
2013年度 No.5 「米国規格案 ANSI/ASIS SCRM サプライチェーン・リスクマネジメント-ベストプラクティス集の紹介」
2014.1.1
0. はじめに
サプライチェーンの代表的な管理手法に「サプライチェーン・マネジメント(Supply Chain Management; SCM)」がある(6頁参照)。供給者(サプライヤー)から最終消費者(エンドユーザ-)までのモノ(サービス)と情報の流れを統合的に見直し、サプライチェーン全体の効率化と最適化を実現するための経営管理手法で、1980年代前半に米国で始まったとされる。
近年、このSCMに変化が起きている。従来、SCMの焦点は、キャッシュフロー効率であったが、サステナビリティへの世界的な関心の高まりから、環境負荷の低減を目指す環境マネジメントの視点や、さらには頻発する自然災害やテロ等の緊急事態によるサプライチェーンの途絶・混乱を軽減する目的で、事業継続マネジメント(BCM)の視点の重要性が増しているのである。実際、SCMの先進国である米国では、これらの視点をリスクマネジメントと大きくとらえ、SCMにリスクマネジメントのプロセスとフレームワークを組み込むことを「サプライチェーン・リスクマネジメント(Supply Chain Risk Management; SCRM)」と呼び、関連するベストプラクティスを集めた米国規格を開発する動きが出ている。
本稿では、現在、米国で開発中の「ANSI/ASIS SCRM サプライチェーン・リスクマネジメント-ベストプラクティス集 (1)」を紹介する。
1. SCMとサプライチェーン・リスクマネジメント(SCRM)
サプライチェーン・リスクという言葉は、初期のSCMにおいても使われてきたが、サプライチェーンの途絶・混乱を生じさせるリスクというよりは、サプライチェーンのオペレーションの効率化にかかるリスク、あるいは、供給者管理や物流プロセスにおけるセキュリティにかかるリスクが焦点となっていた。このことは、ANSI/ASIS SCRMの構成にも深く影響している。後述するように(【表 ANSI/ASIS SCRM(ドラフト版)の目次】)、実に5つもの附属書が、これらのリスクマネジメントにかかるベストプラクティスを紹介するために割かれている。
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