アンケート調査「大企業に勤務する社員の福利厚生(団体保険、GLTD)に関する意識について」【リサーチレター(2026年2月)】
[このレポートを書いた専門家]

- 会社名
- MS&ADインターリスク総研株式会社
- 部署名
- 基礎研究部
- 執筆者名
- 主席研究員 新納 康介 Kousuke Niiro
2026.2.18
【要旨】
- 福利厚生の重要性:就職・転職時に福利厚生を「重視/やや重視」するという回答は77.6%。福利厚生の充実は就業継続の要因と考える割合は77.9%である。
- 重視される福利厚生:回答者が最も多かったのが「法定外・特別休暇」で69.0%、「団体保険」は19.9%となった。 福利厚生の満足度:評価が分かれた。「やや満足」と「とても満足」の合計は50.7%、「あまり満足していない」「全く満足していない」「強く不満」の合計は49.3%である。
- 福利厚生に対する満足度と団体保険の関係:福利厚生に「満足している」回答者は、勤務先における団体保険の導入状況の認知度が、「満足していない」回答者に比べて高い。これは、団体保険が整備され、かつ社員がそれを認知している場合は福利厚生に対する満足度が高まることを示唆している。
- GLTDの導入と認知:勤務先に団体長期障害所得補償保険(GLTD)が導入されているとの回答は12.3%。約半数がGLTDについて「聞いたことがなく、全く知らない」と回答した。
- 就労不能リスクと準備状況:ケガ・病気による長期の就労不能リスクを意識する回答者は多いが、それに備えて生活費を「しっかり準備できている」は4.6%であった。
- GLTD未導入企業の社員:勤務先の福利厚生に「GLTDがある」と回答しなかった回答者の7割超が、福利厚生に就労不能時の所得補償を導入してほしいと回答している。
目次
1.調査の目的・背景
2.調査の概要
3.調査結果
4.考察
5.まとめ
1.調査の目的・背景
日本では近年、業種を問わず人手不足が深刻化しており、企業は福利厚生 ※1(法定外福利厚生)の充実を通じて人財の採用・定着を図る動きが強まっている。求職者は就職・転職の際、給与に加えて福利厚生を重視する傾向があり、福利厚生制度が整備された企業が選ばれる時代になったと指摘される。
こうした状況を受け、MS&ADインターリスク総研は2025年12月に大企業に勤務する社員1,000名※2を対象にアンケート調査を実施した。本稿では本調査の結果およびそれに基づくデータ分析の結果について紹介する。
なお、本調査では福利厚生の中でも、社員が病気やケガで働けなくなった時の補償に着目した。団体長期障害所得補償保険(Group Long‑Term Disability Insurance, GLTD)は、社員が病気やケガで働けなくなった際に最長で定年年齢まで所得を補償する制度として注目されているため、そのニーズについて調査を行った。
※1)法律により企業に実施が義務付けられる法定福利厚生と、企業が独自に定める法定外福利厚生とに大別されるが、本稿における「福利厚生」とは法定外福利厚生を指す。
※2)回答者は「社員」と自己回答し、かつ「勤務先の社員数が2,000人以上」と回答した者を対象とした。本稿ではこれらを「大企業に勤務する社員」と記す。
2.調査の概要
(1)調査実施期間
2025年12月19日~25日の間にインターネットによる調査を行った。
(2)回答者数
1,000人(男性500人、女性500人)
20~29歳、30~39歳、40~49歳、50歳~59歳、の年齢4区分ごとに男女各125人。
(3)回答者属性
①勤務する企業の社員数
| 社員数 | 回答者数(人) |
|---|---|
| 2,000~5,000人未満 | 302 |
| 5,000~10,000人未満 | 192 |
| 10,000人以上 | 506 |
③ 居住地域
| 都道府県 | 回答者数 | 都道府県 | 回答者数 | |
|---|---|---|---|---|
| 全体 | 1,000 | 三重県 | 9 | |
| 北海道 | 26 | 滋賀県 | 5 | |
| 青森県 | 5 | 京都府 | 12 | |
| 岩手県 | 0 | 大阪府 | 82 | |
| 宮城県 | 12 | 兵庫県 | 48 | |
| 秋田県 | 6 | 奈良県 | 8 | |
| 山形県 | 2 | 和歌山県 | 7 | |
| 福島県 | 5 | 鳥取県 | 4 | |
| 茨城県 | 23 | 島根県 | 2 | |
| 栃木県 | 13 | 岡山県 | 12 | |
| 群馬県 | 11 | 広島県 | 16 | |
| 埼玉県 | 71 | 山口県 | 2 | |
| 千葉県 | 71 | 徳島県 | 5 | |
| 東京都 | 214 | 香川県 | 2 | |
| 神奈川県 | 119 | 愛媛県 | 9 | |
| 新潟県 | 7 | 高知県 | 1 | |
| 富山県 | 5 | 福岡県 | 19 | |
| 石川県 | 5 | 佐賀県 | 2 | |
| 福井県 | 3 | 長崎県 | 5 | |
| 山梨県 | 4 | 熊本県 | 3 | |
| 長野県 | 14 | 大分県 | 4 | |
| 岐阜県 | 11 | 宮崎県 | 1 | |
| 静岡県 | 16 | 鹿児島県 | 8 | |
| 愛知県 | 89 | 沖縄県 | 2 |
3.調査結果
(1)福利厚生全般に対する意識および評価
本調査では最初に回答者が就職・転職を検討する際に、その企業の福利厚生を重視するかどうかについて聞いた。その結果、「重視する」と「やや重視する」の合計は77.6%となった(図1)。
【図1】就職・転職を検討する時に福利厚生の有無・内容を重視しますか (n=1,000)


さらに、回答者に具体的にどのような福利厚生を重視しているのかを聞いた。その結果、最も回答が多かったものは「法定外・特別休暇」の69.0%であった。後述する「団体保険」については19.9%であった(図2)。
【図2】福利厚生制度として何を重視しますか(いくつでも) (n=1,000)


また、福利厚生の充実が、企業で働き続けることの要因となるかについては、「そう思う」と「ややそう思う」の合計は77.9%となった(図3)。
【図3】福利厚生が充実していると、働き続け、貢献したいと考える要因の一つとなりますか (n=1,000)
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回答者が勤務する企業の福利厚生に対して満足しているかどうかについては、評価が分かれた。「やや満足」と「とても満足」の合計(満足している)は50.7%、「あまり満足していない」「全く満足していない」「強く不満」の合計(満足していない)は49.3%であった(図4)。
【図4】現在の福利厚生について満足していますか (n=1,000)


(2) 病気やケガで長期間働けなくなる不安
本調査では、回答者が病気やケガで長期間働けなくなったときの経済面での不安について聞いている。「特に不安はない」という回答が2割を超えたが、最も回答が多かったのは「生活費」の不安(62.4%)であった(図5)。
【図5】もしも自分が病気やケガで長期間働けなくなったとき、何に対して不安を感じますか(いくつでも) (n=1,000)


自分が病気やケガで長期間働けなくなったときの「生活費」に関して経済的に準備できているかという設問については、「しっかり準備できている」が4.6%、「準備できている」が31.3%となっている(図6)
【図6】お答えいただいた、不安な点に対して経済的に準備できていると思いますか


(3) 団体保険およびGLTDに対する認識
本調査では、代表的な5つの団体保険を回答者に示し、勤務する企業で福利厚生として導入されているかを聞いた。「生命保険(死亡保障)」が34.5%と最も多く、後述する「長期障害所得補償保険(GLTD)」については、12.3%と最も少ない結果となった(図7)※3。なお、勤務先の団体保険の有無について「わからない」とする回答は34.5%となっている。
【図7】あなたの勤務先の福利厚生制度の中に、以下の制度(団体保険)はありますか(いくつでも)(n=1,000)


※3)複数の回答者が同一の企業に勤務する可能性があるため、この値を企業における GLTD の導入率の参考値とするには注意が必要である。
GLTDについてこれまで知っていたかを問う設問では、回答者の約半数が「聞いたことがなく、全く知らない」と回答した(図8)。
【図8】あなたは、団体長期障害所得補償保険(GLTD)についてご存じでしたか (n=1,000)


そこで、GLTDの概要※4を回答者に示したうえで、そのような所得補償制度が福利厚生として提供されることは、回答者が企業で働き続ける要因となるかについて聞いた。その結果「そう思う」と「ややそう思う」の合計は67.5%となった。(図9)。
【図9】GLTDのような所得補償制度があることは、企業で今後も働き続け貢献したいと考える要因の一つとなりますか (n=1,000)


※4)以下の文章を質問票に挿入した。「長期障害所得補償保険(GLTD)とは、病気やケガで働くことができなくなった従業員の収入ダウンを長期にわたり補償する保険です。企業の福利厚生制度の一環として導入されるもので、会社が保険料を負担する制度と従業員が任意に加入する制度を組み合わせることができます。」
4.考察
(1) 勤務先の福利厚生に「満足している」回答者と「満足していない」回答者
回答者が勤務する企業の福利厚生に対して満足しているかどうかの設問については、前に述べたとおり、評価が分かれている(図4)。ここでは「やや満足」「とても満足」とした回答者507名を「満足している」回答者とし、「あまり満足していない」「全く満足していない」「強く不満」とした回答者493名を「満足していない」回答者として、両者の回答傾向の分析を試みた。
図10は団体保険の有無を回答者に聞いた設問の回答結果であるが、「わからない」および「どれもない」については「満足していない」回答者の回答率が高く、代表的な5つの団体保険の導入状況(「ある」の回答)についてはいずれも「満足している」回答者の回答率が高い。
これらの結果は、団体保険が整備され、かつ社員がそれを認知している場合は福利厚生に対する満足度が高まり、逆に、団体保険の未整備あるいはその周知不足は満足度低下につながることを示唆している。
【図10】あなたの勤務先の福利厚生制度の中に、以下の制度(団体保険)はありますか (「満足している」と「満足していない」回答者)


(2) GLTD未導入企業の社員の意向
住友生命が2024年に実施した、企業の福利厚生制度に関する調査では、従業員規模1,000人以上の企業のうち、従業員の就業不能時の給与保障(補償)を「損害保険で対応している」割合は約17%であった ※5。これをGLTDの導入率として考えた場合、本調査の結果と同様にGLTDは福利厚生としてはまだ主流ではないことを示唆している。
一方で本調査ではGLTDについてポジティブな結果も確認された。本調査では、勤務先の福利厚生に「GLTDがある」と回答しなかった回答者877名に、福利厚生に「病気やケガで就業できない時の所得補償(団体保険)」を導入してほしいかどうかを聞いている(図11)。その結果「そう思う」と「ややそう思う」の合計が7割を超えている。
【図11】あなたの勤務先の福利厚生の中に、「病気やケガで就業できない時の所得補償(団体保険)」を導入してほしいと思いますか (n=877)


※5)同調査では従業員の就業不能時の給与保障(補償)を企業が内部留保で対応するケースもあるとしている
5.まとめ
本調査により、大企業に勤務する社員は就職・転職の際に福利厚生を重視するとしつつも、団体保険に対する関心とGLTDの認知度は低いことが明らかになった。一方で、本調査の結果は、福利厚生への満足度と団体保険の整備及びその周知には関連があることを示唆している。
また、多くの社員は病気やケガによる長期の就労不能リスクを認識しており、こうしたリスクに対応する補償制度を福利厚生として導入することには前向きであることも示された。これらの結果は、福利厚生の重点が「死亡時の備え」から「就労不能時の備え」へと移行しつつあるという指摘とも整合する。
企業の福利厚生が人財確保のために重要であるとすれば、当然その内容は社員や求職者のニーズを反映することになる。本調査が福利厚生制度の立案の一助となれば幸いである。
【参考文献】
アドバンテッジ リスク マネジメント(2017)『「働けなくなるリスク」に関する意識調査 働けなくなるリスクについてよく考える人はGLTDに高いニーズ』
住友生命保険(2024)『企業の福利厚生制度に関するアンケート調査結果』
生命保険協会(2024)『生命保険事業概況』
生命保険文化センター(2023)『2022(令和4)年度生活保障に関する調査』
日本経済団体連合会(2020)『第 64 回福利厚生費調査結果報告』
日本経済新聞社(2025/9/10)『「従業員の休職時に所得補償」保険の導入、6年で7割増 福利厚生充実』日本経済新聞電子版
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