コンサルタントコラム

防災・減災シリーズ(火災・爆発リスク):火災リスクを考える①

[このコラムを書いたコンサルタント]

関口 祐輔
専門領域
安全文化醸成、安全管理全般、災害リスク関連の体制強化・支援に強み
役職名
リスクマネジメント本部 リスクマネジメント第一部長 主席コンサルタント
執筆者名
関口 祐輔 Yusuke Sekiguchi

2024.3.23

業種別の火災・爆発リスクの特徴

業種別に火災・爆発リスクをまとめると、個々に特徴はありますが、下記のとおりです。火災・爆発リスクを予防するためには、事業所・施設の火災リスクを定常・非定常の両面でリスクアセスメントを実施し、対策を講じる必要があります。

  1. 金属機械器具製造
    取扱品が不燃性であることから火災危険は低いが、多量の機械油が使用されるため、ひとたび火災が発生すると大きな損害が発生する危険がある。
  2. 化学工業
    化学品の原料に危険物が多量に使用されることが多く、高温・高圧プロセスなどで火災・爆発危険が高い。
  3. プラスチック製品
    プラスチックは可燃物であり、また成形などに熱を使用するため、火災危険は高い。
  4. 電気機械器具
    取り扱われる製品に可燃物が多く、梱包材も多量に存在するため延焼速度は速い。また、精密設備が多く、わずかな火炎や煙でも多大な損害が発生する恐おそれがある。
  5. 百貨店・店舗
    発生頻度は低いが、いったん一旦出火すると、大量の可燃物(商品)が集積していること、建物内に区画が少ないことから、多大な被害が出る可能性が高い。また、建物内に不特定多数の人がいるため、避難上の問題が生じやすい。
  6. ホテル
    発生頻度は低いが、建物内に不特定多数の人がいるため、避難上の問題が生じやすい。特に夜間は就寝者や酔客も多く危険。
  7. 病院・社会福祉施設
    発生頻度は低いが、傷病人や高齢者、見舞客等の不特定多数の人がいるため、避難上の問題が生じやすい。特に夜間は就寝者も多く危険。
  8. 倉庫
    発生頻度は低いが、一旦出火すると、大量の可燃物が集積していること、建物内に区画が少ないことから、多大な被害が出る可能性が高い。

出火防止対策のポイント

出火防止を考える場合、第一に人が起こす不注意な行動を未然に防止するための対策(ヒューマンエラー防止対策)を検討する必要です。また、万一、人が不注意な行動を起こした場合にもそれが火災に結びつかないよう環境を整備していくことも必要です(フェールセーフ対策)。

出火防止には、以下の日常管理が重要です。

  1. 喫煙管理
    • 指定喫煙場所を設け、その場所以外は禁煙とし指定喫煙場所の周囲には可燃物がないよう整理・清掃を十分に行う。
    • 指定喫煙場所にはたばこ消火用の水や小石を入れた大型の灰皿を配備し、各所に吸い殻処理専用の金属製回収容器を備えておく。
  2. 電気設備の管理
    【主なポイント】
    • 設置場所の環境に適合した配線・設備とする。使用電気容量を無視した電気配線は行わない(家庭用テーブルタップの使用など)。また、作業環境に応じ、防爆型・防水型の配線・設備とする。
    • 不要となった配線の放置や、定格容量を超える使用となりやすいタコ足配線をしない。電気工事は資格を保有する専門担当者が行う。
    • 受配電設備・接続器具・回転機器は定期的に点検する。
    • 照明器具と可燃物が近接しないようにする。
    • 電源はできる限り元電源で落とす。
  3. 整理・清掃
    • 火気使用場所周辺の整理・清掃を徹底し、延焼媒体となるダンボールなどの可燃物や灯油、廃油などの危険物は放置しない。また、不要となった資材は、機械室や階段室などに置かず、速やかに処分する。作業場・通路・物品置き場は床上にペイントで区画表示する。
    • 油を含んだウエスはふた蓋付きの金属製収容缶に入れ、毎日処理する。回転機械、電気設備などの周辺は特に清掃を徹底する。
  4. 危険物の管理
    • 危険物は独立の建物または作業場と離れた場所に貯蔵する。それぞれの危険物の特性に応じ、取り扱い・保管等に関し必要な対策を講じる。
    • 作業場に持ち込む危険物は必要最小量とし、小出し油置き場を設け使用後の容器はふた蓋をしめる。引火性の危険物が使用される場所は火気厳禁、電気設備は防爆型仕様とし、十分な換気を行う。
  5. 可燃性ガスの管理
    • ガスボンベは漏れたガスが充満しないように屋外に置き、直射日光を避け、転倒しないように鎖などで固定する。
    • ガス配管は、他の配管と色分けして管理する。ガス器具の近くには、ガス漏れ警報器を設置する。また、ガス漏れ警報器の定期点検を実施する。
    • 作業終了後は必ず元弁・元栓を閉める。
  6. 溶接・溶断作業の管理
    • 臨時火気の使用は許可制として、許可札および安全チェックリストにより管理する。
    • 作業場所の安全確認、消火器の増備、終業直後および1 ~2時間後の残火確認を行う。
    • 可燃物の近くや高所で作業を行う場合は、防炎シートで火花の飛散を防止し、必ず火花飛散の監視人を配置する。
    • ゴムホースおよび接続部分は漏れがないかを定期的に点検する。
    • 建物改修工事や機械設備のメンテナンス等に伴う外部業者による溶接・溶断作業についても、自社作業と同様の管理を行う。

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