レポート/資料

教育・保育施設等における事故報告書・ヒヤリハット報告書の運用状況と考察 医療福祉RMニュース<2025 No.2>

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[このコラムを書いたコンサルタント]

志賀 洋祐
専門領域
福祉・医療分野におけるリスクコンサルティング
役職名
リスクマネジメント第四部 社会保障・医療福祉グループ 医療福祉専任コンサルタント
執筆者名
志賀 洋祐 Yosuke Shiga

2025.7.1

要旨
  • 教育・保育施設等で発生する重大事故件数が過去最高を記録している。
  • 当社が独自に実施した調査では、教育・保育施設等における事故報告書やヒヤリハット報告書が十分に活用されていない状況がうかがえた。
  • 各施設におかれては事故報告書・ヒヤリハット報告書の運用状況を見直し、実効的な再発防止につなげていくことが求められる。

1. 教育・保育施設等における重大事故の発生状況について

保育施設や放課後児童クラブなどで発生した重大事故が8年連続で増加している。こども家庭庁が 毎年集計・公表している「教育・保育施設等における事故報告集計」の令和5年版によると、令和5年1月1日から12月31日までに国に報告のあった重大事故(死亡事故および治療に要する期間が30日以上 の負傷や疾病)は2,772件であり過去最多となっている。報告のあった重大事故の内訳としては死亡 事故が9件、負傷等の事故は2,763件(うち2,189件は骨折を伴うもの)であった。施設種別としては 保育施設で2,121件(うち死亡事故が6件)、放課後児童クラブで651件(同3件)であった。

図1 教育・保育施設等における重大事故発生状況の推移

出典:こども家庭庁「「令和5年教育・保育施設等における事故報告集計」の公表について」 (令和6年)を基にMS&ADインターリスク総研㈱にて作成

教育・保育施設等においては重大事故が発生した際には所在地の自治体へ報告することが義務付け られている。ここで言う重大事故とは、前述のとおり死亡事故と治療に要する期間が30日以上の負傷 や疾病を伴う重篤な事故とされている。一方、重篤な事故に限らず、被害が軽微なものや物損事故等 についても各施設内においては報告の対象として取り扱っているケースが一般的であることから、 これらを含めた教育・保育施設等において年間に発生する事故件数が相当数に上ることは想像に難く ない。当社は2025年2月に、教育・保育施設等における事故報告やヒヤリハット報告の運用状況に ついて調査を実施した。本稿ではその結果報告と教育・保育施設等において求められる事故・ヒヤリハット報告書の運用について考察する。

2. 教育・保育施設等における事故・ヒヤリハット報告書の運用状況に関する調査結果報告

当社では、2025年2月に教育・保育施設等を対象に自施設における事故報告書およびヒヤリハット報告書の運用状況について調査を実施した。調査の実施概要については表1のとおりである。

表1 調査の実施概要

(1) 事故報告書の運用状況について

事故報告書は発生した事実を明らかにし速やかに関係者への情報共有を図ることが主目的であるが、発生した事故の原因分析や対応策の検討等の振り返りを実施し、再発防止や類似する事故を防ぐことも重要な目的の一つである。

事故報告書の振り返りについては…

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