コラム/トピックス

SSBJ基準適用で金融庁WG中間論点、1兆円未満プライム企業の適用時期は決定見送り

2025.9.8

金融庁の「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ(WG)」は2025年7月17日、有価証券報告書でのSSBJ基準に基づくサステナビリティ情報開示の適用やそれに対する第三者保証制度の導入時期などについての中間整理を公表した。それによると、同基準に基づく開示について、時価総額1兆円未満企業の開始時期の決定を見送った。一方、第三者保証の導入は、基準適用開始時期の翌年とすることを決めた。

プライム上場企業を対象にしたSSBJ基準に基づく開示の開始時期については、時価総額3兆円以上が27年3月期、1兆円以上3兆円未満が28年3月期と決定。一方で、29年3月期を見込んでいた5000億円以上1兆円未満は、「国内外の動向等を注視しつつ引き続き検討し、25年中を目途に結論」を出すとして確定しなかった。また、5000億円未満も、「企業の開示状況や投資家ニーズ等を踏まえて、数年後を目途に結論」とし、決定を先延ばしした。

【表1】プライム企業への、時価総額ごとのSSBJ基準適用開始時期

3兆円以上 27年3月期
3兆円未満
1兆円以上
28年3月期
1兆円未満
5,000億円以上
【未確定】29年3月期。国内外の動向等を注視し
引続き検討。25年中目途に結論
5,000億円未満 【未確定】企業の開示状況や投資家ニーズ等を
踏まえ、数年後を目途に結論

出典:「ワーキング・グループ」中間論点整理・別紙より抜粋して当社が作成

政府としては、サステナビリティの制度開示が国内の主要企業に一定数普及している状態の実現が必要で、SSBJの適用企業を絞り込み過ぎると実現の正当性がゆらぐとの危惧があるもようだ。WGの議論でも、時価総額1兆円以上の企業数は限定的で不十分なため、外国人株主保有比率が高く、海外展開も多い時価総額5000億円以上への適用が有力だ。一方で、基準対応のための企業の負担への懸念にも配慮している。

決定の見送りを受けて、ある金融庁元幹部は、当社の取材に、「企業の負担や、欧米諸国での反ESGの政治的な動きを意識した可能性もある」とコメント。一方で、「様子を見つつ段階的にスケジュールを決めるという当初の考え通りの対応。サステナビリティ開示強化の方向性は変わらないだろう」と、5000億円以上1兆円未満企業への適用は予定通り実施されるとの見通しを示す。

一方、中間整理の主な項目として、企業の負担を考慮し、有価証券報告書の提出後に、サステナビリティ情報を同年度内の訂正報告書で開示する「二段階開示」を許容。基準適用と第三者保証導入それぞれで初回から2年間は実施できるとした。

他に、有価証券報告書の提出期限を、現行の事業年度から3か月以内から4か月以内への延長を25年中目途に結論で検討することを明示。スコープ3のGHG排出量について、一定の条件下で、虚偽記載とみなされる可能性のある情報開示を行った場合でも責任を問われない「セーフハーバー制度」を整備することで賛同を得た。

【表2】今後の検討事項

方向性 検討項目
25年中を目途に結論
  • 株式時価総額1兆円未満5,000億円以上
    プライム上場企業へのSSBJ基準の適用
  • 有価証券報告書の提出期限の延長
  • サステナビリティ情報の第三者保証の
    担い手
数年後を目途に結論
  • 株式時価総額5,000億円未満プライム上場
    企業へのSSBJ基準の適用と第三者保証導入の要否
新設ディスクロージャー
ワーキンググループ
(仮称)で検討
  • セーフハーバーの内容・適用要件、適用範囲、効果
  • 有価証券報告書の確認書の記載事項

出典:「ワーキング・グループ」中間論点整理・別紙より抜粋して当社が作成

【参考情報】
2025年7月17日金融庁HP: https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20250717.html

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