コラム/トピックス

記者会見から見る危機管理広報のポイント

2025.11.25

事件・事故・不祥事等の危機が発生した場合、企業が行う情報開示対応の中でも記者会見への注目度は高い。記者会見を実施するか否か、また実施したとしてもタイミングを巡って厳しい批判にさらされることは珍しくない。また、不適切な会見運営により、発生した事案そのものよりも、記者会見の失敗が当該企業により大きなダメージを与えるケースもある。

近年、記者会見の内容が話題になった事例

業種(時期) 事例内容
情報・通信業
(2025年)
起用したタレントによる不祥事に経営幹部や従業員の組織的な関与があったの
ではという疑惑を受け、記者会見を開いた。1回目の会見では出席できるメデ
ィアや撮影を制限したことにより隠蔽体質と批判された。続く2回目の会見で
は制限をしなかったものの、論点が散漫となり10時間超に及ぶ長時間の会見と
なった。
製造業
(2024年)
長年にわたる新車認証不正が発覚し、記者会見を実施したが、会見における事
実関係の整理不足と再発防止策の説明が不十分と受け止められた。
中古車販売業
(2023年)
修理車両を意図的に損傷させ保険金を不正に請求していたことが発覚し、記者
会見を実施した。会見において経営トップが「知らなかった」と繰り返し、謝
罪や改善策を示さなかった。
金融業
(2021年)
システム障害によりATMの停止や外国為替送金遅延などが連続して発生し、記
者会見を実施した。会見までに時間を要し、会社としての説明が遅れたことに
加え、責任の所在や再発防止策が不明確であった。

これまで数多く行われてきた危機発生時の記者会見を俯瞰すると、登壇者の説明・謝罪の巧拙よりも、会見のタイミングや説明・謝罪の内容に関して、メディアや様々なステークホルダーが求めていたものと齟齬があるときに、不信感が高まり、企業価値を毀損し、ブランドイメージを失墜させるような事態に至っている。すなわち、発生した事案に関する企業の情報開示の姿勢に対する社会の期待を見極めることが非常に重要といえる。

危機発生時の情報開示は、大きなマイナスの状態からスタートし、少しでもそのマイナスを縮小し、できればプラスに転換するという極めて難易度の高い目的を持って行われる。この目的を達成するためには、ステークホルダーの期待を把握し、明確な戦略に基づいて開示するタイミング、内容、発信者などを選定する必要があるが、この点がなおざりになっていたとしか考えられない事例は少なくない。

近年、多くの企業で危機発生を想定した情報開示トレーニングが行われ、模擬記者会見を体験した経営者も少なくないだろう。しかし、一部のトレーニングでは、登壇者の所作、例えばお辞儀の角度や時間といったことに注目するあまり、本質的な課題が炙り出されないことが懸念される。

前述のとおり、危機発生時の情報開示においては、様々な事情を考慮しつつもステークホルダーの期待とのギャップを埋めていく努力が必要である。そして、その判断を極めて限られた時間内に行わなければならない。だからこそ、模擬記者会見を含む情報開示トレーニングにおいては、登壇者の対応力だけでなく、用意されたトレーニングシナリオに対する事案評価およびそれを踏まえた開示戦略の検討を実践してみることが重要といえる。

企業においては、自社で企画されているトレーニングが、そのような観点を踏まえたものになっているか、あらためて検証し、より効果的なトレーニングへ改善していくことが期待される。

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