コラム/トピックス

【介護報酬改定】“BCP未策定”事業所に求められるポイントは?

[このコラムを書いたコンサルタント]

志賀 洋祐
専門領域
福祉・医療分野におけるリスクコンサルティング
役職名
リスクマネジメント第四部 社会保障・医療福祉グループ 医療福祉専任コンサルタント
執筆者名
志賀 洋祐 Yosuke Shiga

2024.6.3

令和6年度(2024年度)の介護報酬改定で、BCP(事業継続計画)を策定していない介護サービス事業所に基本報酬の減算を導入する方針が示されました。
具体的にどういった事業所が対象となるのか?そして、何をする必要があるのか?
リスクマネジメントのコンサルティングを行うインターリスク総研の医療福祉専任コンサルタント、志賀洋祐さんに聞きました。

令和6年度介護報酬改定で変わることとは?

厚生労働省は、令和6年1月22日の社会保障審議会(介護給付費分科会)の中で、令和6年度の介護報酬改定で、感染症もしくは自然災害のいずれか、または両方のBCPを策定していない介護サービス事業所に基本報酬の減算を導入する方針を示しました。(居宅療養管理指導、特定福祉用具販売を除く)。

ただし、令和7年3月31日までの間は、感染症の予防及びまん延の防止のための指針の整備及び非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合には、減算を適用しないこととしました。また、訪問系サービス、福祉用具貸与、居宅介護支援についても1年間の減算を適用しない経過措置期間を設けることとしています。

これらのサービス種別においては、「感染症の予防・まん延防止の指針」の策定が義務化されたのが直近であることや、「非常災害対策計画」の整備が義務付けられていないためと考えられます。

そもそも、なぜBCPを策定する必要があるのですか?

コロナ禍に代表されるパンデミックや、激甚化・頻発化している自然災害によって、介護サービス事業所においても倒産や事業継続が困難となるケースが確認されています。

こうした現状を背景として、介護サービス事業所の感染症や自然災害への対応力を強化することを目的に、令和3年度の厚生労働省令改正によって指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(以下「運営基準」)が改正され、全ての介護サービス事業者を対象に「業務継続計画の策定等」 として、以下の3つの取組が義務化されました。

  1. 業務継続計画(BCP)の策定
  2. BCP研修の実施
  3. BCP訓練の実施

令和6年3月31日までは義務化の経過措置期間でしたが、4月以降は策定のみならず、研修や訓練も実施していく必要があります。

業務継続計画(BCP)の策定で求められているのはどんなことでしょうか?

BCP策定の目的は「感染症や災害が発生した場合であっても、利用者に必要な介護サービスの提供を継続的に実施するため、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るため」とされ、感染症と自然災害それぞれについて策定することが求められています。

また、策定にあたって各BCPに盛り込むことが必要な項目が解釈通知により以下の表のように示されています。

BCPに必要とされる項目
出典:厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について 」を基にMS&ADインターリスク総研にて作成

あわせて、運営基準では「定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて変更を行うこと」とされていることから、事業所を取り巻く状況の変化や、この後に説明する訓練によって明らかになった課題などに応じて、作成したBCPについて適宜修正を図ることなどが求められることになります。

BCP研修の実施では何をすべきでしょうか?

令和6年4月以降は作成したBCPを共有するための研修を定期的に実施することが必要です。

研修では、策定したBCPの具体的な内容の共有、平常時の対応の必要性や緊急時の対応にかかる理解の励行を図ることとされていて、あわせて実施の記録を残すことも義務となりました。

BCP訓練では、どんなことを実施する必要がありますか?

感染症や自然災害が発生した場合において迅速に行動できるよう、事業所内の役割の確認、感染症や自然災害が発生した場合に実践するケアの演習などを定期的に実施すること、とされています。

訓練の実施方法に関する指定はありませんが、事業所の状況や訓練の内容、検証したい課題などに応じて机上訓練や実動訓練を組み合わせながら実施することが推奨されています。

BCP未策定事業者はどのように対応したら良いでしょうか?

報酬減算に経過措置期間が設けられたとはいえ、BCPは感染症や自然災害が発生した場合であっても利用者に必要な介護サービスの提供を継続させること、つまり、利用者を守るためのものであり、ひいてはサービスを提供する職員を守るものでもあるので、未策定(未着手)の事業所におかれては早急な対応が求められます。

対応にあたっては、厚生労働省のホームページで、介護サービス事業者向けのBCPガイドラインや記入例を含むひな形、研修動画が公開されているので、 こうしたものを活用するのが有効です。

また、弊社でもBCPの策定に係る各種相談や、訓練へのコンサルティングなどを行っていますので、お気軽にお問い合わせいただければと思います。

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