ESGリスクトピックス(2025年10月)
- サステナビリティ(ビジネスと人権、自然資本・TNFD、生物多様性)
- 気候変動(TCFD/カーボンニュートラル)
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- ESGリスクトピックス
2025.10.1
『ESGリスクトピックス』では、E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)に関する国内・海外の最近の重要なトピックスをお届けします。
2025年10月のトピックス
自然資本
○ WWFジャパン、日本企業65社のTNFD開示状況を分析した報告書を発表
日本の主要な環境NGOの1つである世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は2025年8月28日、「2024年TNFD開示の潮流と日本企業の対応状況」を公表した。これは、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)による開示提言に沿って2024年に情報開示を行った日本企業65社を対象に、WWFジャパンが定義する「TNFDキーポイント」に基づいて実施されたベンチマーク調査である。企業の開示が広がる一方、事業変革に向けた課題や示唆も明らかになった。
「TNFDキーポイント」は、WWFジャパンがTNFD開示で特に重要だと考える項目を、TNFD一般要件等を参考に抽出したものである。今回の調査では4 つのキーポイント(下表)を設定し、企業の開示状況を星の数で評価できる仕組みとなっている。星なし(☆)はキーポイントに関する記載がない状態を示し、星の数が多いほど内容が充実していることを表す。特にキーポイント2から4は星4つが理想だが、初期段階での達成は難しく、段階的な向上が期待される。
<TNFDキーポイント別評価概要サマリー>
| 概 要 | |
|---|---|
| キーポイント1 | TNFD一般要件に基づき、企業がどのマテリアリティ・アプローチを採用 しているかを評価する。特にTNFDが推奨するインパクト・マテリアリテ ィの開示に加え、ダブル・マテリアリティを明記している場合は高く評価 する。 |
| キーポイント2-1 | 直接操業について、拠点ごとの依存・インパクト経路、4つの自然関連課 題(依存、インパクト、リスク、機会)の特定および開示状況、要注意地 域の特定の有無を評価する。業種により直接操業とバリューチェーン分析 の難易度が異なるため、両者を分けて評価している。 |
| キーポイント2-2 | バリューチェーンに関して、一次産品や製品、地域、プロセスなどの要素 が開示され、LEAPアプローチ※等による分析が進んでいるかを評価する。 また、トレーサビリティの確保と優先地域の特定が実施されているかも重 視する。 |
| キーポイント3 | キーポイント2で特定した優先的なマイナスインパクトに対して、企業が 示すコミットメントと、その回避・軽減、再生・補償の実施状況や成果の 開示を評価する。 |
| キーポイント4 | 国際規範へのコミットメント、人権デューデリジェンスやグリーバンス (苦情処理)対応の範囲、対象となる地域の特定、さらにはエンゲージメ ントの実施状況を評価対象とする。 |
出典:WWFジャパン資料をもとにMS&ADインターリスク総研にて作成
調査結果では、キーポイント1のマテリアリティの考え方を明示した企業(星1つ以上)は全体の約2割にとどまり、多くの企業が採用したマテリアリティ・アプローチの明示を行っていなかった。キーポイント2-1では、自然との関係性の把握について、直接操業地点における依存・インパクトの分析は進展し、星3つ以上を獲得した企業は全体の約4割だった。一方、キーポイント2-2のバリューチェーン上流・下流における解析は、トレーサビリティの難しさから遅れている(星3つ以上は全体の約2割)。概して業界共通のデータツール(例:ENCORE)に依存した一般的な分析が多く、場所ごとの依存・インパクトや優先地域の特定は不十分であった。キーポイント3では、「ミティゲーション・ヒエラルキー」に基づく対応は、「節水」などの既存の目標中心であり、バリューチェーン全体を見据えた回避・軽減方針や達成目標時期、適切な測定指標の採用、進捗開示まで踏み込む企業は少数であった。キーポイント4では、自然関連課題や先住民族と地域社会(IPLC)を含めたステークホルダーへの対応が浸透しておらず、星3つに到達した企業は3社のみだった。また、全企業がウェブサイト上で国連宣言や「国連ビジネスと人権に関する指導原則」等への賛同を示しているものの、誰もがアクセス可能な苦情処理メカニズムを構築している企業は全体の約3割にとどまり、実効性あるエンゲージメント体制の設計が課題である。これらの状況は、TNFDが目指す「開示を契機とした事業モデルのネイチャーポジティブへの変革」に向けて、企業の戦略的対応の重要性を浮き彫りにしている。
<キーポイント別 スコア分布>


注:図中の数字は企業数を示す。また、キーポイント1は星2つが最高評価である点に留意
出典:WWFジャパン資料をもとにMS&ADインターリスク総研にて作成
以上を踏まえ、今後企業が取り組むべき事項は三つに整理できる。第一に、ダブル・マテリアリティの採用と根拠の明確化である。財務影響だけでなく、自然環境や社会への重大な依存・インパクトを事業やレピュテーション、規制対応と結び付け、自社にとっての事業リスクと同等に重視する姿勢を示す必要がある。第二に、場所に基づく評価の充実である。自然との接点を「何が・どこで・どのように」に分解し、拠点やバリューチェーン上の優先地域を特定し、依存・インパクトの経路を可視化することが重要である。第三に、ミティゲーション・ヒエラルキーとIPLCエンゲージメントを組み合わせた移行計画の策定である。つまりマイナスインパクトの回避を最優先とし、軽減、復元・再生、代償の順で施策を整理し、地域住民の権利尊重や苦情処理のアクセス性・透明性をガバナンスに組み込むことが求められる。これらの取り組みにより、企業はTNFDの本質的価値を事業変革につなげることが期待される。
※ LEAPアプローチとは、TNFDが提示している、企業および金融機関における内部の自然関連課題の特定と評価をサポートすることを目的とした自主的なガイダンスである。Locate、Evaluate、Assess、Prepareの4つのフェーズから構成される。
【参考情報】
2025年8月28日付 WWFジャパンHP: https://www.wwf.or.jp/activities/lib/6040.html
自然資本・ネイチャーポジティブ経済
○ 英国経済への自然関連リスクの定量的な財務影響や自然関連投資を整理 ―WWFおよびGFIによる報告書(2025年8月発表)
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英国の世界自然保護基金(WWF UK)と2019年に英国政府が設立したグリーンファイナンス研究所(GFI)が、英国における自然への投資が経済の成長に繋がることを示すレポート「英国経済のレジリエンスと成長を支える自然投資」を発表した。本レポートによれば、英国経済は慢性的な自然劣化や気候変動リスクに直面しており、今後10年間でGDPの4.7%が減少(推計)という重大な損失が予測される。これらのリスクは、住宅・エネルギー・農業・製造業・観光など主要セクターに波及し、事業運営や資産価値、サプライチェーンに大きな影響を与える。一方、英国企業は自然投資による回復力向上や新技術への投資によって、財務的利益と競争優位性を獲得しつつある。報告書では、英国企業が自然への投資を進めることでレジリエンスを高め、競争力や収益性を向上させている事例が多数紹介されている(表1)。
<表1> 主要項目別の自然リスクおよび投資事例と金額(一部抜粋)
| 項目 | リスク・損失額(推定含む) | 投資事例・投資金額 |
|---|---|---|
| 水不足 |
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| 洪水・ 暴風雨 |
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| 土壌 劣化 |
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| 資源 効率 |
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| サステ ナブル 金融 |
- |
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(出所)「Business Investment in Nature: Supporting UK Economic Resilience and Growth」より抜粋してMS&ADインターリスク総研にて作成
サステナブルファイナンスでは英国が気候関連で世界をリードしており、自然資本への投資拡大が期待されている。2024年にはネットゼロ経済分野で200億ポンドの民間資本が集まり、自然関連技術開発企業も28億ポンドを資金調達したと推定されている。金融機関は企業向けローンの利率を生物多様性向上に連動させるなど、新たな金融商品の開発も進めている。
こうした企業による自然への投資について情報を提供するため、英国政府の環境改善計画(EIP)は英国政府自身の環境上の優先事項と法的拘束力のある自然に関する目標を達成するための戦略を示しているが、行動に関する詳細なガイダンスは提供していない。そこで、各企業が自信をもって自然環境関連の投資に挑むためのガイダンスとしてWWF-UKとGFIはNature-Positive Transition Pathways(NPP) を開発している。25以上の英国の主要企業と業界団体はNPPの開発に対する支持声明に署名しており、英国の環境投資を刺激する上で強力な役割を果たすことが期待されている。NPPは各セクターの移行経路を明確化し、企業が自社の投資・事業計画を英国の環境改善計画、生物多様性国家戦略・行動計画および地球規模の生物多様性枠組みの目標と整合させるための実践的ガイダンスで、NPPを活用した社内投資計画の策定は、長期的なリスク管理と成長戦略の要となりうる。
自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)を採用する日本企業が急増しているが、自然関連リスク・機会の定量化も含めた詳細評価や自然関連移行計画の策定までできている企業は極めて少ない。それらの企業にとって、英国のNPP策定や本レポートのリスク定量化事例、自然資本投資の先進事例などは参考となるだろう。自然関連リスクへの対応を単なるリスク管理に留めず、成長戦略・イノベーション・新規事業開発の観点から積極的に取り組むことで、企業価値向上と持続可能な社会の実現に貢献できる。サステナブルファイナンスや循環型経済、再生型農業など、グローバルな潮流を捉えた戦略的な投資・協業が今後ますます重要となるだろう。
※ 精密農業(Precision Farming):
国際的に様々なとらえ方が存在するが、主に複雑で多様なばらつきのある農場に対して事実の記録に基づくきめ細やかな管理を実施して、地力維持や収量と品質の向上及び環境負荷軽減などを総合的に達成しようとする農場管理手法を指す。
【参考情報】
WWF UK「Business Investment in Nature: Supporting UK Economic Resilience and Growth」2025年8月
人権
○ 政府人権行動計画の公表目前、人権DD義務化で国内外から賛否の声
日本政府が2025年12月に予定する「ビジネスと人権に関する国会行動計画(2020-2025)」(NAP)の改定に向けて、内容への関心が高まっている。中でも、企業に対して人権デュー・デリジェンス(人権DD)の義務化が盛り込まれるどうかに注目が集まる。欧州を中心にした複数の先進国では、すでに法制化が進む。2022年5月に、当時の萩生田光一経済産業相が記者会見で、将来の法制化の可能性について言及したことがある。
そうした中、経団連は9月16日に公表した意見書「『人権尊重経営』の推進 -『ビジネスと人権』に関する経団連の考え方と政府への期待-」の中で、企業の人権尊重の取り組みは、「指導原則に則って自主的に進めることを基本とするべき」として、義務化に否定的な考えを明らかにした。企業の人権尊重の取り組みは不可欠としつつ、人権DDやサプライチェーン上のリスク把握のための調査などが企業の重い負担になっていると主張。義務化は、企業の画一的・チェックボックス的な対応を招くとした。また、企業が配慮すべき人権侵害リスクは業種やサプライチェーンの構造によって異なるため、政府の現行の汎用的なガイドラインでは実務上の対応が難しいと否定的な見解を示した。その上で、政府に、▽ガイドラインの定期的な更新、▽無料相談可能な政府窓口の設置、▽中小企業向けの人権DDチェックリスト・事例集の作成――などの支援を要請した。
一方、海外を中心に、日本企業による人権DDの実効性向上のため、政府に法制化を求める声が挙がっている。「ビジネスと人権」の推進を目的にする国際NGOのWorld Benchmarking Alliance(WBA)とBusiness and Human Rights Resource Centre(BHRRC)は8月19日、共同提言を公表。法制化で先行するドイツやフランスで国内企業の人権DDの実施率が向上するなどの政策的効果を例示して、日本にも法制化を求めた。
改訂NAPには、人権DDのほか、「AI・テクノロジーと人権」や「環境問題と人権」など新たな人権課題も盛り込まれる予定だ。政府は2025年10月のパブリックコメントに向けて策定作業を進めている。
【参考情報】
2025年8月19日 World Benchmarking Alliance HP:
https://assets.worldbenchmarkingalliance.org/app/uploads/2025/08/Japan-NAP-2.0-policy-note_JP.pdf
日本経済団体連合会 HP: https://www.keidanren.or.jp/policy/2025/056_honbun.pdf
TNFD・自然資本
○ GPIFが「優れたTNFD開示」を初公表、トップ2社は気候との統合報告で高評価
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2025年8月29日、国内株式の運用を委託する運用会社20社が選んだ「優れた TNFD 開示」を公表した。それによると、アサヒグループホールディングスとキリンホールディングスの2社が、それぞれ最多の6社から支持を受けた。
GPIFが同日に公表した年次の「2024年度 サステナビリティ投資報告」に掲載した。
最多得票の2社のうち、アサヒグループホールディングスは、TNFDとTCFDを統合したフレームワークに基づきサプライチェーンを包括的に分析した点や、2つの農産物に焦点を当て財務影響を分析した上で定量的に開示した点などが評価された。
一方のキリンホールディングスは、①TNFDの主要な要素を網羅している②テーマやトピック別に財務影響を定量化している③地域ごとの特性を踏まえたマテリアリティ評価を実施し、測定指標とターゲットを開示している――などの点が評価された。
また、東急不動産ホールディングス、住友林業、王子ホールディングス、日本電気、三菱UFJフィナンシャル・グループの5社も、運用会社3社以上から高評価を得た。
運用会社は選考に際しての評価ポイントに、▽自然資本に関する取組・開示が企業価値向上に実効的なものであるか(企業の持続性への確信度の向上や資本コストの低減に結び付くといえるか)▽財務・企業価値との関わりがマテリアリティに応じて示されているか▽ネイチャーポジティブへの貢献が定量的に示されているか――などを挙げた。
優れたTNFD開示企業の選定は今回が初めて。運用会社と投資先企業との間の建設的な対話(エンゲージメント)の実現に向け、対話の前提となる企業側の情報開示のベストプラクティスを選定・公表するのが目的。GPIFが2024年度に上場企業対象に実施したアンケートでは、TNFD開示をする上での課題に、参考となり得る他社の好事例が少ないことが挙がっていた。
【参考情報】
2025年8月29日付 年金積立金管理運用独立行政法人「2024年度 サステナビリティ投資報告」HP:
https://www.gpif.go.jp/esg-stw/esginvestments/2024_sustainability.html
中国法改正情報
○ 中国の反不正競争法改正の概要と企業における対策のポイント
2025年10月15日から中国の改正反不正競争法※1が施行される。改正法では、不正競争行為に関する規定が拡充された。不正競争行為の疑いをかけられた場合、当局による立入検査や事情聴取、財物の封印・押収などの措置が行われる可能性がある。また、法律上の責任が認められた場合には、損害の賠償や罰金の支払い、営業許可の取り消しなどが行われる可能性もあるため、現地に進出する日本企業にも影響が大きいものと想定される。
主な改正のポイントは以下のとおり。
<主な改正の概要>
| 項目 | 改正の概要 |
|---|---|
| (1)収賄行為の禁止を追加 |
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| (2)混同行為(誤認される行為)の 規制範囲の拡充 |
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| (3)ネットプラットフォームに おける禁止行為の明確化 |
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| (4)大企業などによる中小企業への 優越的地位の濫用規制 |
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| (5)域外適用の追加 |
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日本貿易振興機構「反不正競争法改正版が可決、中小企業への支払い遅延の禁止など明記」※2をもとにMS&ADインターリスク総研にてにて作成
企業においては、法令や運用の動向を注視しつつ、国内外における自社のコンプライアンス体制の見直しを図ることが望ましい。具体的には、従業員の禁止行為を明示した内部規定の作成、対外支払いや贈与などのリスクを伴う行為に対する承認ルールの見直し、教育・研修を通じた法令やルールの周知徹底、内部通報窓口の設置・適切な運用などが挙げられる。
なお、今般の改正を受け、JETROより商業賄賂規制に関する各種事例の紹介や同規定に対する企業の対策などについてレポート(2025年9月17日)※3が発行されている。商業賄賂規制への抵触を防ぐための自己点検チェックシートをはじめ、自社のコンプライアンス取組を見直すために有益な情報が掲載されているため、取り組みにあたってはこちらも参照されたい。
※1)2025年6月27日、第14期全国人民代表大会常務委員会第16回会議にて可決された。
※2)JETRO「反不正競争法改正版が可決、中小企業への支払い遅延の禁止など明記(2025年07月04日)」
https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/07/0a933405e9be2dde.html
※3)JETRO「『事例から学ぶ』中国における商業賄賂規制の最新動向と日系企業への実務的示唆」
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2025/02/5482b1b3afc84354.html
【参考情報】
2025年9月 日本貿易振興機構(JETRO)HPなど
サイバーセキュリティ
○ 営業秘密管理に関する実態調査結果を公表 生成AIの利用状況に差異
独立行政法人情報処理推進機構セキュリティセンターは2025年8月29日、「『企業における営業秘密管理に関する実態調査2024』報告書」を公表した。本調査は国内企業に属する個人1200名(製造業/非製造業、従業員301名以上/未満、それぞれ300名ずつ)に対してウェブアンケート方式で実施した。過去5年以内に営業秘密の漏えい事例・事象が「あった」「おそらくあった」と回答した企業は35.5%にのぼり、前回調査(2020年度)の5.2%から大幅に増加した。営業秘密の漏えいリスクはもはや一部の企業だけのものではないことが示されている。
営業秘密の漏えいルートとしては、サイバー攻撃等によるものが36.6%と大幅に増加し、前回調査の4倍以上となった。これにより、外部からの侵入リスクの高まりがうかがえる。
一方、ルール不徹底(32.6%)、金銭目的等の意図的行為(31.5%)、誤操作・誤認(25.4%)など、従業員による内部不正(誤操作を含む)の割合も上位を占めている。報告書では、「人間関係の恨み」や「借金」などが内部不正の要因として挙げられており、これらの要因が組織内に存在するかを把握し、対策を講じることが重要である。
営業秘密管理に関連して、生成AIの利用ルールの整備状況についても調査が行われた。生成AIの業務利用に関するルールを定めている企業は52.0%であり、完全に利用を禁止している企業が26.2%、公開情報のみの取り扱いを許可している企業が14.8%、組織内に閉じた生成AI環境を利用している企業が11.0%であった。


出典:独立行政法人情報処理推進機構セキュリティセンター
「『企業における営業秘密管理に関する実態調査2024』報告書」をもとにMS&ADインターリスク総研にてが作成
生成AIは営業秘密管理の観点から新たなリスクとなり得る一方、業務効率化や新たな価値創出の可能性も秘めている。今後は業務ルールの明確化、従業員教育、定期的な監査を通じて、生成AIを安全に活用できる体制の構築が、すべての企業にとって不可欠となると考えられる。
【参考情報】
2025年8月29日付 独立行政法人情報処理推進機構セキュリティセンター
「『企業における営業秘密管理に関する実態調査2024』報告書」
https://www.ipa.go.jp/security/reports/economics/ts-kanri/tradesecret2024.html
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