コラム/トピックス

経産省、AI活用時の民事責任指針を公表 不法行為責任とPL法の論点整理

2026.7.10

経済産業省は2026年4月9日、「AI利活用における民事責任の解釈適用に関する手引き」※1を公表した。生成AIの普及に加え、AIを搭載したIoT製品やロボットの社会実装も進む一方、事故や権利侵害が生じた際に、誰がどのような民事責任を負うのかは明確とは言い難かった。今回の手引きは、こうした場面において現行法が適用され得るかの方向性を示したものだ。

整理の軸となるのは、不法行為責任と製造物責任法(PL法)だ。AIの利用形態を「補助/支援型AI」と「依拠/代替型AI」に分け、関係者ごとの注意義務や責任の考え方を示した。AI活用に関わる事業者の予見可能性を高めるのが狙いだが、新たなルールを設けるものではなく、個別事案への最終判断は裁判所に委ねられる。

「補助/支援型AI」は、人の判断を補助するもので、最終判断や行動は人が担う類型だ。契約書レビューや弁護士業務支援AI、画像生成AIなどがこれに当たる。この場合、利用者が本来負う注意義務の下で適切にAIを使ったかどうかが問われ、過失判断は従来の枠組みに沿って行いやすい。これに対し、「依拠/代替型AI」は、人の判断や行動の全部または一部をAIが代替することを前提とする類型を指す。外観検査AIや自律走行ロボット(AMR)などが例示された。この類型では、最終的な人の判断を前提とした従来の過失論だけでは整理しにくいため、AI利用者には、AIを組み込んだ業務プロセスを適切に構築し、リスクを低減しながら運用する義務が重視される。あわせて、開発者や提供者にも、設計上・説明上の注意義務がより強く求められる。

製造物責任との関係では、自律走行ロボット(AMR)の事例を取り上げた。PL法は、製品の欠陥によって生命、身体または財産に損害が生じた場合、製造業者らに無過失責任を課す。AI搭載製品では、事故の原因となった挙動をどのように「欠陥」と評価するかが焦点となる。

例えば、AMRが作業員に衝突して負傷させた場合、停止距離の計算に不具合があり、本来の安全機能が働かなかったケースでは、設計上の欠陥が認められる可能性が高い。他方、センサーの汚損や保守不良など、利用環境や運用に起因する事故では、ユーザー側の安全配慮義務違反が問われやすいと整理した。さらにAI搭載製品では、出荷後のソフトウエア更新も重要な論点になる。アップデートによって生じた不具合をPL法上の欠陥としてどう評価するかについては、複数の見解があり得ると紹介。その上で、出荷時点の安全設計だけでなく、リスク情報の提供やアップデート対応の在り方が、責任判断に影響し得ることを示している。

本手引きは、あくまで現行法の解釈適用に関するたたき台だ。想定事例も基本的な法律関係を整理するためのもので、オープンソースAIの利用や、開発者・提供者・利用者が複雑に分かれるケースなどは検討対象外としている。AIを巡る法的課題はなお流動的で、今後は裁判例の蓄積に加え、関係省庁の議論や法制度の見直しの動きを注視していく必要がある。

※1)https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_utilization_civil/pdf/20260409_1.pdf

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PL(Product Liability)リスクとは、設計上の欠陥、製造不良、表示や取扱説明の不備等により第三者に身体的被害や財産的損害を与えるリスクをいいます。
下記レポートでは、PLリスクの最新動向をわかりやすく解説します。以下のリンクからご覧ください。
https://rm-navi.com/search/item/2585

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