コンサルタントコラム

南海トラフ地震臨時情報を受けて企業に求められる対応とは?

[話を聞かせてもらったコンサルタント]

石川 美有
専門領域
BCP/BCM(事業継続マネジメント)
役職名
リスクマネジメント第四部 事業継続マネジメント第一グループ
上席コンサルタント
氏名
石川 美有

2024.8.14

2024年8月8日に宮崎県で震度6弱の揺れを観測したマグニチュード7.1の地震が発生したことを受け、気象庁は南海トラフ地震の想定震源域では大規模地震が発生する可能性がふだんと比べて高まっているとして「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表し、巨大地震への注意を呼びかけています。では、南海トラフ地震臨時情報を受けて、企業はどのような対策を講じる必要があるのでしょうか。そもそも南海トラフ地震臨時情報とはどういったものでしょうか。
事業継続マネジメントが専門で、MS&ADインターリスク総研の上席コンサルタントである石川美有さんにポイントを聞きました。

そもそも南海トラフ地震臨時情報とは?

「南海トラフ地震臨時情報」は「南海トラフ地震の想定震源域付近で異常現象が観測され、その現象が南海トラフ沿いの大規模地震と関連するかどうか調査を開始、または継続している場合」、および「観測された異常現象の調査結果を発表する場合」に、気象庁から発表されるものであり、2019 年5 月31 日より運用が開始されています。実際に臨時情報が発表されたのは、運用開始以来今回が初めてです。

臨時情報にはどんな種類があるの?発表のフローは?

「南海トラフ地震臨時情報」には、「調査中」、「巨大地震警戒」、「巨大地震注意」、「調査終了」の4つがあり、情報名の後にキーワードが付記され「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」等の形で情報発表されます。 気象庁において、南海トラフ沿いでマグニチュード6.8以上の地震等の異常な現象を観測した後、5~30分後に南海トラフ地震臨時情報(調査中)が発表され、その後、「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」の臨時会合における調査結果を受けて、該当するキーワードを付した臨時情報が発表されます。



なお、南海トラフ臨時情報公表後の推移等は「南海トラフ地震関連解説情報」が気象庁から公表されます(本記事執筆時点では、南海トラフ地震関連解説情報(第6号)(令和6年08月14日15時30分)が最新)。

【表1:南海トラフ地震に関連する情報】

臨時情報の対象地域は?

国は、南海トラフ巨大地震によって大きな揺れや津波の恐れがある29の都道府県、707市町村が防災対策の推進地域に指定しており、茨城県から沖縄県にかけての広い地域に及んでいます。首都圏では東京都や千葉県、神奈川県、茨城県などもこれに含まれます。仮に自社拠点が推進地域に含まれていない場合でも、取引先やサプライヤー、社員の実家等まで含めると、何らかの影響を受ける可能性が高いと思われますので、警戒や準備を怠らないことが大切です。

企業はどういった対応を実施すべきか?

内閣府が公表した「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン」(2021年5月改訂)を一読し、このガイドラインに沿った対応を着実に実施することが重要です。ガイドラインは、住民編・企業編に分かれており、企業編に臨時情報「巨大地震注意」、「巨大地震警戒」の各々の場合に企業がとるべき対応が整理されています。たとえば、「臨時情報(巨大地震警戒)発表後は、企業活動を1週間どのように継続するか検討する」、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)発表時は個々の状況に応じて、後発地震に備えて注意した防災対応を検討する」などが推奨されています。具体的な検討項目を8つの項目に整理しています(表2)。

ガイドラインに示された、南海トラフ地震臨時情報に対する企業活動の基本的な考え方は、「南海トラフ地震臨時情報発表時には、後発地震の発生にそなえて種々の防災活動や被害軽減のための準備を行うべきであり、特に、「警戒」が発表された場合は、平常業務の縮退もやむを得ないという考え方です。ただし、重要な業務については安全を確保したうえで継続する方策を検討すべき」といえます。表3は2022年当時の情報ですが、弊社クライアントのうち、「南海トラフ地震臨時情報」の発表時の対応事項を検討・整理している5社の対応方針を紹介したものです。事業継続の方針は、各企業が自社の事業や社会的責任、立地などを考慮しながら丁寧に検討されたものです。「警戒」と「注意」での対応の違いなど、参考にしていただければ幸甚です。

おわりに

本記事執筆時点(2024年8月14日)では、南海トラフ地震臨時情報が発出されてから6日が経過し、余震の発生はあるものの大規模な後発地震は発生していません。各企業は引きつづき「南海トラフ地震関連解説情報」で最新の情報を把握し、安全に配慮しながら活動に従事される状況かと思いますが、本インタビューがその一助となれば幸いです。 なお、南海トラフ地震臨時情報が出てから右往左往する企業も少なくない印象です。速やかに行動が出来るよう備えられているのが本来あるべき姿であることを心に留めていただき、この南海トラフ地震臨時情報が落ち着いた段階で、今般得られた反省材料などを自社BCPの見直しなどに活かしていただけるよう祈念致します。

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