第33号「リスクアセスメントのすすめ」
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2021.4.1
要旨
- 近年の日本における労働災害の死傷者数は下げ止まりの状況となっており、さらなる安全な職場づくりのためには危険の芽を事前に摘み取るリスクアセスメントの実施が望まれる。
- イギリスの労働災害による死亡者数は日本より大幅に少なく、その要因は日本よりも早期にリスクアセスメントを義務化したためだと推測される。
- 日本において職場のリスクアセスメントを実施している事業所の割合は50%弱で推移しており、十分な実施割合とは言えない。化学物質のリスクアセスメントは義務化されているが、該当する全ての化学物質について実施できている 事業所の割合は29%となっている。
- 最後に、化学物質のリスクアセスメントの手順を紹介する。
1.近年の日本における労働災害発生状況
1960年代のわが国では、労働災害により毎年約6,000人もの方が亡くなっており、ピーク時の1961年には6,712人であった。そのような状況を打開すべく、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、 快適な職場環境の形成を促進することを目的として「労働安全衛生法」が1972年に制定された。労働安全衛生法は、大きな事故や災害をきっかけに幾度も改正されて現在に至り、労働災害の減少に大きく貢献してきた。
近年の日本における労働災害発生状況の推移(図1)をみると、死亡者数は右肩下がりで減少しているものの、2019年でも未だに845人の方が亡くなっており、平均して1日に2人以上の方が労働災害で亡くなっているという現状である。 一方、休業4日以上の死傷者数では2009年以降横ばいとなっており、2019年の死傷者数は125,611人、つまり平均して1日に約350人の方が被災していることとなる。
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