レポート

感情管理が求められる「感情労働職」の課題と対応策 ~ストレス対処力と協働的職場風土に着目して~【RMFOCUS 第90号】

[このレポートを書いたコンサルタント]

岡田 芳樹
会社名
MS&ADインターリスク総研株式会社
所属名
基礎研究部 受託調査グループ
上席研究員
執筆者名
岡田 芳樹 Yoshiki Okada

2024.7.4

見どころ
ポイント
  • 顧客のために感情管理が求められる職業を「感情労働職」と呼ぶ。感情労働職は介護職、コンサルタント、飲食店店員や営業など多くの職種が該当する。
  • 感情労働職において大きな課題が感情の枯渇が引き起こすバーンアウト(燃え尽き症候群)である。
  • バーンアウト防止策として、個人のストレス対処力(Sense of Coherence:SOC)向上、そして組織における協働的職場風土の構築などがある。
  • 労働者が減りつつある社会において、企業や自治体が貴重な労働者をバーンアウトで失うことがないように、社会全体がSOCにより着目し、SOC向上プログラムの開発が進むことが期待される。

1. 肉体労働、知的労働に次ぐ第三の労働「感情労働」とは

⑴ 感情労働の定義と特徴

①感情労働とは
「感情労働(emotional labor)」という言葉が誕生したのは1983年である。アメリカの社会学者であるホックシールド(A.R.Hochschild)注1)が著書『管理される心(The Managed Heart-Commercialization of Human feeling)』にて感情労働の概念を提唱した。その著書の中で、ホックシールドは感情労働の定義を「公的に観察可能な表情と身体的表現を作るために行う感情の管理」としている。このような感情労働を要請される職業は「感情労働職」と呼ばれる。 この感情労働は、現在では肉体労働、知的労働に次ぐ、第三の労働とされている。ただし、肉体労働でありながら感情の管理を求められる職業もあるように、この三つの労働は明確に区分けされるわけではない。企業に勤める人の多くは「肉体、頭脳、感情」の混合労働であり、それぞれの職種でその比重が異なる。

②感情労働における三つの特徴
感情労働は次の三つの特徴をもつ。
・顧客との対人的接触をもつ
・労働者が他人の中に感情変化を引き起こす
・雇い主が労働者の感情管理活動を監視する
この三つの中でも「顧客との対人的接触をもつ」が特徴的であり、この特徴ゆえに在宅勤務が困難な職種とされていた。このような職業は、コロナ禍において社会に必要不可欠な職業として「エッセンシャルワーカー」と呼ばれ注目を集めた。経済社会の基幹職業であるエッセンシャルワーカーの多くは、感情労働者が占めている。
感情労働は現代社会において多くの職種が該当する。介護職や教員職をはじめ、営業職、事務職、窓口対応、コンサルタント、飲食店店員、セミナー講師や美容師など、多くの職種が感情労働職に含まれる。運転士やエンジニアといった技術職においても、現代では高度な技能を提供するだけでなく、社内外での交渉も仕事の一つになりつつある。そのため、技術職も感情労働に含まれる。

⑵ 我が国の感情労働研究

感情労働の研究は1980年代に始まり、研究対象は客室乗務員であり、次に看護職だった。海外の先行研究をさかのぼっても、この二つの職種に関する研究が多数である。その後研究対象は、教職員や銀行労働者、対人援助職など、サービス職全般に広がった。
我が国では、1990年代半ばから研究が始まった。2019年のデータではあるが、我が国における研究対象別割合を示したものが図1であり、「全般」を除けば、職種は大きく五つに分かれている。・・・

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