【事業継続マネジメント】サプライヤーのBCM取組を支援するポイント
[このコラムを書いたコンサルタント]
- 専門領域
- BCP/BCM(事業継続マネジメント)
- 役職名
- リスクマネジメント第四部 事業継続マネジメント第二グループ 上席コンサルタント
- 執筆者名
- 加藤 正嗣 Kato Masashi
2024.4.16
大地震、水害、新型コロナウイルス等でサプライチェーンが途絶した経験を受け、企業でもサプライチェーン強靭化対策の重要性は十分に浸透している。災害等を想定したサプライチェーン強靭化対策としては、完成品在庫等の積み増し、調達先の複数化、サプライチェーンの「見える化」等、様々な対策があるが、本稿では、その中でも、サプライチェーンを構成する各サプライヤーのBCM(事業継続マネジメント)レべルの向上支援にスポットを当てて、その推進ポイント等を整理したい。
① BCP策定支援
まずは、サプライヤーのBCM取組を「0から1」にすることを目的に、例えば、連絡先リストの作成や、緊急時の「社長の代行者」の整理等、簡単なプランを出来る範囲で策定してもらう「BCP策定」支援からスタートすることを推奨する。BCMゼロの状態からの脱却の有効性は過去の災害でも確認されており、最優先で推進すべき支援である。
この支援は、サプライヤー全体にプランの雛形を提供する等、短期的かつ均一的な対応で一定効果を出すことが可能である点が特徴である。もっとも、サプライヤーの数が多いという特性を踏まえると、全てのサプライヤーに均一の支援を実施するのは現実的ではない。例えば、「付き合いの優位性(強さ)」、「調達部材等の代替性」等の観点からサプライヤーに優先度をつけて、支援のあり方や負荷に差を設ける対応が必要になる。
② BCP育成支援
次に、サプライヤーのBCM取組を「1から10」にすることを目的に、前記プランの策定に加え、プランの実効性を向上させる取組に対する支援の実施も推奨する。危機に直面した際に臨機応変に対応できるようにするためには、「情報収集」をしっかり実施し、取りまとめた情報から「最適な戦略オプションを選択」し、「戦略に沿って手順を組み替えて実行」していく体制の準備が必要となるが、BCPの育成取組は、このような臨機応変対応への備えそのものであり、前記策定支援に加えて優先的に推進すべき支援である。
ただ、この支援は、策定取組の支援と異なり、雛形等の短期的かつ均一的な対応で効果を出すことはできない。例えば、育成取組のひとつとして「事前対策の実装」があるが、耐震補強、非常用電源確保、完成品在庫の積み増し、他社との連携推進等、実装すべき事前対策は、企業の業態、立地、保有する経営資源等によって異なるため、サプライヤーごとに異なった個別の取組となる。また、その取組は、事前調査、各種調整、資金確保等、時間をかけて実施するもので、しかも、限られた経営資源のなかで、優先順位をつけて実装するものである。さらに、サプライヤーの数が多いという特性も考慮しなければならない。
これらを踏まえた支援として、「支援対象や内容を絞り込む」方策か、「システムを使って自走化を促す」方策が考えられる。前者については、例えば、日頃から深い関係があり調達部材の代替が難しいサプライヤーに限定して、特定の調達部材に関連する設備の事前対策の実装状況のみを管理・支援する等の対応が想定される。
一方、後者については、例えば、戦略構築や事前対策、教育訓練の実施等、その内容理解や継続実施にかかる膨大な手間を解消できるシステムを各サプライヤーに導入してもらい、あわせてサプライヤーの自走化の進捗状況も管理する対応が想定される。なお、MS&ADインターリスク総研では後者に関連するシステム「レジリード」をリリースしたので参考にしていただきたい。
(2024年4月11日 三友新聞掲載弊社コラム記事を一部修正のうえ転載)
レジリードについて
レジリードは、レジリエンスを学び(Read)、自ら先導していく(Lead)するという意味の造語ですが、システムの利用者が、自らBCPを策定して育てていくことを支援するシステムです。
このシステムでは、BCPを育てていく局面として、大きく「作れる」、「見直せる」、「緊急時でも活用できる」、「簡単に相談できる」の4つに整理したうえでメニューを構成しています。
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