統制システム整備の基本方針」を決定することなどが規定された(法第37条)。
文部科学省が公表した「内部統制システムの整備について」※3によると、「学校法人が、その活動を健全かつ効率的に運営するための仕組みのこと」と内部統制システムを定義づけている。その内容は、企業に求めるものを準用しており、会社法で企業の取締役会に求めた内部統制システムの構築義務と同様、理事会に対して求められることになる。すなわち、大臣所轄学校法人等を運営するにあたり、内部統制に不備があった場合、理事らは善管注意義務違反で責任を問われる可能性がある(法第46条)。
そのような事態を避けるため、内部統制システムが「機能している」状態を維持することがカギとなる。大臣所轄学校法人等は、整備した内容を文書化・見える化し、理事会による定期的な監督と問題発生時の迅速な是正対応が重要となる。加えて、現場職員がルールを理解し実践できるよう、継続的な教育と周知も不可欠である。
なお、今回の改正で、内部統制システムの整備が義務化されたのは大臣所轄学校法人等のみであるが、大臣所轄学校法人等以外の学校法人においても、理事らにおける善管注意義務の一環として実情に応じた内部統制システムを整備することが望ましい。
本改正は私立学校に対し、形式ではなく実効性ある統治体制の確立を求めるものであり、内部統制はその不可欠な要素として、確実な運用と継続的な改善が期待される。
1) 大臣所轄学校法人:大臣所轄学校法人とは、文部科学大臣が所轄する大学、短期大学、高等専門学校などの高等教育機関を設置している学校法人のこと。
2) 都道府県知事所轄学校法人:大臣所轄学校法人以外の都道府県が所轄する学校法人のこと。
3) https://www.mext.go.jp/content/20250325-mxt_sigakugy-000021776_1.pdf
【参考情報】
2025年3月25日付 文部科学省HP:https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiritsu/mext_00001.html