政府が「循環経済行動計画」を正式決定|3つの重要ポイントを整理 対象企業は持続可能な事業モデルへの転換が急務に
2026.6.29
日本政府は2026年4月21日、「循環経済に関する関係閣僚会議」において「循環経済行動計画」を正式決定した。本計画は、従来の廃棄物削減・リサイクル促進を中心とした政策の枠組みを大きく刷新し、再生資源の確保を経済安全保障・産業競争力・地域活性化と結び付ける新たな政策の方向性を打ち出したものである。企業にとっても事業戦略や資源調達、情報開示に直結する内容を含んでおり、今後の動向を注視する必要がある。
今回の行動計画の決定に至った背景には、中国による重要鉱物の輸出管理強化などに起因した世界的な資源獲得競争の激化がある。それを踏まえて、EUでは電子スクラップの域外輸出厳格化および製品への再生材使用の義務化に踏み切るなど、各国は「一次資源」のみならず「二次資源(再生資源)」の戦略的確保に向け動き出している。こうした状況を受け、日本政府は「資源循環」を単なる環境保全策と位置付けるのではなく、「喫緊の経済安全保障上の課題」として明確に位置付けなおした。
また、行動計画では、日本の資源循環における構造的課題についても整理している。具体的には、①事業者の9割超が中小零細企業で小規模分散しており、高度リサイクルへの投資が進んでいない点、②経済合理性による再生材の海外流出や焼却処分が常態化している点(鉄スクラップ年間771万tを輸出※1、廃プラスチックの約7割が焼却※2)、③動脈産業と静脈産業※3の連携不足により再生材のサプライチェーンが未成熟な点、④不適正スクラップヤード・違法業者によって公正競争環境が歪んでいる点等が列挙されている。こうした課題の解消が本計画の実質的な主眼に据えられており、単なる目標値の設定にとどまらない制度・産業基盤の整備が求められている。
続いて、循環経済行動計画において特に重要な内容について以下の3点に分けて示す。
1.重要鉱物・金属資源の国内循環強化
本計画の中核をなすのが、鉄・アルミ・銅・永久磁石に関する個別の数値目標の設定であり、2030年という明確な目標時期を示したうえで、定量的な目標を設定している(表1)。また、国内の資源循環の基盤構築に向けた支援措置として、2030年までに官民合計で1兆円の投資目標を掲げ、設備投資などに伴う金銭的ハードルの解消を目指している。
| 重要鉱物・金属資源 | 現状・課題 | 2030年目標 |
|---|---|---|
| 鉄 |
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高品位スクラップ処理能力を200万t/年追加確保する(目安) |
| アルミニウム |
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展伸材(板・棒製品)の国内生産量の約40%を再生アルミ由来とする(目安) |
| 銅 |
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国内生産の電解銅の約30%を再生資源由来とする |
| 永久磁石 |
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国内供給原材料の約30%をリサイクルで賄う |
2.再生プラスチックの利用義務化
2026年4月1日に全面施行された改正資源有効利用促進法により、自動車・家電等の製造事業者に対して再生プラスチック利用計画の策定・定期報告が義務付けられた(初回期限:2027年9月)。これまで「努力目標」とされてきた再生材活用が、行政の勧告・命令を伴う「企業の法的責務」に転換され、2030年の再生利用倍増目標に向けて設計段階からのリサイクル適合設計の普及や、マテリアル・ケミカルリサイクル技術の産業化が急務となっている。また、再生材を供給する側(静脈産業側)の課題だけでなく、需要側の市場形成も重視されており、再生材利用コストの低減に向けた実証・支援の検討や、自動車産業等における再生プラスチックの質と量の安定確保のための集約拠点構築に向けたビジネスモデルの検討などが進められている。
3.個別品目対応と地域・産業基盤の整備
廃棄量の急増が見込まれる太陽光パネルのリサイクル制度の整備、リチウムイオン蓄電池の国内循環体制構築、建設廃棄物・廃家具等の再資源化困難物への地域実証支援を進めている。他には、廃棄物の広域流通を支える「循環経済拠点港湾(CEポート)」の整備、国際的なE-scrap調達ネットワークの構築も施策に盛り込まれた。また「資源循環自治体フォーラム」を通じた先進事例の共有・事業マッチング、CEポートを核とした広域物流ネットワークの形成も進められている。法制度については、廃棄物処理法上の大臣認定制度を活用した規制緩和や法改正による不適正ヤード規制強化など、制度・インフラ整備に関する計画や今後の方向性が盛り込まれている。
本行動計画を踏まえると、日本は、従来の資源採掘・調達・製造を基盤とする産業構造から、持続可能な資源循環型の産業構造へと移行する大きな転換期にあると言える。そのため、鉱物資源・金属資源・再生プラスチック等を扱う企業は、上表が示す定量的な目標を参照しながら、自社の目標を見直し、必要に応じて新たに設定することが求められる。もっとも、目標値の設定はあくまで出発点に過ぎない。重要なのは、再生材の活用を前提とした調達戦略、製品設計、資源循環の仕組みを経営戦略に組み込み、事業構造そのものを転換していくことである。
こうした変化は、一見すると企業に対する規制強化や負担増加として受け止められやすい。しかし実際には、静脈産業との連携強化、地域レベルでの資源循環の構築、リサイクル適合設計の導入などを通じて、新たな市場やビジネス機会を創出する可能性を有している。また、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)提言においても、「資源利用」は重要なインパクトドライバーの1つに挙げられており、企業は資源循環を含む取り組みを通じて自然関連リスクを低減し、事業機会を獲得することが期待されている。この意味で、資源循環への対応は、単なる環境対応ではなく、競争力強化に向けた戦略課題である。
したがって、企業は今回の行動計画を単なる規制対応に留めるのではなく、持続可能な事業モデルへの転換を促す契機として捉え、戦略や取り組みを具体化していくべきである。環境負荷の低減と持続可能なビジネスモデルへの転換・創出を両立させる視点こそ、今後ますます重要となる。
※1)日本鉄リサイクル工業会「2025年の日本の鉄スクラップの輸出について」2026年2月3日掲載、2026年6月17日最終アクセス
https://www.jisri.or.jp/wp-content/uploads/2026/02/20260204_HP~
※2)一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチック製品の精算・廃棄・再資源化・処理処分状況を公表」2025年12月24日掲載、2026年6月17日最終アクセス
https://www.pwmi.or.jp/column/column-2700/
※3)動脈産業・静脈産業
動脈産業:天然資源を採取し、それを原料に製品を生産・製造・販売する産業のこと
静脈産業:製造過程や消費過程で不要となった製品や資材を回収し、処理・リサイクルする産業のこと
【参考情報】
2026年4月21日付 内閣官房HP掲載資料 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/economiccirculation/pdf/honbun_080421.pdf
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