レポート/資料

第31号「安全配慮義務の基本的な考え方について」

2020.5.1

要旨

  • 労働災害が発生した場合、安全配慮義務違反を理由に、高額の損害賠償を請求される事案が多くなっている。
  • 安全配慮義務という考え方は、昭和40年代の最高裁判例で登場し、その後、2008年施行の労働契約法第5条で初めて安全配慮義務の内容が明文化された。
  • ただし、具体的な安全配慮義務の措置内容までは定められていないため、過去の多くの裁判で述べられている"危険の予見"と"危険の回避"の2つに注目して対策を講じていくことが重要である。
  • 最後に、新型コロナウィルス感染と安全配慮義務との関係についても触れている。

1.労働災害と企業責任

労働災害が発生した場合、企業に対しては、一般的に「刑事責任」「民事責任」「行政責任」「社会的責任」の4重責任を問われる可能性があり、近年の労働者保護の法整備等の流れを受けて、 上記4重責任のうち、特に「民事責任」への注目が高まっている。

「民事責任」においては、被災労働者やその遺族などから、労働災害で被った損害について、安全配慮義務違反を理由に、高額の損害賠償を請求されることもあり、1億円を超える損害賠償事案も増えている。

本稿では、特に注目が高まっている「民事責任」において、キーワードとなる"安全配慮義務"の基本的な考え方を解説していく。

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