これまでの節電の振り返りと今後の電力事情【新エターナル 第27号】
2012.3.1
1. はじめに
東日本大震災を発端とした全国的な電力不足が始まってから、まもなく一年になろうとしています。
2011年3月から4月にかけて東京電力管内で実施された計画停電と、その後の夏・冬と政府から出された節電要請は、いまだに国民生活や経済活動に大きな影響を与えています。今後の原子力発電所の稼動状況次第では更なる節電が必要になる可能性も出てきた中、これまで取り組んできた緊急的な節電措置を、今後も繰り返していくことへの負担も無視できません。一方で、火力発電への依存によるエネルギーコストの増大に伴い、電力会社は電気料金の値上げを検討しています。特に企業にとっては大幅なコストアップとなるため、新たな経営課題となりつつあります。
そこで本稿ではこれまでの節電を振り返り、今後の電力事情にどう対応していけば良いのか、考察します。
2. これまでの節電の振り返り
(1) 昨夏の節電取り組みの成果
昨年の夏、電力供給力の不足を乗り越えるために東京電力・東北電力・関西電力において節電要請が出されました。これに対して企業や家庭で節電への努力が行われた結果、ピーク時の消費電力は大幅な削減されました(表1)。東京電力・東北電力管内では要請を上回る最大ピーク需要の抑制に成功したほか、計画停電を経験した東京電力管内の大口需要家(契約電力500kW以上)では27%もの節電を実現しました。
一方で製造業を中心として、休日・夜間シフトにかかる労務費や自家発電施設等の設備投資に相当な負担がかかったとみられます。経済産業省によると、節電対策の追加費用が数億~数十億円かかったケースもあったことから、今後どのようにコストを抑えながら節電を進めていくかが課題となっています。
(2) 節電における現場の声
しかし当然のことながら、実際に節電の取り組みを実施するのは家庭で暮らす人々やオフィスで働く従業員たちです。節電に取り組むあまり、現場の快適性を軽視しないように注意が必要でしょう。実際、経済産業省や経団連がとりまとめたアンケートによると、取り組んだ節電は照明や空調などの「指先ですぐにできる」取り組みに集中していた一方で、「節電効果がわかりづらい」「健康への悪影響が心配」という声も多く、無理な節電への抵抗感も大きいようです(図1)。こうした現場の声を無視した節電を進めてしまうと、取り組みへの積極性が失われ、持続的な取り組みにすることも難しくなるといえます。
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