TNFDがCFO向けガイダンス公表|組織全体に投げかけるべき11の質問を示す
2026.6.30
自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は2026年6月2日、Accounting for Sustainability(A4S)※の協力のもと、自然への依存・インパクト、リスク・機会の財務的影響について、CFO(最高財務責任者)による評価を支援する新たなガイダンス「Asking Better Questions on Nature for CFO」を公表した。TNFDは、企業の意思決定者に向けたガイダンスを『Asking Better Questions on Nature(自然についてよりよい質問をするために)』シリーズとして公開しており、今回のCFO向けガイダンスは、昨年公開された取締役会メンバー向け、CIO(最高投資責任者)向けに続く第3弾である。
本ガイダンスは、CFOが自然関連の論点をリスク管理、資本配分、企業価値評価、業績管理、財務計画、戦略的意思決定等に統合するために、財務チームや組織全体に対して投げかけるべき主要な質問を示している。具体的には、以下の5項目11の質問を推奨しており、CFOが自然関連の情報や洞察を財務やリスク管理のプロセスに組み込み、自身や経営チームの意思決定につなげることを支援する。また、CFOが社内から提出される情報や提言の注視すべき点を示し、取締役会、投資家、その他のステークホルダーから高まるより詳細な情報要件への対応をサポートするものとなっている。また、各質問ごとにCFOが確認すべき情報についても示されている(下表右欄)。
自然のレジリエンスは、世界中の企業のレジリエンスと財務業績の基盤であり、全てのビジネスモデルは、直接的には水、土地、原材料、生態系サービスの利用を通じて、また間接的にはサプライチェーン、顧客、投資を通じて、自然に依存している。同時に、企業活動は自然の損失の一因となり、企業が必要とする資源を自然が提供する能力にマイナスのインパクトを与えている。企業の自然への依存・インパクトから生じるリスクには、座礁資産、事業中断、生産コスト上昇、保険料の増加、資産価値の下落などが含まれる。このことは、財務の最高責任者であるCFOが抑えておくべき点であり、企業経営の最も重要な財務的判断を下すCFOを支援する本ガイダンスの果たす役割は大きいと考えられる。
| 1.自然を理解する | ||
|---|---|---|
| 質問 | CFOが確認すべき情報 | |
| ① | 私たちのビジネスは、どこでどのように自然に依存し、影響を与えているか。これらはどう変化しうるか。 | 資産台帳、購買台帳、仕入先リスト、拠点情報、バリューチェーン情報、重要な自然への依存・インパクトの分析 |
| ② | 自然関連課題は、既にどのような財務的意味合いを持っているか。今後どうなりうるか。 | コスト増、売上影響、操業停止、保険料、資産価値、訴訟・罰金などの財務影響データ |
| 2.自然関連のリスク・機会の評価と優先順位 | ||
| ③ | 自然関連のリスクと、それに伴う財務上のインパクトをどのように特定し優先順位付けできるか。 | リスク登録簿、ヒートマップ、シナリオ分析、物理的リスク・移行リスクの分析、脆弱性評価内容 |
| ④ | 自然関連の機会と、それに伴う財務上の影響をどのように特定し優先順位付けできるか。 | 新規事業案、コスト削減案、製品/サービス開発案、投資収益率(ROI)試算、戦略評価資料 |
| 3.ビジネスの意思決定と自然関連の財務計画への統合 | ||
| ⑤ | 自然関連の考慮事項を、ガバナンスと意思決定プロセスにどのように統合するか。 | 取締役会・委員会の議事録、付託条項、RACI表、承認フロー、エスカレーション基準 |
| ⑥ | 自然関連の考慮事項を、戦略と財務計画にどう組み込むか。 | 中期経営計画、予算、資本支出計画、予測、資金調達資料、保険契約、リスク管理資料 |
| ⑦ | 自然に関する目標を、どのように設定するか。 | 既存の環境目標、KPI、目標設定根拠、SBT for Natureやグローバル生物多様性枠組み(GBF)との整合性を示す資料、進捗管理表 |
| ⑧ | 自然関連課題に対応するために、バリューチェーンを含めた行動にどのようにインセンティブ付けするか。 | 報酬制度、評価制度、調達契約、サプライヤースコアカード、インセンティブ設計資料 |
| 4.市場の期待への対応(投資家広報・報告・開示) | ||
| ⑨ | 投資家・規制当局・その他ステークホルダーの期待にどのように対応するか。 | 投資家アンケート、ESG評価、エンゲージメントノート、規制要件、開示方針、報告書 |
| ⑩ | 既存のデータおよび情報管理システムは、社内外の期待に応えているか。 | 自然関連データ、資産所在地データ、サプライヤー調査、分析に使用した外部データ、保証結果、内部統制資料 |
| 5.組織全体での自然関連に関する協力体制と能力開発の提唱 | ||
| ⑪ | 財務チームは必要なスキルを持ち、自然関連課題への組織全体の行動に貢献しているか。 | 研修資料、能力開発計画、社内役割分担、横断連携の会議体資料、ツール・ガイダンス |
※A4S
2004年に当時英国皇太子であったチャールズ3世によって設立された非営利団体。企業の財務・会計の意思決定に環境や社会課題を組み込むことを推進している。
【参考情報】
2026年6月2日付 https://tnfd.global/publication/asking-better-questions-for-chief-financial-officers/
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