コラム/トピックス

ステルスマーケティング規制後初の行政指導、企業における留意点

2024.9.20

消費者庁は2024年6月、景品表示法におけるステルスマーケティング規制※1に基づく初の行政処分(措置命令)を行ったことを発表した。ステルスマーケティングは消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあることから、2023年10月に景品表示法において規制の対象とされたもの。本稿ではステルスマーケティングの規制対象とみなされるおそれのある表示の例を示すとともに、対策の一例を示す。

<ステルスマーケティングの規制対象とみなされるおそれのある表示の例>

表示の内容 規制対象とみなされるおそれのある表示の例
  1. 事業者が第三者になりすまして表示した場合
  • 販売担当者自身が、第三者になりすまして、自社商品の販売促進や自社商品の認知度をあげる目的で商品の画像や文章をSNSに表示(投稿)する
  • 販売担当者自身が、第三者になりすまして、自社商品の販売促進や自社商品の品質や性能の優良さについて投稿する
  • 販売担当者自身が、第三者になりすまして、競合商品を自社の商品と比較して性能が劣っているなどの誹謗中傷をSNSや口コミサイトに表示(投稿)する
  1. 事業者が明示的に依頼・指示をして第三者に表示させた場合
  • インフルエンサーに商品の特徴などを伝えた上で、それに沿った内容をSNS上や口コミサイト上に表示(投稿)させる
  • ECサイトに出店する事業者が、不正レビューを集めるブローカーや自社商品の購入者に依頼し自社商品について評価を上げるようなレビューを表示(投稿)させる
  • アフィリエイト広告を使う際に、アフィリエイターに委託して自らの商品を表示させる
  • 他の事業者に依頼して、競合事業者の商品・役務について、自社の商品・役務よりも低い評価を表示(投稿)させる
  1. 事業者が明示的に依頼・指示していない場合であっても、第三者に表示させたとみなされる場合
  • 第三者に対し無償で商品提供した上で、SNSへの投稿等を暗にほのめかした結果、第三者が事業者の方針に沿った内容を表示(投稿)する
  • 第三者に対し経済上の利益があると言外から感じさせたり、言動から推認させたりして、第三者にその事業者の商品を表示(投稿)させる

(出典:消費者庁「景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブック~」※2記載内容をもとにMS&ADインターリスク総研が作成)

消費者庁は、表示がステルスマーケティングに該当すると判断した場合、当該表示の差し止めや再発防止策の策定、事業者による一般消費者への不当表示の事実の周知等の措置命令を行うとしている。さらに表示内容に優良誤認または有利誤認がある場合は、当該事業者に対して課徴金の納付命令等が課される可能性もある。

ステルスマーケティングの規制を受けないために、従業員において当該規制を正しく理解し、しかるべき対応を実現できるよう具体的なルールを整備し、実行していくことが肝要といえる。具体的な対策例としては以下のとおり。

  • 自社の企業広告を適切に行うための方針を明確にする
  • ステルスマーケティングの規制の趣旨、目的を自社従業員へ周知・徹底する
  • 企業広告を第三者に依頼する場合のルールを明確にする。(自社とのタイアップやPRである旨、明示させる)
  • SNS等での宣伝を意図せずに商品やサービスをインフルエンサー等の第三者へ無償提供する場合は、宣伝等の見返りを求めていると誤認されないよう、提供の際のルールを明確にする。

1)ステルスマーケティングとは、事業者による表示(広告)であるにもかかわらず、それを隠して表示することを指す。なお、本規制の対象となるのは、事業者による表示と判断されるものに限られる。詳細は消費者庁HPを参照のこと。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/stealth_marketing/
2)https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/assets/representation_cms216_200901_01.pdf

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この記事は「ESGリスクトピックス2024年度 No.6」(2024年9月発行)の掲載内容から抜粋しています。
ESGリスクトピックス全文はこちらからご覧いただけます。
https://rm-navi.com/search/item/1847

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