コラム/トピックス

下請法、約20年ぶりの主要な改正

2025.7.18

下請代金支払遅延等防止法(以下、「下請法」)の改正案が2025年5月16日、参院本会議で可決、成立した。主要な改正は、2003年以来、約20年ぶりとなる。

本改正は、近年の急激な労務費や原材料費、エネルギーコストの上昇を受けて、発注者と受注者の対等な関係に基づき、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」の実現を図ることを目的として行われた。

主な改正項目は以下のとおり。

改正の項目 主な改正内容
1.協議を適切に行わない代金額の決定の禁止 ・対象取引において、代金に関する協議に応じないことや、
協議において必要な説明又は情報の提供をしないことによる、
一方的な代金の額の決定を禁止。
2.手形払い等の禁止 ・対象取引において、支払い手段として、手形払いの他、
電子記録債権やファクタリング等、代金相当額を得ることが困難なものを禁止。
3.運送委託の対象取引への追加 ・対象取引に販売、製造等の目的物の引渡しに必要な運送の委託を追加。
4.従業員数基準の追加 ・委託事業者に「300人超」(役務提供委託等は100人以上)、受託事業者に
「300人以下」(役務提供委託等は100人以下)の区分を新設し、
規制および保護の対象を拡充。
5.面的執行の強化 ・事業所管省庁の主務大臣に指導・助言権限を付与し、
「報復措置の禁止」の申告先として、事業所管官庁の主務大臣を追加。
6.用語の見直し ・下請代金支払遅延等防止法を「製造委託等に係る中小受託事業者に対する
代金の支払いの遅延等の防止に関する法律」に、「下請事業者」を
「中小受託事業者」に、「親事業者」を「委託事業者」に改正。

出典:公正取引委員会「下請法・下請振興法改正法の概要」をもとに当社作成

今回の法改正は、2024年12月公表の企業取引研究会報告書でも指摘された上昇したコストの価格転嫁に関する問題や運送委託における荷主・物流事業者間の問題(荷役・荷待ち)、下請法逃れの問題など、価格転嫁を阻害し受注者に負担を強いる商習慣を改善し、価格転嫁および取引適正化を図るものである。

改正下請法は、2026年1月1日より施行される。現行法では適用対象となっていない取引についても、改正により下請法の適用対象となる場合がある。企業においては、施行されるまでに既存取引を棚卸して契約内容や契約取引先の従業員数・資本金額を把握し、既存取引への適用の該否を確認することが求められる。

※企業取引研究会「企業取引研究会 報告書」 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/2024/241225_1.pdf

【参考情報】
2025年5月16日付 公正取引委員会HP:https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2025/may/250516_toritekiseiritsu.html

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