コラム/トピックス

防災・減災シリーズ(水災リスク):大雨がもたらす現象

[このコラムを書いたコンサルタント]

関口 祐輔
専門領域
安全文化醸成、安全管理全般、災害リスク関連の体制強化・支援に強み
役職名
リスクマネジメント本部 リスクマネジメント第一部長 主席コンサルタント
執筆者名
関口 祐輔 Yusuke Sekiguchi

2024.3.21

河川氾濫と内水氾濫とは

台風や梅雨前線などの影響を受けて発達した積乱雲は大雨をもたらし、河川の急激な増水や市街地の氾濫、がけ崩れなどの土砂災害を引き起こすことがあります。

  • 河川氾濫(外水氾濫)
    河川氾濫は堤防を越えて水があふれる(越水)、または堤防が壊れて水が流出する(決壊、破堤)現象であり、河川の流域でまとまった雨が降り続くことで発生しやすくなります。大規模な河川が氾濫した場合は流出する水量が多いため、広範囲が浸水する可能性があります。特に決壊が生じた場合は一度に大量の水が河川の外に流出するため、その大きな流速により決壊箇所付近の建築物などを流失させてしまうことがあります。
    2015年9月の関東・東北豪雨では、茨城県常総市を流れる鬼怒川が決壊し、広範囲の浸水と水流による家屋の倒壊・流失が生じました。常総市では死者2名、建物の全壊・大規模半壊が1,500件以上、床上・床下浸水が約3,200件以上の被害となりました(茨城県災害対策本部発表、2015年12月25日時点)。

  • 内水氾濫
    内水氾濫は市街地などで排水が追い付かず浸水する現象です。地域に整備された排水溝などの排水能力を上回る降雨が発生すると雨水は街中に溢れやすくなります。台風や前線の活動などの影響で発生する集中豪雨や、夏の夕立のような短時間の急な大雨(気象庁は使用を控えていますが、マスメディアなどでは「ゲリラ豪雨」とも呼ばれています)の場合に内水氾濫が発生しやすくなります。地表面がアスファルトやコンクリートに覆われている都市部の低地部などで発生することが多く、「都市型水害」と呼ばれることもあります。

    1999年6月から7月にかけての梅雨前線豪雨では、福岡市博多区の地下街や、東京都新宿区の倉庫地下でそれぞれ1名が亡くなりました。2000年9月の東海豪雨では、死者・負傷者108名、住家浸水71,603棟の被害が発生しました。これらの水害は河川の氾濫に加えて地域の排水能力以上の降雨が発生して内水氾濫も併発したことから、被害が拡大したと考えられています。

土砂災害(土石流、がけ崩れ、地すべり)とは

山地や丘陵地などで集中豪雨などにより降水量が多くなると、地盤が緩み、土砂災害が発生することがあります。また、大規模な地震や雪解け水に起因して発生する場合もあります。土砂災害は、土砂の移動が強大なエネルギーをもつとともに、突発的に発生することから、人的被害につながりやすく、また家屋などにも壊滅的な被害を与えることが多くみられます。大規模な土砂災害の多くは、梅雨期や台風接近時の大雨が原因となって発生しており、土砂災害は、地盤崩落のメカニズムに応じて「土石流」、「がけ崩れ」、「地すべり」の3つに分類されます。

近年の土砂災害発生件数の内訳では「がけ崩れ」が最も多く、全国で年間約700件発生しています。2014年8月豪雨による広島の土砂災害では、広島市内で1時間降水量100mm以上の猛烈な雨を記録し、市内各所で土石流による甚大な被害(死者74名、全壊家屋179棟/広島市発表)をもたらしました。

  • 土石流
    谷や渓流から、土砂や岩石、流木などを含んだ濁流が一気に下流へ押し流される現象のことをいいます。土石流の速度は速く、大きな破壊力をもつため鉄砲水とも呼ばれます。山から続く勾配の急な谷や渓流があり、その上流に崩れやすい土砂があると土石流の発生危険が高くなります。谷や渓流の出口付近や周辺の扇状地は土石流に襲われる危険が大きくなります。
  • がけ崩れ
    急な斜面において山体や崖の一部が崩壊することにより土砂が崩れ落ちる現象をいい、「急傾斜地の崩壊」とも呼ばれています。大雨により地盤が緩むことで発生するほか、地震による揺れでも発生することがあります。傾斜がおよそ30°以上、高さが5m以上の斜面は、崩壊による危険が高いといわれており、崩壊時は崩れ落ちた斜面の高さの2 ~ 3倍程度先の範囲まで土砂が広がり、影響を及ぼす可能性があります。
  • 地すべり
    地すべりは、緩やかな斜面に水がしみ込み、地面が動き出すことをいいます。広い範囲の地盤がゆっくりと長時間にわたり移動し、家や田畑、道路などに一度に大きな被害を与えます。大雨、長雨のあとや雪解大雨、長雨のあとや雪解け時に発生することが多いと言われています。

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