台風7号上陸間近 本格的な台風シーズンの到来を受けて企業に求められる風水害対策とは?
[話を聞かせてもらったコンサルタント]
- 専門領域
- 災害リスク対策
- 役職名
- リスクコンサルティング本部 コンサルティング企画室長
- 氏名
- 三和 多賀司
2024.8.15
2024年8月12日に岩手県に上陸した台風5号は、東北地方に記録的な大雨をもたらし、多数の住民が一時避難を余儀なくされ、各地で土砂崩れや冠水、床上浸水などの被害が出ました。台風5号が沈静化したのもつかの間、今度は台風7号が今週末に関東地方を直撃すると予想されており、企業活動にも大きな被害をもたらす恐れもあります。これから本格的な台風シーズンを迎えるにあたり、激甚化する気象災害に対して企業はどのように備えればよいのでしょうか。
災害リスク対策が専門で、MS&ADインターリスク総研のコンサルティング企画室長である三和多賀司さんにポイントを聞きました。
台風5号から得られる教訓は?
台風5号では、岩手県を中心とする地域が記録的な豪雨に見舞われ、床上浸水や道路の崩落といった被害が各所で発生しました。久慈市の滝ダムでは水位が上がったため緊急放流を開始、ダム下流の住民に対して、避難情報のうち最も危険度の高い緊急安全確保が出されました。家屋や道路、断水などの被害は甚大でしたが、幸いにも死亡や重傷といった致命的な人的被害は今のところ報告されていないようです。速やかな避難指示とこれに従った住民の対応が、功を奏したと考えられます。今週末にも関東地方を直撃すると予想される台風7号においても、如何に前倒しで安全確保の行動を開始できるかが重要です。
台風7号が明日にも関東直撃?!まだ間にあう直前対策は?
災害対策にとって最も重要なのは平時からの備えですが、今すぐ実施すべき直前対策も多数あります。まずは、刻々と変化する気象情報や会社近隣の河川水位情報・潮位情報、交通インフラの稼働状況などをタイムリーに把握し、社内関係者間で迅速に情報共有することが重要です。自社の企業活動に相応の被害が発生する可能性がある場合には、速やかに災害対策本部を設置して、緊急時体制に移行することも検討が必要です。その他、工場や倉庫等では、気象状況が悪化する前に、安全点検や重要資産の安全な場所への移動、建物や設備に対する防水・止水対策を完了させる必要があります。表1は緊急時の対策・事後対策を網羅的に記載した対応チェックリストです。自社の状況に応じて、これらの対応を速やかに着手することをお勧めします。
多くの社員がお盆休み中。どうする?
なるべく早い段階で、緊急時の連絡手段・連絡方法を全社員に周知しておくことをお勧めします。 安否確認システムを導入済みの企業であれば、これを用いて初動対応を開始しましょう。安否確認システムを導入していない企業では、部・課単位で連絡網(SNSのグループチャットも可)を活用しましょう。
本格的な台風シーズンを迎えるにあたっての事前対策は?
台風7号がどの程度の影響をもたらすかはわかりませんが、その後も新たな台風や気象災害は各地を襲うはずです。平時からの備えが十分でなければ、直前対策だけで被害を防ぐことは不可能です。社員らの安全を最大限確保しつつ、被害を最小限にとどめ速やかに事業を復旧・継続するための日常の備えが必要です。表2に平常時の対策を網羅的に記載した対応チェックリストを示しました。これを参考に、施設や設備に対する物理的な災害対策に合わせて、災害時の対応マニュアルや事業継続計画(BCP)の検討を行っておくことをお勧めします。
おわりに
近年の災害規模の激甚化にともない、災害の後は今までの想定上にインフラ復旧に時間がかかるほか、災害廃棄物の処理、補修資材や業者の手配などが急激にひっ迫します。加えて従業員自体の被災による出社遅延など、事業の再開が計画通りに進まない事象が顕在化しています。復旧計画の策定においては、あらかじめ冗長性を持たせて策定しておくことが重要です。