大企業の福利厚生満足度と団体保険の関連―認知・加入との関係を探る
[このコラムを書いた研究員]

- 会社名
- MS&ADインターリスク総研株式会社
- 部署名
- 基礎研究部
- 執筆者名
- 主席研究員 新納 康介 Kousuke Niiro
2026.5.7
近年、日本の労働市場では、定期昇給やベースアップによる賃金引き上げに加え、「第3の賃上げ」として法定外福利厚生(以降、福利厚生とします)の充実が注目されています。人手不足が深刻化する中、企業が優秀な人財を採用・定着させるためには、社員が安心して働き続けられる環境づくりが求められています。
MS&ADインターリスク総研では、2025年12月に大企業(社員2,000人以上)に勤務する社員1,000名を対象としたアンケート調査を実施しました。
本稿では、調査で明らかになった福利厚生に対する満足度の状況に加えて、福利厚生の一つである団体保険について、社員の「認知」や「加入」と満足度の関連という観点からも整理してご紹介します。
流れ
- 大企業の社員の福利厚生に対する満足度
- 勤務先に団体保険があるのかどうか「わからない」が3割超
- 福利厚生への満足度が高いほど「団体保険」があると回答
- 団体保険加入者の福利厚生に対する満足度は?
- まとめ
大企業の社員の福利厚生に対する満足度
本調査では、回答者が勤務する企業の福利厚生に対して満足しているかどうかについて聞きました。その結果、「やや満足」と「とても満足」の合計は50.7%、「あまり満足していない」「全く満足していない」「強く不満であり、転職を検討する要因の一つである」の合計は49.3%となり、評価はほぼ拮抗しています(図表1)。
【図表1】現在の福利厚生について満足していますか (n=1,000)


勤務先に団体保険があるのかどうか「わからない」が3割超
次に、代表的な5つの団体保険(生命保険、医療保険、傷害保険、養老保険、団体長期障害所得補償保険)を回答者に示し、勤務する企業で福利厚生として導入されているかを聞きました。勤務先の団体保険の有無について「わからない」とする回答が34.5%でした。(図表2)。
この設問は、勤務先企業の制度の有無を確認したものではなく、回答者が制度を知っているかどうかを示している点に留意が必要です。
勤務先に制度が存在していても、回答者が制度名を知らなかったり、利用機会がなく記憶に残りにくかったりするなどの理由で、把握できていない可能性もあります。
【図表2】あなたの勤務先の福利厚生制度の中に、以下の制度(団体保険)はありますか(いくつでも) (n=1,000)


福利厚生への満足度が高いほど「団体保険」があると回答
図表3は、図表1と図表2の回答データを分析したものです。勤務先の福利厚生に「とても満足している」と回答した人の約8割が勤務先に「団体保険がある」と回答しました。
一方で、福利厚生に「強く不満」だと回答した人で「団体保険がある」と回答した人の割合は、11.9%でした。
これは、福利厚生の満足度と「団体保険がある」との回答に関連がみられることを示しています。
【図表3】団体保険の導入状況に関する認知と福利厚生に対する満足度 (n=1,000)


ただし、これをもって団体保険が福利厚生の満足度を高めているという因果関係があるとするには注意が必要です。団体保険は「良い福利厚生制度」の一要素であり、他の制度(柔軟な勤務制度、休暇、手当等)とのセットで満足度を高めているという事も考えられます。
また、本調査の結果からは、福利厚生に対する満足度と制度の認知状況に差がみられたことから、運用面(周知・申請支援)が関係している可能性も考えられます。ここでは、勤務先の団体保険制度が充実していたとしても、その周知が不十分なため、回答者が「ない」あるいは「わからない」と回答した可能性も考えられます。こうした周知不足や誤解によって満足度が下がっているとすれば、企業としては制度の積極的な周知といった改善の余地があるといえます。
団体保険加入者の福利厚生に対する満足度は?
本調査では、回答者に勤務先の企業の団体保険に加入しているかどうかも聞いています。ここでは、設問で示した代表的な5つの団体保険に加入している回答者の福利厚生に対する満足度を分析しました(図表4)。図表1で示した回答者全体の「やや満足」と「とても満足」の合計である50.7%と比較すると、全般的に満足度が高い傾向が見られます。
【図表4】団体保険加入者の福利厚生に対する満足度(団体保険加入者)


この結果は、勤務先の団体保険に実際に加入する人は、福利厚生に対する満足度が高い可能性を示唆しています。
中でも、団体長期障害所得補償保険(GLTD)加入者の「とても満足している」と「やや満足している」の合計は74.1%と高い値だったことから、GLTD加入者と非加入者の福利厚生に対する満足度を、図表5で比較しました。非加入者の「とても満足」の値は10.1%なのに対し、加入者のそれは18.5%となっています。
GLTDは、企業によって加入対象者が限定される場合(正社員のみ、一定の勤続年数以上など)があり、加入者と非加入者で属性が異なり、満足度に大きな差が出ている可能性があります。
【図表5】団体保険加入者の福利厚生に対する満足度(GLTD加入者、非加入者)


まとめ
今回の調査の結果からは、中小企業に比べて充実した福利厚生制度を構築していると考えられている大企業でも、社員の福利厚生に対する評価(満足している/いない)は拮抗することが確認されました。
また、団体保険について勤務先に制度があるかどうか「わからない」と回答した人が約3割と、制度が整備されていても認知されにくい可能性もうかがえます。
さらに、福利厚生への満足度が高い層ほど団体保険を「ある」と認識し、実際の加入者は相対的に満足度が高い傾向も確認されました。
企業としては、団体保険制度の拡充に加えて、社員が制度を把握し、必要な時に使える状態になっているかを点検することが、社員に福利厚生の価値を感じてもらえるようにするうえで重要になると考えられます。本稿の内容が、企業の福利厚生制度の見直しや運用改善の一助となれば幸いです。
【参考文献】
・住友生命保険(2024)『企業の福利厚生制度に関するアンケート調査結果』
・生命保険文化センター(2023)『2022(令和4)年度生活保障に関する調査』
・生命保険協会(2024)『生命保険事業概況』
・日本経済団体連合会(2020)『第64回福利厚生費調査結果報告』
アンケート調査「大企業に勤務する社員の福利厚生(団体保険、GLTD)に関する意識について」
https://rm-navi.com/search/item/2412