レポート

「介護施設等における高齢者虐待防止研修の重要性とポイント」

2021.11.1

要旨

  • 介護施設・事業所における職員による高齢者虐待の発生件数は13年連続で過去最高を記録している。
  • 令和3年度介護保険制度の改正において虐待防止規定が新たに創設され、事業者には委員会の設置、指針の策定、研修の実施、担当者の設置が義務化された。
  • 介護施設・事業所における高齢者虐待発生の要因は、職員の教育・知識・介護技術等に関する問題が最も多い。
  • 虐待の防止には職員の高齢者虐待に関する正しい知識及び認識が不可欠であり、研修プログラムの例を示した。

1.虐待発生件数の推移と虐待防止規定の創設

介護施設・事業所における高齢者虐待発生件数が過去最高を記録している。厚生労働省が毎年公開している「「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果」によると、 2019年度における介護職員等による高齢者虐待の件数は644件あり、13年連続で増加した。虐待が発生したサービス種別は特別養護老人ホームが190件(29.5%)と最も多く、有料老人ホーム178件(27.6%)が続き、 入所・居住系サービスが上位を占めた。虐待による死亡事例は4件(4人)発生しており、昨年度から3件(3人)増加した。

こうした介護施設・事業所における高齢者虐待の増加を背景として、介護施設従事者等による高齢者虐待防止の取り組みを強化する観点から、令和3年度介護保険制度の改正において虐待防止規定が 新たに創設された。各介護サービスの運営基準も改正されたことにより、令和3年4月1日から全ての介護サービス事業所を対象に、利用者の人権擁護、虐待防止等の観点から、虐待の発生またはその再発を防止するための委員会の 定期的な開催、指針の整備、従事者への研修の定期的な実施、担当者を置くことが義務化された(3年間の経過措置有)。

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