コラム/トピックス

お客さまの脱炭素経営をサポートするため現場の提案力を高めたい 浜松いわた信用金庫さまが“実践型”研修で実現したいこととは?

2026.4.7

気候変動対策などの社会課題の解決と、脱炭素経営によって企業価値の向上と持続可能な社会の実現を目指す企業活動を、金融機関として資金面でサポートする「サステナブルファイナンス」を、2023年度から提供している浜松いわた信用金庫(以下、浜松いわた信金)さま。

2050年カーボンニュートラルの実現※1を目指し、金融機関にも脱炭素に向けた顧客企業への資金供給や支援などが期待される※2中、浜松いわた信金さまは現在、サステナブルファイナンスの積極的な提供を目指しているといいます。

一方で、この取り組みを加速するには、顧客企業との対話の窓口となる営業職員が脱炭素に関する知識をいっそう高める必要があると感じていた同金庫さま。顧客企業の脱炭素経営に関する課題解決に向けた提案力を上げるため、MS&ADインターリスク総研の“実践型”脱炭素研修を3回にわたり実施しました。

浜松いわた信金さまはどのような課題を抱え、解決するためにどう取り組んでいるのか?同金庫のソリューション支援部地域活性課で次長を務める乗松健悟さんに詳しく話を伺いました。

※1 日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を掲げ、2030年度に温室効果ガスを2013年度比で46%削減、2050年までに実質ゼロを目指すことを宣言。

※2 金融庁は「2024事務年度 金融行政方針」の中で、「2050 年カーボンニュートラルの達成に向け、金融機関には、経済全体の脱炭素への移行に向けた効果的な資金供給や顧客企業への支援等が期待されている」と記載。
出典:金融庁「2024事務年度 金融行政方針」 https://www.fsa.go.jp/news/r6/20240830/20240830_main.pdf

この記事の
流れ
  • 浜松いわた信用金庫さまの脱炭素の取り組みは?
  • 脱炭素に取り組んでいない企業は淘汰されてしまうという危機感
  • “現場ですぐに使える”実践的なシリーズ研修が魅力
  • 現場の提案力が向上して、本部とのパイプも太く
  • お客さまの企業価値向上とカーボンニュートラル社会の実現の両方に貢献していきたい

浜松いわた信用金庫さまの脱炭素の取り組みは?

ーー浜松いわた信金さまの概要と、脱炭素に関する取り組みの現状を教えていただけますか。

乗松)当金庫は、静岡県西部地域を中心に地域金融を担っています。2019年1月に「ユニバーサルバリュー宣言(SDGs行動宣言)」https://hamamatsu-iwata.jp/sdgs/docs/universal_value201901.pdfを制定し、SDGsへの貢献を経営の根幹に据えて、お客さまや地域の皆さまの持続的な発展に向けて取り組んでいます。

浜松いわた信用金庫 ソリューション支援部地域活性課 乗松健悟 次長
浜松いわた信用金庫 ソリューション支援部地域活性課 乗松健悟 次長

浜松いわた信用金庫 ソリューション支援部地域活性課 乗松健悟 次長

特に、気候変動や脱炭素に関しては、さまざまなニーズが広がることが見込まれることから、お客さまの取り組みを支援する「コンサルティング」、積極的な資金提供でニーズにお応えする「ファイナンス」、脱炭素化に向けて提携サービスをご紹介する「マッチング」といったソリューションを提供しています。

また、当金庫には環境省の認定制度「脱炭素アドバイザー※3」を取得した職員が436名在籍しています(2026年3月末時点)。これは、他の金融機関と比較しても少ない数字ではないと思っていますが、職員数全体でみると、取得者は4人に1人程度の割合にとどまりますので、引き続き積極的な資格取得者数の増加を目指しています。

こうした人材育成を通じて、気候変動対応・脱炭素化に向けた取り組みを支援し、お客さまの企業価値を高める体制整備を進めています。

※3 脱炭素化のアドバイスや実践支援を行う人材育成を国が後押しする施策として、2023年10月に創設された制度で、能力や役割によって、ベーシック、アドバンスト、シニアの3つのレベルに分かれる。

ーー浜松いわた信金さまが提供を促進しているサステナブルファイナンスについて教えてください。

乗松)当金庫は、サステナブルファイナスを通じて、脱炭素経営やESGに関連するお客さまの取り組みを資金供給面からも支援を目指しております。

お客さまが設定したKPIやサステナビリティ目標の達成状況に応じて金利条件などが変動する融資スキームで、目標達成を金融面からインセンティブ付けする「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」と、環境・社会・経済へのポジティブなインパクトを総合的に評価し、その評価に基づいて融資を行うスキーム「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)」の提供を2023年4月からスタートしています。

また2024年4月からは新たに、温室効果ガスの排出量の可視化に取り組むお客さまの事業活動を促進する「GX支援資金」の取り扱いを始めています。

こうしたサステナブルファイナンスの実行額は、2024年度までの実績で1,339億円、2030年度までの目標として、2024年度の実績の約2倍となる2,750億円を目指しています。

浜松いわた信金のサステナブルファイナンス実績と目標

浜松いわた信金のサステナブルファイナンス実績と目標
浜松いわた信金のサステナブルファイナンス実績と目標

出典:浜松いわた信用金庫HP「気候変動の取組みについて」
https://hamamatsu-iwata.jp/about/outline/post_12.html

サステナブルファイナンスは、単に「環境に優しい融資」ではなく、お客さまの中長期的な企業価値向上を一緒に考え、その実現を金融で支えるための仕組みだと捉えています。

脱炭素に取り組んでいない企業は淘汰されてしまうという危機感

ーー浜松いわた信金さまとして、そこまでの高い目標を掲げてサステナブルファイナンスの提供を促進している理由はどこにあるのでしょうか?

乗松)先々のことを考えると、脱炭素に取り組んでいない企業は淘汰されてしまうという危機感があります。 静岡県の西部地域には二輪・四輪や楽器メーカーといった製造業を主体とした上場企業が多く、こうした企業は当然脱炭素に取り組んでいて、サプライヤーに対しても対応が求められている中、取引先にとっても脱炭素化は重要な経営課題となっています。

こうした環境変化を踏まえ、当金庫においても、取引先企業の持続的な成長と競争力強化を支える観点から、お客さまと共に脱炭素化に向けた取り組みの支援の一つとして、サステナブルファイナンスの提供を進めています。

ーーサステナブルファイナンスの提供を促進する上で感じている課題はありますか。

乗松)職員自身が脱炭素に関して十分に理解を深めた上で、お客さまの抱える課題を“自分事”として捉えて、脱炭素経営を推進する中でサステナブルファイナンスをお客さまに提案できるかどうかに課題を感じていました。

当金庫がラインアップするサステナブルファイナンスは、お客さまの脱炭素経営を支援する商品の特性からも通常の融資商品に比べて本部と営業店とでモニタリングやサポートをさせていただくスキームであり、当金庫もお客さまも一定の時間や対応を要する商品となっています。

このため「サステナブルファイナンスの趣旨をご理解いただいて、ご利用いただけるのか」というハードルを感じてしまい、提案をためらう職員もいると思っています。ただ、現状でも「サステナブルファイナンスを利用したい」というお客さまは一定数いらっしゃいますし、先ほどお伝えしたような背景から、今後はもっとニーズが高まってくると考えています。

「今後はもっとサステナブルファイナンスのニーズが高まってくると考えている」と話す乗松次長
「今後はもっとサステナブルファイナンスのニーズが高まってくると考えている」と話す乗松次長

こうしたことを踏まえて、脱炭素の知見を高めて一歩踏み込んでお客さまに提案できるように、これまでも支店長向け、役席者向け、現場営業職員向けといった形で当金庫を挙げて研修やEラーニングも行ってきました。ただ、どうしても「研修を受けて終わり」という形で、現場での行動につながっていないのではないかという課題がありました。

“現場ですぐに使える”実践的なシリーズ研修が魅力

ーーこれまでも多くの研修を実施されてきた中で、今回、MS&ADインターリスク総研の脱炭素研修を導入された理由はどのような点にありましたか?

乗松)これまでの研修が単発で終わってしまっていた点に課題を感じていたので、MS&ADインターリスク総研さまのコンサルタントの方々と研修の企画を相談する中で、3回のシリーズとして基礎から実践まで学べるように設計してもらえる点に魅力を感じました。

浜松いわた信金で実施した脱炭素研修の主なスケジュール

日程 内容
1回目 12/2(火) 脱炭素の基礎知識に関するセミナー
お客さまとの会話を想定したサステナブルファイナンス提案のロールプレイング研修
脱炭素ソリューションとサステナブルファイナンスの提案を一体で設計するための「ターゲットシート」作成演習
2回目 1/26(月) 脱炭素ビジネスカードゲーム研修※4
3回目 3/3(火) 「ターゲットシート」を使ったお客さまへのアプローチ状況確認
アプローチ状況と成果の発表

※4 実際の浜松いわた信金さまでの脱炭素ビジネスカード研修の詳しい内容は以下の記事をご覧ください。
「脱炭素を自分事として体験できるビジネスカードゲーム研修とは?1人の行動がみんなの未来を変える」https://rm-navi.com/search/item/2473

研修は、単なる脱炭素を学ぶ座学ではなく、当金庫の取り組みを踏まえた内容にしていただけました。具体的には、まず、お客さまへの脱炭素ソリューションとサステナブルファイナンスの提案を一体で設計できる「ターゲットシート」のテンプレートを作っていただきました。“実践研修”としてそのシートを実際に使ってお客さまにアプローチして、3回目の研修で成果を発表するといった実践的な設計になっている点も非常に良かったです。

3回目の研修で「ターゲットシート」を使ってお客さまにアプローチした結果を発表する職員
3回目の研修で「ターゲットシート」を使ってお客さまにアプローチした結果を発表する職員

3回目の研修で「ターゲットシート」を使ってお客さまにアプローチした結果を発表する職員

2回目の研修では、脱炭素社会の実現に向けて組織としてどのように意思決定したり、ほかのプレーヤーと協働したりしていくかを体験できるビジネスカードゲーム研修を行うことによって、職員が脱炭素をこれまで以上に身近に感じることができたと思っています。

現場の提案力が向上して、本部とのパイプも太く

ーー3回の研修を通じて、職員の皆さまや組織には変化が見られましたか?

乗松)今回の研修には、現場の営業職員54名が参加して、「ターゲットシート」を使ったお客さまへのアプローチでは、実際にお客さまにPIFの趣旨にご理解をいただき融資を活用いただけたケースもありました。その意味では、サステナブルファイナンスを具体的にどうお客さまに提案したらいいのか、職員の中で理解が広がったと感じています。

また、“現場ですぐに使える”研修内容だったので、「明日からどのお客さまにどう提案するか」を具体的に考える場になって、提案力の向上にもつながっていくと感じています。

「実践的な研修で提案力の向上にもつながっていくと感じている」と話す乗松次長
「実践的な研修で提案力の向上にもつながっていくと感じている」と話す乗松次長

サステナブルファイナンスは、お客さまがサステナビリティに関する具体的な目標を設定して、その目標設定が適切かどうか、どのように外部機関の評価を取得するかなど、従来の金融商品よりも専門的な見地から本部で検討する必要があります。このため、現場と本部の連携が重要になるのですが、正直なところ、これまではサステナブルファイナンスの推進に関して、営業店からのトスアップや本部からの支援が不十分といった課題がありました。

それが今回の研修を通じて現場と本部のパイプが太くなり、サステナブルファイナンスを提案したいと考えている現場の案件を本部が拾いやすくなったことも大きな変化だと考えています。

お客さまの企業価値向上とカーボンニュートラル社会の実現の両方に貢献していきたい

ーー今回の研修を踏まえ、今後、どのように脱炭素やサステナブルファイナンスの取り組みを進めていくお考えでしょうか。

乗松)理想を言えば、こうした研修に頼らない状態を目指していきたいと考えています。職員一人ひとりが脱炭素に関してもお客さまの課題を自分事として捉えて、1社でも多くのお客さまに脱炭素経営を提案し、サステナブルファイナンスをご利用いただけるのが理想です。

サステナブルファイナンスはあくまでも社会全体の脱炭素化を目指すための金融商品の一つでしかありませんので、脱炭素経営に取り組むお客さまには、融資だけでなく再エネ・省エネ化やカーボンクレジット※5なども含めて、幅広く提案できる知識を身につけて、脱炭素社会の実現につなげられたらと思っています。

今後は、今回の研修で得られた知見や成功事例を参加者だけにとどめず、全店・全職員にどう水平展開していくかがカギになると考えています。例えば、「ターゲットシート」を活用した提案事例や、実際に成約につながったプロセスを「ベストプラクティス」として整理し、若手や融資経験の浅い職員でも同じステップを踏めば提案できるような“型”を作っていけたらいいなと思っています。

ソリューション支援部の久島廣也部長(左)と乗松氏
ソリューション支援部の久島廣也部長(左)と乗松氏

ソリューション支援部の久島廣也部長(左)と乗松氏

また、脱炭素やサステナビリティのテーマは、今後ますます高度化・専門化していくと考えられますので、今回のような実践型研修を入り口にしながら、専門人材の育成にも取り組んでいきたいと思っています。外部専門機関との連携も視野に入れつつ、地域の中小企業の方々に有益な情報・ソリューションを届けられる体制を整えることが目標です。

最終的には、こうした取り組みを通じて、当金庫がお客さまにとって「脱炭素・サステナビリティのことならまず相談したい金融機関」として認知される状態を目指しています。金融機関としての本業である融資と、脱炭素・サステナビリティの知見を掛け合わせることで、地域の企業価値向上とカーボンニュートラル社会の実現の両方に貢献していきたいと考えています。

(本インタビューは、2026年3月3日に実施されたものです)

※5 カーボンクレジットは、温室効果ガスの削減・吸収量を、国や国際的な第三者機関が認証し、排出権(クレジット)として取引可能にした仕組みのこと。詳しい内容は以下の記事をご覧ください。
「カーボンクレジットとは? 基本とビジネス機会、国際的な最新動向を解説」 https://rm-navi.com/search/item/2382

MS&ADインターリスク総研では、さまざまな研修メニューをご用意しており、脱炭素の取組を推進したいと考えている皆さまの状況に合わせ、カスタマイズした研修をご提供します。

実施規模や目的に合わせたプランをご提案しますので、詳細やお見積りのご希望は以下のフォームからご連絡ください。

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