
【お客さま事例】株式会社レオパレス21様「BCP訓練で事業継続計画を実効性のあるものにして、お客さまの安心安全につなげる」
2025.10.14
「BCP訓練を行うことで事業継続計画を実効性のあるものにしていき、単に住環境を提供するだけでなく、お客さまの安心安全につなげて、お客さまを“支える”存在になっていきたい」
こう話すのは、日本全国で単身者向けアパートの賃貸・管理などを行う株式会社レオパレス21の総務購買部の上野善隆部長です。
同社では、BCP(事業継続計画)を実効性あるものにするため、2025年8月に役員や管理職クラスを対象にした机上訓練を実施。その背景にはどのような課題を感じていて、課題を解決するために訓練をどう活かそうとしているのか?詳しく話を伺いました。
流れ
- レオパレス21の事業活動でBCPの位置づけは?
- 熊本地震の体験が“事前の備え”の原動力に
- レオパレス21が直面していた現場と上層部の温度感の差
- BCP机上訓練導入のきっかけと感じた手応え
- BCP/BCM高度化の先に見据えるものとは?
レオパレス21の事業活動でBCPの位置づけは?
――まず、レオパレス21様の事業内容について教えていただけますか?
上野)主な事業内容はアパートなどの賃貸事業で、管理する戸数は全国で約55万戸※あります。入居者様のタイプでいいますと、約4割が個人利用、残り6割が企業の社宅として利用いただいています。こうした物件の管理や入居者様に対応するための当社拠点数は、全国にあわせて約85拠点あります。
※2025年3月期末現在
株式会社レオパレス21 総務購買部 上野善隆 部長
――レオパレス21様では、事業の中でBCPをどのように位置づけていますか?
上野)入居者様のお住まいという生活基盤を扱う企業になりますので、我々は“社会インフラ”の一端を担っていると考えています。ですから、入居者様や物件を所有されているオーナー様が安心して生活基盤の管理を我々に任せたいと考えていただくために必要な取組の1つとして、BCPがあると考えています。
熊本地震の体験が“事前の備え”の原動力に
――現状のBCPの取組状況について教えてください。
上野)まず私自身の話からすると、これまでずっと営業畑でキャリアを積んできて、2年前にBCPも所管する総務購買部に異動になりました。
その際に、当社のBCPの全体像を確認したのですが、外部のコンサルティング会社の協力も得ながら、方針や体制図といった外形的な部分は、一定の水準まで作られていることを理解しました。
その一方で、具体的に災害が起きた時などに、どういった行動をとる必要があるのかを整理したアクションプランについては、さらに実効性を高めていく余地があると感じました。ですので、当社の現状は、BCPをより実効性のあるものへとブラッシュアップしていくフェーズだと考えています。
――BCPの実効性を高めていくために、どのような点に課題があると考えていますか?
上野)地震や大雨などで各拠点が被災した場合に現場レベルで対応する上では、一定程度は機能するものだと評価しています。一方で、首都圏が被災して東京の本社機能が停止した場合に、出社できるかすらわからない状況下で本社がどう動くかがアクションプランには十分に示されていないことがわかりました。
子会社に所属している際に熊本地震の対応を経験したという上野氏
私は4年前まで、社宅選びや社宅管理を業務代行する子会社に所属していたのですが、その会社では全国に4つの拠点があり、その1つが熊本でした。2016年に熊本地震が発生した際は、現場が頑張ってくれたり、近隣の拠点で業務を巻き取ったりして何とか事業を継続することができたのですが、その時に強く感じたのが「事業継続のための補完体制は事が起こる前に作っておかなければならない」ということでした。
首都直下地震は今後30年以内に発生する確率が70%と予想される中で、本社機能が停止したことを想定した体制作りが急務だと感じました。これまでのBCPはいうなれば“絵に描いた餅”。それを実際に“食べられる餅”にしないといけないという思いで、取り組み始めました。
レオパレス21が直面していた現場と上層部の温度感の差
――本社機能が停止したことを想定したBCPにするために、どのような取組を進めているのでしょうか?
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上野)大きく以下の2つの観点で取り組んでいます。
- 災害時にも停止が許容されない本社機能の定義
- 本社の管理職・経営層の意識改革
本社機能の停止と一口でいっても、当社の事業継続のために“災害時にも停止が許容されない本社機能は何なのか”について整理されていなかったので、そこから検討しました。例えば、人事部門が影響を受けて人事関連の業務が1週間止まるとなっても、当社の事業継続には致命的な影響は出ないだろうということを確認していきました。
その結果、財務と情報システムが止まってしまうと途端に事業の根幹部分が行き詰まる恐れがあることがわかったので、それぞれの部署に、大地震が起きて社員が本社に出勤できなかったり、本社ビル自体使えなくなったりしたことを想定して、代替策を検討してもらいました。
――本社の管理職・経営層の意識改革というのは、どういう課題意識があったのでしょうか?
上野)BCPを担当する我々の部署が感じている危機感を、他の部署の管理職や経営層に同じような温度感で伝わるかどうかに課題を感じていました。
私も熊本地震の対応をしたことがあるのでわかるのですが、お客さまのお住まいに近いところで実際の物件管理を行っている現場は、災害が起きれば直接お客さまに対応する必要があるので、事業継続に対して非常に意識が高いんです。
近年、自然災害が頻繁に起きていますが、現場は、そのたびに日常業務を維持しながらお客さま対応をするナレッジが蓄積されていっています。一方で、本社が被災したのは東日本大震災の時くらいですが、その時も結果的に本社機能への直接的な影響はありませんでした。
その意味では、現場と本社の間の危機意識や対応力の差がどんどん開いていってしまうのではないかという危機感がありました。
この差をどうやって埋めていくかを考えた時に有効と考えたのがBCPの机上訓練でした。
BCP机上訓練導入のきっかけと感じた手応え
――BCPの机上訓練は、どのような経緯で知ったのですか?
上野)BCPの実効性を高めるために他社はどう取り組んでいるんだろうということが知りたくて、MS&ADインターリスク総研が企画したBCPに取り組む企業の交流会に参加したんですね。そこで他企業との交流も有意義だったのですが、その場で机上訓練の案内があって、まずは私も含め、BCPに関わっている総務購買部の3名で参加しました。
実際に参加してみると机上訓練といっても、事前にシナリオは明らかにされず、被災状況の書かれた「課題カード」が次々に渡されて、BCPに基づいた対応や判断を行う内容で、現場での切迫感だったり、想定していないようなことが起こったりと、災害時の対応を疑似体験できて非常に多くの気づきがありました。同時に、本社の管理職や経営層に受けてもらえば、これまで以上に危機感を持ってもらえるんじゃないかと考えました。
――2025年8月に管理職と経営層を対象にBCPの机上訓練を実施されましたが、期待されたような結果が得られましたか?
上野)一番の目的は、訓練を通して気づきを得たり危機感を持ったりしてほしいということでしたので、その意味では非常に大きな効果があったと考えています。
社長をはじめとした役員、部長など約30名が参加したのですが、思っていた以上に主体的に取り組んでもらえたのが印象的でした。


BCPの机上訓練は2025年8月1日に中野区のレオパレス21本社で行われた


訓練には代表取締役社長の宮尾文也氏も参加した(写真中央)
訓練を実施してよかったと感じたのは、訓練が終わった直後にBCPを担当する役員からその場で声をかけられて、30分以上、BCPに関する確認や指示をもらったんですね。訓練がいい刺激になって、幹部クラスの意識改革を実現していけそうだという手応えを感じた瞬間でした。
BCP/BCM高度化の先に見据えるものとは?
――今回実施したBCPの机上訓練は、実効性のあるBCPの策定、BCM(事業継続マネジメント)を実現するための1つのきっかけだと思いますが、今後はどのような取組を進めていく予定ですか?
上野)まず目先のことでいえば、課題と認識した想定シーンの実効性のあるアクションプランを早急に策定していく予定です。それによって、BCPを“絵に描いた餅”ではなく“食べられる餅”にしたいと考えています。
ただ、BCPは“作って終わり”ではないと思っています。継続的にブラッシュアップし、PDCAサイクルを回していかないといけない。
現在、社内の各部門でリスクの特定・分析・評価を行う分科会を作って開催しています。この分科会を中心にしっかりとPDCAサイクルを回して、BCPとBCM(事業継続マネジメント)の水準を上げていこうと考えています。
こうした取組を続けていくことが、入居者様、建物のオーナー様、社宅として使ってくださっている企業様の信頼や安心につながっていくと思っています。そして、当社は社会インフラの一端を担う企業という話をしましたが、単に住環境を提供するだけでなく、お客さまの安心安全につなげて、災害時にもお客さまを“支える”存在になっていきたいと考えています。
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