中小企業の脱炭素経営を実践的に学べるワークショップが佐賀県で開催!
2025.12.17
地域やサプライチェーンの「脱炭素経営」を推進したいとお考えの自治体や企業などの担当者の方も多いかもしれません。
今回は、そんな課題感をお持ちの方に役立つ、「脱炭素経営ワークショップ」をご紹介します。このワークショップは、自治体や商工団体、それにサプライチェーンをリードする企業などが主催者となって域内企業や取引先の企業にも脱炭素に向けた行動を促す内容となっています。
このワークショップが、佐賀県で開催されました。どんなことを学べるのか?内容をご紹介します。
流れ
- 佐賀県で開催された「脱炭素経営ワークショップ」
- そもそも「脱炭素経営」とは?
- 脱炭素経営の基本が学べる「入門編」の流れ
- 排出量の算定から削減計画の検討までを学べる「実践編」の流れ
- 参加した企業の感想は?
- おわりに
佐賀県で開催された「脱炭素経営ワークショップ」
2025年7月と10月、佐賀県主催で参加費無料の「脱炭素経営ワークショップ」が開催されました。ワークショップは、佐賀県内の中堅・中小企業を対象に「入門編」と「実践編」の2回に分けて実施され、のべ73社の企業が参加しました。
「令和7年度 佐賀県脱炭素経営ワークショップ」の日程


そもそも「脱炭素経営」とは?
脱炭素経営とは、気候変動対策(≒脱炭素)の視点を織り込んだ企業経営のことを指します。温室効果ガス(GHG※)の排出を減らしながら持続可能な事業活動を行い、企業価値の向上を目指す経営手法の1つです。
日本政府は、「2050年カーボンニュートラル」を掲げ、2030年度にGHGを2013年度比で46%削減、2050年までに実質ゼロを目指すことを宣言しています。
こうした中で、脱炭素経営への転換を先取りすることができれば、中堅・中小企業にとってもビジネスチャンスを増やすことが期待できます。具体的には、次のようなメリットを挙げることができます。
※GHG:温室効果ガス(Greenhouse Gas)の略称で、二酸化炭素やメタンなど、地球温暖化の原因となる気体の総称
省エネによるコスト削減
製造・業務プロセス、設備の見直しによって、光熱費・燃料費を削減できる
補助金を活用した設備更新
CO2排出量削減につながる設備更新に、補助金活用の可能性がある
資金調達力強化
脱炭素への投資や削減目標の達成で金利優遇などを受けられる融資制度を活用できる
売上維持・拡大
脱炭素取組を進めている自治体や企業との取引の維持・拡大が期待できる
消費者・利用者からの評価向上
自社ホームページ上での情報開示・メディアなどへの掲載によって、知名度向上や消費者・利用者に選ばれる企業となる可能性が高まる
社員モチベーション・人材獲得力向上
社会課題への取組により、環境意識が高いとされる若年層の採用や、社員が自分の仕事に誇りを持てる職場づくりにつながる(実際に「子どもに胸を張って、自分の仕事のことを話せるようになった」といった声も)
脱炭素経営の基本が学べる「入門編」の流れ
7月に行われた「入門編」は、MS&ADインターリスク総研の脱炭素経営コンサルタント3名が講師を担い、主に次のようなスケジュールで行われました。


この中で講師は、中堅・中小企業でも脱炭素経営が求められる背景について、2027年3月期より導入が始まるSSBJ基準※により、大企業には自社だけでなくサプライチェーン全体の脱炭素取り組みが求められること、こうした企業のサプライチェーンを構成する中堅・中小企業も削減が求められる流れにあることを説明しました。
※SSBJ基準:「サステナビリティ基準委員会(SSBJ)」が2025年3月に公表した、日本におけるサステナビリティ情報開示のための新しい基準
大企業からサプライヤーへの脱炭素経営要請の例


引用:環境省資料 https://www.env.go.jp/earth/tekiou/tekiouhou_gaiyou.pdf
排出量の算定から削減計画の検討までを学べる「実践編」の流れ
10月に行われた「実践編」は、主に次のようなスケジュールで行われました。


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「実践編」では「入門編」を踏まえて、自社の排出量の算定から削減目標を設定し、その上で削減計画を検討するまでの流れを、参加した38社の担当者が、ワークシートを使って実際に取り組みました。
まずは、Excelで提供された排出量の「算定シート」を使い、ガソリン、ガス、電力などのエネルギー別に、使用量や税込みの購入金額を記入すると、排出量に自動的に換算されて、排出量を算定することができました。
排出量の「算定シート」のイメージ


続いて行った削減目標の設定では、日本政府が目指している「2030年までに46%の削減」という指標や、各業界団体の指標を参考に参加各社が設定しました。
そして、設定した削減目標に基づいて「削減計画シート」に、具体的に自社で実践できそうな取組を記載していきました。
その際、GHGがどこから排出されているかを分類するときに使われる国際ルールである「Scope(スコープ)」に分けて記載していきました。
- Scope1:企業が直接排出しているGHG(企業が工場を稼働したり車の燃料を使ったりしたときに排出されるGHGなど)
- Scope2:電気や蒸気などを使ったときに間接的に排出されるGHG(企業が使う電気を発電所が作るときに排出されるGHGなど)
削減計画シートのイメージ


参加した企業の担当者は、Scope1にEV車を導入して、3年後に2台入れ替えるなどと記入したり、Scope2にはオフィス全体でLEDを導入するなどと記入したりしていました。
最後に、最終的な測定結果、設定した目標、削減計画を1つのExcelシートにまとめ、参加各社がその内容を発表しました。
参加した企業の感想は?
「入門編」と「実践編」の2回にわたって行われた「脱炭素経営ワークショップ」に参加した企業からは、次のような感想が聞かれました。
「会社として、脱炭素経営の実現を目指していて、組織・従業員をあげて推進していこうと考えています。ワークショップに参加して、社内体制作りについても学ぶことができたので、さっそく実践していこうと思いました」
「脱炭素経営の目的と具体的な進め方に加えて、他社の取組事例や実際に使えるExcelのツールも紹介してもらえて、脱炭素経営に対するイメージがクリアになりました」
「現在、自社でGX(グリーン・トランスフォーメーション)に取り組んでいるところだったので、ワークショップに参加したことで、さらに理解を深めることができました」
おわりに
「脱炭素経営ワークショップ」は、域内企業やサプライチェーンを構成する中堅・中小企業の事業活動における「排出源の特定と整理」をするきっかけにつながり、脱炭素経営を実現するための第一歩になります。
MS&ADインターリスク総研では、地域やサプライチェーンの「脱炭素経営」を推進したいとお考えの自治体や企業など向けに、ワークショップを開催しています。このワークショップでは、域内企業や取引先の中堅・中小企業が脱炭素経営を実践的に学び、自社で取組を進めるための力を身につけることができます。
自治体や商工団体、それにサプライチェーンをリードする企業など、組織・企業規模に関わらず脱炭素経営を基礎から学んで実践を促進したいお考えの皆さまは、MS&ADインターリスク総研にお気軽にご相談ください。