化学物質の漏洩拡散評価手法について【災害リスク情報 第71号】
2016.9.1
はじめに
総務省消防庁や経済産業省が公表している危険物や高圧ガスを取り扱う施設での事故は、近年増加傾向で、事故件数も高い水準で推移している。その中でも化学物質の流出や漏洩事故はこれらの傾向に大きく影響していることがうかがえる。化学物質の漏洩に伴う危険性には、可燃性ガスによる火災・爆発や、有毒性ガスへの暴露による人的な被害などが挙げられる。これら化学物質を取り扱う事業者にとって未然に事故を防止することは重要であるが、万一事故が発生した場合にどの程度の影響が発生するかを把握し、被害の影響軽減対策を予め検討しておくことも併せて必要である。
本レポートでは、化学物質の漏洩に関する事故の傾向や事故事例について紹介するとともに、化学物質の漏洩拡散評価について、弊社のコンサルティングで採用している手法の概要を説明する。
1.化学物質の漏洩事故事例
(1)事故件数の推移
総務省消防庁および経済産業省が危険物や高圧ガスを取り扱う施設に関する事故件数のデータを公表している。それぞれ図1および図2に示す。
図1の危険物施設では平成6年を境に流出事故の件数が増加傾向に転じ、図2の高圧ガス施設では平成13年を境に噴出・漏洩事故の件数が顕著に増加している。また、両データともに、近年の事故件数は高い水準で推移している。なお、図1で危険物施設数が併せて示され、その数が年々減少しているにもかかわらず、事故件数が増加・高止まりの状況にあることは注目すべき点である。
全文はPDFでご覧いただけます