コラム/トピックス

防災・減災シリーズ(雪災リスク):雪による災害を理解する

[このコラムを書いたコンサルタント]

関口 祐輔
専門領域
安全文化醸成、安全管理全般、災害リスク関連の体制強化・支援に強み
役職名
リスクマネジメント本部 リスクマネジメント第一部長 主席コンサルタント
執筆者名
関口 祐輔 Yusuke Sekiguchi

2024.3.21

大雪とは

日本海側で大雪になるときのパターンには大きく分けて、山沿いで大雪になる山雪型の大雪、海岸や平野部で大雪となる里雪型の大雪の2つがあります。

山雪型の場合、西高東低の冬型の気圧配置となり上空の寒気の中心が日本海北部や北日本にあると、強い北西の季節風が日本列島の高い山々に吹き付けられることにより山地で積乱雲が発達し、大雪がもたらされます。里雪型の場合は日本海の中・南部に上空の寒気の中心が入り、大気の状態が不安定となることで海岸沿いを中心に積乱雲が発達したり、低気圧が上陸したりすることにより平野部を中心に大雪をもたらします。

西日本から東日本にかけての太平洋側では、日本海側と比べると大雪の頻度は少ないですが、「南岸低気圧」と呼ばれる南側の沿岸部を通過する低気圧によって大雪がもたらされることがあります。2014年2月に発生した関東甲信地方の大雪は発達した南岸低気圧によってもたらされたものであり、甲府(山梨県)で114cmなど、北日本や関東甲信地方の太平洋側地域を中心に18地点で観測史上1位の最深積雪を記録しました。
この大雪と暴風雪により建物の倒壊や屋根からの落雪などによる事故が多く発生し、群馬県、埼玉県など9県で死者が26名、負傷者は701名にのぼり、近畿地方から北海道の広い範囲で建物損壊などが生じています。

雪による被害

雪による災害は、建物などへの積雪や落雪を原因とする損壊事故、道路・鉄道への積雪による交通障害、斜面の一部が崩壊する雪崩事故などがあります。特に、大雪などにより過剰な積雪荷重が建物などに加わると、建物各部の破損や倒壊が生じ企業活動に大きな影響をもたらすおそれがあります。

積雪荷重が過剰となる原因は以下のとおりです。

  • 記録的な大雪により、通常想定される積雪量を超過した場合
  • 雨水などの水分を含んだ雪や、融解・凍結を繰り返した雪など、密度の高い雪が積もった場合
  • 雪だまり 注1)、雪庇(せっぴ)注2)、つらら 注3)などにより、局所的に大きな力が加わった場合
  • 雪下ろしを実施すべき建物で、雪下ろしを実施しなかった場合
  • 落雪を期待して設計がされた傾斜屋根で、落雪しなかった場合

注)
1)雪だまり:風向と屋根の形状により、局所的に雪がたまること。屋根では風下側に積雪が偏りやすい。また、風上・風下の壁面に雪だまりが生じる。また、L字型など入隅となった屋根では、雪だまりが生じやすい。
2)雪庇:風下の軒先に形成される雪のかたまり。風により積雪の位置が軒先より出るほうに伸びていき、庇状に積雪することをいう。
3)つらら:雪解け水が軒先で再凍結することにより生じる。当初は小さなつららでも、雪解け水がつららを伝うため、徐々に成長し非常に大きなものとなる場合がある。

過剰な積雪以外でも、積雪の作用により損害が生じる場合があり、その被害形態を以下のとおり例示します。

  • 雪庇やつららが落下することにより、下部の屋根、庇、屋外設備などに衝突し、破損する。
  • 解け始めた雪が滑ることで、雪止め、防水シートが破損する。
  • 壁際の積雪による側圧で、外壁、パラペット等が変形する。
  • フェンスなどが積雪に埋もれ、側圧、沈降圧により変形する。

積雪による作用以外では、変形・損傷した箇所からの水の流入により、漏水、凍害が生じることがあります。
【事故例】

  • 積雪の重みにより、工場建物の屋根が崩落し、柱が傾いた。また、屋根材の変形により室内に雪解け水が流入し、室内の設備什器や商品が水濡れ損害を被った。
  • 記録的な積雪荷重のため、ソーラー発電所のモジュール架台および太陽光パネルが損傷した。このため発電が停止し、逸失利益が発生した。
  • 建物の庇が積雪により変形・脱落し、それに伴い照明が破損した。また、屋根からの落雪によりエアコン室外機が破損した。
  • 積雪の重みによりテント倉庫が倒壊し、倉庫内に保管していた出荷待ち製品が水濡れ損害を被った。
  • 実験棟の屋根が雪の重さに耐えられず崩落し、建物を支える柱も屋根に引っ張られるように屈折。屋根・壁・柱ともに損傷著しく強度的に再使用は不可能と判断し、建物全体を解体することとなった。

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