CSO(最高サステナビリティ責任者)設置企業の取組を紹介!フロントランナーはいかに社内外に自社の取組を浸透させているのか?
2026.2.12
企業のサステナビリティ取組への関心がいっそう高まる中、日本企業の中にもCSO※(Chief Sustainability Officer・最高サステナビリティ責任者)というポジションを設置する動きが出てきています。
こうした中MS&ADインターリスク総研では、国内企業でCSOやサステナビリティ部門責任者を務める方たちを取材し、“あるべき姿”をまとめた『CSOと拓くサステナビリティ経営 価値創造の現場』(経済法令研究会刊)を2026年2月に発行します。
今回は、それぞれの企業の具体的な取組について、取材を担当したMS&ADインターリスク総研でサステナビリティのコンサルタントを務める石川隆彦に話を聞きました。
※ 以前から存在する最高戦略責任者(Chief Strategy Officer)と区別するため、最高サステナビリティ責任者を「CSuO」とするケースもある
流れ
- サステナビリティの分野で求められるキャリアとは?
- CSOやサステナビリティ部門には「仲間づくり」の力が必要
- いかにサステナビリティの取組を“見える化”するのか?
- サステナビリティは価値創造のための必須の経営戦略
サステナビリティの分野で求められるキャリアとは?
ーー今回、10社のCSO・サステナビリティ部門責任者に取材をしてみて、皆さまのキャリアに共通項はありましたか?
石川)実は共通項はありませんでした。あえて言うとすれば、「サステナビリティ一筋」のキャリアではないという点で、共通していました。
取材した企業
| 食品・ライフサイエンス・消費財 | |
|---|---|
| ・キリンホールディングス株式会社 | ・味の素株式会社 |
| ・株式会社コーセー | |
| 流通・小売 | |
| ・J.フロント リテイリング株式会社 | |
| 環境ビジネス | |
| ・株式会社フェイガー | |
| 総合技術・製造業 | |
| ・株式会社 日立製作所 | ・帝人株式会社 |
| ・株式会社レゾナック・ホールディングス | ・株式会社リコー |
| 金融サービス | |
| ・MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社 | |
| 食品・ライフサイエンス・消費財 | |
|---|---|
| ・キリンホールディングス株式会社 ・味の素株式会社 ・株式会社コーセー |
|
| 流通・小売 | |
| ・J.フロント リテイリング株式会社 | |
| 環境ビジネス | |
| ・株式会社フェイガー | |
| 総合技術・製造業 | |
| ・株式会社 日立製作所 ・帝人株式会社 ・株式会社レゾナック・ホールディングス ・株式会社リコー |
|
| 金融サービス | |
| ・MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社 | |
話を伺った皆さまの中には、人事や法務部門を経験された方や企業統治に関わった方など、それぞれ自分の強みを持ちながら、サステナビリティに興味・関心を持ってCSOのキャリアに至っていました。
なぜ、それぞれ多様なキャリアをお持ちなのかを考えると、もちろんサステナビリティの歴史の浅さというのもありますが、担当する分野がESGの領域、特に環境(Environment)や社会(Social)といった形で、多岐に渡っていることもあると思います。
中には、「“サステナビリティ一筋”というのは、サステナビリティ人材として望ましくない」と話す方もいて、サステナビリティが事業戦略の中心に位置づけられるようになると、サステナビリティという言葉からイメージされやすい「環境」だけでなく「ビジネス」そのものにも精通していることが重要なのかもしれません。
CSOやサステナビリティ部門には「仲間づくり」の力が必要
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ーー取材したCSOの皆さまを通じて、CSOに求められる役割についてどのように考えていますか?
石川)「仲間づくり」というのが1つのキーワードかと考えています。トップダウンで組織を動かす力も当然必要なのですが、ボトムアップで事業部門を動かすことも同じくらい重要なのではないかと感じました。
コーセーさまの場合ですと、サステナビリティの部署には研究・商品開発、美容教育、生産技術、販売員、企画、営業など様々な部署出身のメンバーがいるそうです。それぞれのメンバーが元の部署とのパイプを活かし、少しずつ働きかけて理解を得られるようになっているとのことでした。
また、J.フロント リテイリングさまは、サステナビリティの取組のKPIや進捗情報をレポートで開示する際に、一方的に他部署にデータや情報の提供を求めると、“やらされ感”が出たり、サステナビリティ部門が“自分たちの都合”で情報収集していると思われたりしてしまうことから、“壁”を壊すために対話と相互理解を重視していると話していました。
このように、CSOやサステナビリティ部門には、他部署や現場を巻き込んで「仲間づくり」をしていく熱量が必要だと考えています。
ーーJ.フロント リテイリングさまは、相互理解を深めるために、具体的にどのようなことに取り組んでいるのでしょうか?
石川)J.フロント リテイリングさまは、現場でサステナビリティの取組を「自分事化」してもらうためのひとつの工夫として、次のような取組をしています。同社では、2024年度、会社が事業を通じて社会に提供したい3つの共創価値(感動共創・地域共栄・環境共生)を定め、それらに基づく新たなマテリアリティ(重要課題)を従業員が自分を主語として考えられるように、「アクション型」の表現に変更したということです。
J.フロント リテイリング株式会社のマテリアリティ


出典:J.フロント リテイリング株式会社「サステナビリティレポート2436」
(https://www.j-front-retailing.com/ir/library/pdf/sustainability/2024/J_FRONT_2024_J.pdf)
ウェルビーイングやカーボンニュートラルという言葉ではなく「くらしにワクワクをプラスする」「環境と共に生きる社会をつくる」といった言葉で表現することで、自分に引き付けて考えられるようにする工夫をされているとのことでした。この取り組みは、個人的にとても印象に残っています。
いかにサステナビリティの取組を“見える化”するのか?
ーー社外に向けてサステナビリティの取組を開示する際には、今後、これまで以上に財務的な価値を定量的に示すことが求められるようになります。この点に関して、参考となる取組はありましたか?
石川)実名で掲載させていただいた企業のほかに、ヘルスケア事業などを展開しているメーカーにも話を伺うことができました。このメーカーでは自社のKPIに血圧計の売り上げを設定していました。
その理由は、同社がサステナビリティ領域におけるマテリアリティの目標の中で掲げている健康寿命に関する課題解決を実現するために、個人の健康状態を判断することができる血圧計を販売するというロジックでした。健康寿命にどれだけ貢献できたかを、血圧計の販売台数で“見える化”しようとしているわけですね。
このように、自社が取り組む社会課題の解決に向けて、自社が取り扱う製品の販売台数をKPIに設定するのも、1つの選択肢となりえます。 同社のケースは、わかりやすい例ではありますが、サステナビリティの取組を社外に開示するにあたっては、社内のデータを吸い上げる必要が出てきます。ここでも、日ごろから「仲間づくり」を進めていくことが、やはり重要になってくると思います。
ーー開示という面では、社内外のステークホルダーとのコミュニケーションも重要になってくると思いますが、取材した企業ではどのような取組をしているのでしょうか?
石川)2社の取組を紹介させていただきます。
まず、レゾナック・ホールディングさまの場合は、サステナビリティの取組の現在地と目指すところを社内外のステークホルダーに発信する際に、より身近に感じてもらえるように「リアルを伝える」ことを心掛けていると話していました。そのために、統合報告書では「顔が見える」リアル感を大切にしているということです。
株式会社レゾナック・ホールディングスの統合報告書


出典:株式会社レゾナック・ホールディングス「RESONAC REPORT 2025(統合報告書)」(https://www.resonac.com/jp/sustainability/report/report.html)
また、帝人さまはインタビューの中で、投資家からのESG関連のつっこんだ質問にも対応できるよう、IR部門から依頼された投資家面談には、サステナビリティ部門責任者がすべて同席していると話していました。加えて、サステナビリティへの関心が高い投資家と自社のCEOやCFOが面談する場合にも、サステナビリティ分野担当の役員も同席するということでした。
サステナビリティは価値創造のための必須の経営戦略
ーーCSOを設置している企業は、サステナビリティを経営の中心に据えて“攻め”の姿勢で取組を推進しているのが印象的だと感じました。
石川)いずれの企業も「サステナビリティは、単に企業のイメージアップということにとどまらず、企業が“選ばれる理由”に直接的につながるもの」という認識だと感じました。
例えば、カーボンクレジットの生成と販売を行っているフェイガーさまは、「(事業や人事・財務に)余裕のある企業であれば積極的なブランディングなど“攻め”の側面を意識できる体制を整えていくことが望ましいのではないか」と話していました。
また、サステナビリティは世界的に実現可能なルールを作ろうとしている段階なので、プレーヤーとして「ルールメイク」に関わることができるのも、サステナビリティ担当の面白いところだとも話していました。
その意味では、近年のサステナビリティは「社会にとって良いことをして評価されるための活動」というよりも「企業が価値を創造していくための必須の経営戦略」に位置づけられるのではないかと考えています。
今回の書籍には、サステナビリティにおけるフロントランナーとも言える企業でCSO・サステナビリティ部門責任者を務める方たちの貴重な生の声が掲載されていますので、サステナビリティに関わる方、これから関わろうとしている方にとって、得られるものが非常に多いのではないかと考えています。
(本インタビューは、2026年1月23日に実施されたものです)
