
COP29で炭素市場メカニズムの詳細ルールを合意
2025.2.6
2024年11月11日から24日にかけて、アゼルバイジャンの首都バクーにて国連気候変動枠組条約29回締約国会議(COP29)が開催された。今回のCOPで、パリ協定第6条に基づく国際的な炭素ルールが定まり、ようやく市場メカニズムの枠組みが始動する見込みだ。
グローバルな炭素市場のシステムは2016年に発効したパリ協定を起点としている。パリ協定では、協定の批准国全てが温室効果ガス(GHG)削減目標(Nationally Determined Contribution:NDC)を定めることが規定され、あわせてGHG削減量の国際移転の際のルール等を定める「第6条(市場メカニズム)」も規定された。その後、2021年に開催されたCOP26では第6条の実施指針について合意がなされたが、詳細なルールについては国家間での調整が難航し、結論が先送りにされてきた。
第6条では、主に6条2項と6条4項で定められる2種類の市場メカニズムについて述べられており、これらの市場の活用が期待されている。前者は各国主導による市場メカニズムで、「投資国(一般的に先進国など)」が「ホスト国(一般的に開発途上国など)」において実施したGHG削減プロジェクトによって実現した排出削減または吸収量をクレジットとして国際的に移転・獲得することで、獲得したクレジットをNDCの目標達成量として活用することが可能になる。後者は国連が主導する炭素市場メカニズムであり、排出削減プロジェクトによる削減実現量を国連の機関が認証する。
COP29ではこれらの詳細ルールについて、下表に示す3つのテーマで決定がなされた。中でも企業に直接影響があると思われる内容が、6条4項に関する「吸収・除去活動に関する要件を定める基準の確認」である。例えば炭素除去プロジェクトにおいては、クレジット期間が終了した後もGHGの大気への再放出が発生したかどうかの評価と再放出量の定量化を行い、GHGの継続的な貯蔵を確認することが求められる。このような大気への再放出は「リバーサル」と言われ、災害、戦争やプロジェクト実施国における政治・法的リスクなどによって発生するおそれがあるとされる。プロジェクト参加者はこうしたリスクについて特定、評価、軽減を図ることが要件として定められた。その他、プロジェクトによる負の環境的および社会的影響の最小化、人権や先住民族の権利の尊重が要件となり、可能な場合には回避するために、透明性を確保したうえで、十分な情報提供および検討時間を提供したうえでの合意を必要とするなど、強固な社会的および環境的保護措置を適用することが義務付けられた。
6条4項は国連機関による認証を伴うメカニズムであるため、プロジェクト参加者は本ルールに十分に留意する必要がある。気候変動だけでなく自然関連リスクや人権関連リスクも対処すべき対象に含まれていることから、プロジェクトに参加する企業は複合的な視点でリスク管理を行うことが求められるだろう。
<表:COP29でのパリ協定6条に係る決定事項>
懸念点 | 現状など |
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クレジット使用の承認・報告に関する事項 |
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登録簿に関する事項 |
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6条4項のメカニズムに関する基準類の整備 |
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(出典:環境省・経済産業省「COP29(CMA6)におけるパリ協定第6条の完全運用化の実現について」)
【参考情報】
2024年11月11日付COP29 HP
https://cop29.az/en/media-hub/news/cop29-opens-in-baku-with-breakthrough-on-global-carbon-markets