企業に求められるグローバル基準の人権配慮【新エターナル 第40号】
2016.9.1
1. はじめに
新興国などで起こる「人権侵害」は企業にとっても他人事ではありません。アジア経済の発展によりグローバル化がさらに進展し、日本企業が新興国などに製造・販売拠点を設置する、または現地企業と取引するケースが増えています。このような地域では、監視の目が十分にとどかない現地のサプライチェーンにおいて強制労働や危険労働など人権侵害の事例が報告されています。自社の行為のみでなくサプライヤーによる人権問題にも適切に対応することは、社会的な操業許可(Social license to operate)1を得るために必須の条件となっています。国際的な人権基準が整備される中、日本企業にもグローバル基準の人権配慮がますます求められます。
本稿では、特に監視の目が届きにくい新興国などのサプライチェーン上の人権リスクを中心に人権侵害の実態に触れた上で、国際的な人権基準を確認し、人権デューデリジェンスで求められる対応及びその課題について解説したいと思います。
2.なぜ人権に配慮するのか~人権侵害と企業との関係~
人権リスクは様々な経営リスクと関係しています。企業による人権侵害は訴訟リスクのみでなく、事業撤退のリスク、企業イメージ低下などのリスクを抱えています(図表1)。
特に最近では、タイでのミャンマー、カンボジア移民に対する著しい人権侵害がマスコミ・NGOなどに非難されています。タイは多くの日本企業が進出し、また食品など多くの産品を日本に輸出しており、日本との関係の深い国でもあります(詳細は下記の「タイにおける人権侵害」を参照)。
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