サプライチェーンBCPの現状とまず取り組むべき現実的な対策について ~2025年度BCM実態調査より~【BCMニュース(2026年4月)】
[このレポートを書いたコンサルタント]
- 会社名
- MS&ADインターリスク総研株式会社
- 部署名
- リスクマネジメント第四部
BCM第一グループ - 執筆者名
- コンサルタント 加藤 真希
2026.4.1
- MS&ADインターリスク総研では、全上場企業を対象に「第10回BCM実態調査アンケート」を実施した。
- アンケート結果から、サプライチェーンBCPへの取組があまり進んでいないことが分かった。
- 本稿では、サプライチェーンBCPの取組ステップを解説したうえで、最低限押さえるべき取組ポ イントを紹介する。
サプライチェーンは近年ますますグローバル化し、企業活動は世界各地の調達・生産・物流ネットワーク等に依存するようになっている。また、この5年程度を見ても、地震や風水害といった自然災害のみならず、新型の感染症や戦争・紛争などの、いわゆる地政学リスクも顕在化し、いまやサプライチェーンの寸断は経営に直結する重大課題となっている。従来、サプライチェーンは効率性を重視して構築することが主眼であったが、現在は、企業には強靭性を有する(レジリエントな)サプライチェーンの構築が求められているといえよう。
本稿では、2021年と2025年に弊社が実施した「事業継続マネジメント(BCM)に関する日本企業の実態調査」※1の結果を踏まえ、サプライチェーンBCPにおける現状の課題を整理するとともに、最低限押さえるべき取組ポイントを紹介する。
※1 本アンケートは、日本国内全上場企業を対象に、オンライン調査を実施したものである。2025年は3,890 社が対象、有効回答数は211社であった。なお、本調査結果は以下URLから入手できる。
https://www.irric.co.jp/reason/research/bcm/index.html
1. BCP取組における「サプライチェーンリスク」への関心の高まり
図1は、「事業継続を行う上で関心のある危機事象は何か」という質問に対する、2021年と2025年の回答結果を比較したものである。「サプライチェーンのトラブル」への関心が、26.6%から34.6%へと伸びていることが分かる。さらに、サプライチェーンにも影響を与えうる「サイバーリスク」や「地政学リスク」を選択した割合も伸びている。
企業が事業継続を考えるにあたっては、サプライチェーンリスクを念頭に置く傾向が強まっていることが分かる。
図1:業務継続上関心のあるリスクへの回答結果比較


2. サプライチェーンBCPの現状と課題
先述のとおり、事業継続の観点からサプライチェーンリスクへの関心が高まっていることが明らかになった。一方で、コンサルティング現場における印象では、実際にサプライチェーンBCPを構築し、運用できている企業は多くないと感じる。次に、サプライチェーンBCPの構築ステップを改めて整理するとともに、各ステップごとの企業の取組状況や課題について、アンケート結果をもとに具体的に示す。
(1) サプライチェーンBCPの構築ステップ
図2:サプライチェーンBCP構築のステップ


<STEP1:サプライチェーンの可視化>
自社の調達先を一次だけでなく二次・三次・四次以降まで遡って把握し、どのサプライヤーに依存しているかを明らかにする。この可視化は、後続の各ステップを行うにあたっての基盤となる。
<STEP2:優先事業に紐づくサプライヤーの洗い出し>
限られた人手・時間・予算等を踏まえると、全サプライヤーを一度に管理し、対策を実行するのは現実的でない。このため、事業継続に直結する優先事業や優先製品に紐づくサプライヤーを 特定する。これを「重要サプライヤー」とする。
<STEP3:サプライチェーンのボトルネック分析(ボトルネックサプライヤーの洗い出し)>
上記の重要サプライヤーのうち、リスクが顕在化した際に影響を受けやすい、「脆弱性の高い」サプライヤーを絞り込む。絞り込みにあたっては、サプライヤーの立地状況(場所)、他サプライヤーとの代替可否、サプライヤーの災害対策/BCP構築レベル等の観点から評価を行う。これら評価を踏まえ、脆弱性の高いサプライヤーを「ボトルネックサプライヤー」とする。
<STEP4:サプライチェーン強靭化施策の検討と実行>
STEP3で特定したボトルネックサプライヤーに対して、その脆弱性を緩和・解消するための具体策を検討する。具体策のうち、代表的なものを表1に示した。表1では「事前対策」と「リスク発生後の対応」の観点から具体策を整理したが、「短期で実行できる施策」と「中長期で取り組む施策」等の観点から整理するなども一考であろう。
次に、上記観点で検討した施策を、自社の経営戦略との整合や費用対効果等を踏まえ…
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