デジタル遺品に関する意識と対策の実態~アンケート調査結果より(2026年版)【リサーチレター(2026年7月)】
[このレポートを書いた専門家]

- 会社名
- MS&ADインターリスク総研株式会社
- 部署名
- 基礎研究部
- 執筆者名
- 主席研究員 新納 康介 Kousuke Niiro
2026.7.13
【要旨】
- 本調査は、デジタルサービス利用者500人を対象に、デジタル遺品に関する意識および対策の実態を把握することを目的として実施した。
- 「デジタル遺品」という言葉の認知度は一定程度あるものの、約3割は「全く知らない」という結果となり、用語自体の浸透にはなお課題があることが示された。
- デジタル遺品の整理経験がある人は15.4%(77人)であり、実際に故人のデジタル遺品に触れた経験を持つ人は少数であった。
- 故人のメールやSNSアカウント、サブスクリプションのアカウント、ネット証券・FX口座の放置によるリスクについては、いずれも多くの回答者が問題として認識していた。
- デジタル終活の必要性については86.0%が感じており、意識面では高い関心が確認された。しかし、デジタル終活を「完了している」人は3.0%にすぎず、必要性の認識と実践との間に大きな差がみられた。
- デジタル終活を「行う予定なし」とした回答者130人に、その理由を聞くと「まだ自分には関係ないと思っている」が最も多い回答となった。デジタル遺品の問題が理解されていても、「自分ごと」として捉えられていない実態がうかがえた。
- デジタル遺品の整理を「当事者として経験した」回答者は少数であるものの、経験者はデジタル終活の必要性の認識が相対的に高く、実践も進んでいる傾向がみられた。
- デジタル遺品の問題は、知識として理解されているだけでは十分とはいえず、実際の行動につなげるための周知・啓発が引き続き求められる。
目次
1.調査の目的・背景
2.調査の概要
- 調査実施期間
- 対象者条件
- 回答者数
- 回答者属性
3.調査結果
- デジタル遺品という言葉の認知度
- デジタル遺品の整理の経験
- 故人のデジタル遺品を放置することで起こる問題の認識
- デジタル終活の必要性の認識
- デジタル終活の実施状況
- デジタル終活を行う予定がない理由
4.考察
- デジタル遺品の整理経験別にみたデジタル終活への意識と実践
- 年代別にみたデジタル終活への意識と実践
- デジタル終活の必要性を認識しても実践が進まない理由
5.まとめ
1.調査の目的・背景
デジタル化の進展に伴い、故人が生前に保有していたデジタルデータやオンラインアカウントの扱いが新たな社会問題となりつつある。写真・動画・文書といった思い出のデータから、ネット銀行の残高や暗号資産、各種サブスクリプション契約に至る「デジタル遺品」は、一般的に高いセキュリティで管理されているため、遺族が整理やアクセスを試みても、手続き上の困難が生じる事例が報告されている。
こうした事情から、近年は万が一に備えて、PCやスマートフォンなどに関するアカウントやデータを整理・文書化し、遺族や関係者がデジタル遺品を適切に取り扱えるようにすることが奨励されている。
MS&ADインターリスク総研は、保有するデジタルデータやオンラインアカウントの死後の取り扱いに対するユーザーの意識および対策の実態を把握すべく、2026年5月に、SNS、サブスクリプション、金融のオンラインアカウントを保有するデジタルサービス利用者500人を対象にアンケート調査を実施した。本稿では、本調査の結果および分析結果を紹介する。
2.調査の概要
(1)調査実施期間
2026年5月22日~27日の間にインターネットによる調査を行った。
(2)対象者条件
① スマートフォンを所有し、日常的に利用している
② 過去3か月以内にSNSで投稿・メッセージ送信をした
③ 現在動画、音楽配信等の有料サブスクリプションサービスを本人負担で利用している
④ 電子マネー、ネット銀行口座、ネット証券・FX口座、仮想通貨のいずれかを保有する
(3)回答者数
500人(男性253人、女性247人)
30~39歳、40~49歳、50歳~59歳、60歳~69歳、70歳~79歳の年齢5区分ごとに100人ずつ
(4)回答者属性
① 職業
| 職業 | 人数 |
|---|---|
| 会社員 | 190 |
| 会社経営・役員 | 20 |
| 公務員 | 9 |
| 自営業・自由業 | 24 |
| 団体職員・各種法人 | 4 |
| 派遣社員 | 7 |
| パート・アルバイト | 72 |
| 学生 | 1 |
| 専業主婦・主夫 | 86 |
| 無職(定年退職者を含む) | 83 |
| その他 | 4 |
| 合計 | 500 |
②居住地域
| 居住地域 | 人数 |
|---|---|
| 北海道・東北 | 43 |
| 関東 | 241 |
| 中部 | 66 |
| 関西 | 82 |
| 中国・四国 | 29 |
| 九州・沖縄 | 39 |
| 合計 | 500 |
3.調査結果
(1)デジタル遺品という言葉の認知度
本調査ではまず、回答者に「デジタル遺品」という言葉を知っているかどうかについて聞いた。デジタル遺品という言葉は2015年頃から使われ始めたとされるが、本調査では約3割が「全く知らない」という結果となった(図表1)。
【図表1】あなたは、「デジタル遺品」という言葉をご存じですか


(2)デジタル遺品の整理の経験
本調査では、改めてデジタル遺品について説明※1をしたうえで、回答者にそういった遺品の整理をした経験があるかについて聞いた。経験が「ある」とした回答者は15.4%であった(図表2)。
【図表2】あなたは、過去にご家族が残したデジタル遺品の整理を行ったことがありますか


※1)調査票に以下の通り記載した。
デジタル遺品とは持ち主が亡くなった後に残されたデジタルデータやデジタル機器の事です。
デジタル遺品となりうるものには、以下のようなものが含まれます。
■ 金銭的価値を持つもの(デジタル資産)
- オンライン口座・金融サービス: 銀行、証券、FX、仮想通貨取引所など
- ECサイトのアカウント: Amazon、楽天、Apple、Google Playなどでのポイント、残高、登録情報
- サブスクリプション: 音楽、動画配信、ソフトウェアなどの有料会員権
- オンラインゲーム: アカウント、キャラクターデータ、ゲーム内通貨
- Webサービス: ドメイン、サーバー、Webサイト、ブログ、アフィリエイト収入
- 知的財産: 電子書籍、音楽、写真、制作したプログラムなど
- デジタル負債: クレジットカード情報、ローン残高、未払いのサブスクリプション料金など
■金銭的価値を持たないもの(思い出の品)
- コミュニケーション履歴: メール、LINE、SNS(Facebook、X、Instagram)のメッセージや投稿
- クラウドストレージ: Google Drive、iCloud、Dropboxなどに保存された写真、動画、文書
- PC・スマートフォン内のデータ: デバイス本体に保存されている各種データ
- デジタル機器: パソコン、スマートフォン、タブレット、外付けハードディスクなど
(3)故人のデジタル遺品を放置することで起こる問題の認識
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デジタル遺品はその多くが管理者が亡くなった時点からアクセスが困難なデータとなってしまい、遺族がその存在に気づかない状態で放置される可能性がある。本調査では、遺族がその存在に気づかずにデジタル遺品を放置した結果、起こりうる問題の認識について聞いた。
① 故人のメールやSNSアカウント
長期間ログインしていないメールやSNSのいわゆる「休眠アカウント」をそのままにしておくと、「なりすまし」や「個人情報の漏洩」といった形で第三者に悪用される可能性があることが指摘されている。これは放置された故人のアカウントも当てはまる。
この問題の認識について回答者に聞いたところ、「非常に問題だと認識」と「問題だと認識」の回答の合計は75.6%であった(図表3)。
【図表3】故人のメールやSNSアカウントが放置されることで、アカウントのなりすましや個人情報の流出の可能性があることについて認識していますか


② 故人のサブスクリプションのアカウント
一般的に動画配信、音楽サービス、クラウドストレージなどの月額課金は本人が死亡しても自動解約されることはないとされる。したがって、クレジットカードや口座が凍結されるまでの間は引き落としが続き、凍結後も未払いとして督促が発生するケースがあることが指摘されている。
この問題の認識について回答者に聞いたところ、「非常に問題だと認識」と「問題だと認識」の回答の合計は88.6%であった(図表4)。
【図表4】故人のサブスクリプションのアカウントを放置することで自動引き落としが継続する 可能性があることについて、認識していますか


③ 故人のネット証券・FX口座
ネット証券口座におけるFX(外国為替証拠金取引)や株式の信用取引は、遺族が口座の存在に気づかないまま時間が経過すると、その間に相場の動きによって評価損により追証※2や損失が発生し、負債が残る可能性が指摘されている。
この問題の認識について回答者に聞いたところ、「非常に問題だと認識」と「問題だと認識」の回答の合計は79.0%であった(図表5)。
【図表5】故人のネット証券・FX口座を放置すると遺族が相続の問題に巻き込まれる 可能性があることについて認識していますか


※2)「追証(おいしょう)」とは「追加保証金」の略で、信用取引やFXなどの取引で、担保(保証金や証拠金)の価値が一定の基準を下回った際に追加で差し入れなければならない資金を指す。
(4)デジタル終活の必要性の認識
万が一に備えて、PCやスマートフォンなどに関するアカウントやデータを整理・文書化しておく、いわゆる「デジタル終活」は、デジタル遺品という言葉が使われるようになった後に奨励されるようになった。本調査では回答者にデジタル終活の必要性を感じているかを聞いた。その結果「強く感じる」と「少し感じる」の合計は86.0%であった(図表6)。
【図表6】あなたは万が一の時に、遺族がデジタル遺品の整理に困らないように準備しておく必要性を感じますか


(5)デジタル終活の実施状況
本調査では、回答者に実際にデジタル終活(デジタル遺品の整理の準備)の実施状況を聞いている。その結果、3.0%が「完了している」と回答した。デジタル終活を完了している人はごく少数であることを示している。最も多い回答は「これから行う」(55.6%)であった(図表7)。
【図表7】現在、あなたが亡くなった後のデジタル遺品の整理の準備をしていますか


(6)デジタル終活を行う予定がない理由
ここでは、図表7においてデジタル終活を「行う予定なし(26.0%)」と回答した130人の回答者にその理由を聞いている。図表8にその結果を表している。最も多かった回答は「まだ自分には関係ないと思っている」(43.8%)で、「面倒くさい・時間がない」(31.5%)および「何から手を付ければいいかわからない」(29.2%)がそれに続く。
【図表8】準備を行う予定がない理由として、当てはまるものは何ですか(複数回答、n=130)


4.考察
ここでは、これまで紹介した調査結果をデジタル遺品の整理経験、および回答者の年齢(年代別)に基づくクロス集計による分析を行い、それらの要素がデジタル終活への意識と、実践にどう影響するかについて考察を試みる。
(1)デジタル遺品の整理経験別にみたデジタル終活への意識と実践
図表9は、図表2で示したデジタル遺品の整理経験と、図表6で示したデジタル終活の必要性の回答をクロス集計したものである。その結果、デジタル終活の必要性を「強く感じる」の回答において、未経験者が41.4%、経験者が66.2%と、開きがあることがわかる。
【図表9】あなたは万が一の時に、遺族がデジタル遺品の整理に困らないように準備しておく必要性を感じますか(デジタル遺品の整理経験別)


また、図表10は、図表2で示したデジタル遺品の整理経験と、図表7で示したデジタル終活の実施状況の回答をクロス集計したものである。デジタル終活が「完了している」の回答において未経験者が1.4%、経験者が11.7%と、開きがあることがわかる。
【図表10】現在、あなたが亡くなった後のデジタル遺品の整理の準備をしていますか(デジタル遺品の整理経験別)


これらの分析結果は、デジタル遺品の整理経験と、デジタル終活の必要性の認識および実践との関連(高くなる傾向)を示唆している※3。
※3)ただし、デジタル遺品の整理経験者は77名と少数であるため、傾向の把握にとどまる。
(2)年代別にみたデジタル終活への意識と実践
図表11は、図表6で示したデジタル終活の必要性の回答を年代別にクロス集計したものである。その結果、デジタル終活の必要性を「強く感じる」と「少し感じる」の回答の合計は、最も高齢の70代が93.0%と、最も高い値を示している。
【図表11】あなたは万が一の時に、遺族がデジタル遺品の整理に困らないように準備しておく必要性を感じますか(年代別)


また、図表12は、図表7で示したデジタル終活の実施状況の回答を年代別にクロス集計したものである。デジタル終活を「行う予定なし」の回答は、30代の36.0%から70代の12.0%に、年代が高くなるにつれ減少していることがわかる。
【図表12】現在、あなたが亡くなった後のデジタル遺品整理のための準備をしていますか(年代別)


ところが、図表12の結果では、デジタル終活が「完了している」と回答した割合は、70代で2.0%にとどまった。これは他の年代と比べると、30代、40代の5.0%よりも低かった。これらの結果から、年代が上がるにつれて、デジタル終活の必要性の認識に比べて実践が進みにくい(「これから行う」が増加する)傾向がわかる。
(3)デジタル終活の必要性を認識しても実践が進まない理由
本調査の結果から、デジタルサービス利用者の間でデジタル遺品の放置がもたらす問題はおおむね広く理解されていること、そして、デジタル終活の必要性も認識されていることがわかった。しかし、重要性の認識とは裏腹に、デジタル終活を完了している人はごくわずかであるということも明らかになった。
図表8で示したとおり、デジタル終活を行う予定がない理由として最も多かったのは「まだ自分には関係ないと思っている」であった。これを踏まえると、多くの回答者はデジタル遺品の問題やデジタル終活の必要性を一般的なものとして認識しているものの、「自分ごと」として捉えていない可能性がある。これは、図表9、10で示したように、デジタル遺品の整理を「当事者として経験した」回答者は、デジタル終活への意識が相対的に高く、実践も進んでいたことからも推察される※4。
※4)デジタル遺品を整理した経験は、デジタル終活を「自分ごと」として捉える契機になり得る。しかし、経験の有無は偶然性が高く、誰もが同じ機会を得られるわけではない。
5.まとめ
本調査からは、デジタル遺品の放置に伴う問題については一定の認識がみられる一方で、デジタル終活の実践はなお限定的であることが明らかとなった。デジタル終活の必要性を感じている回答者は多いものの、実際に準備を完了している人はごく少数にとどまり、認識と実践の間には依然として差がみられる。今後、故人のメール、SNS、サブスクリプションのアカウント、ネット証券・FX口座などの管理が行き届かないまま残される事態を避けるためにも、備えを進めることの重要性が改めて確認された。
また、デジタル遺品の問題は、知識として理解されているだけでは十分とはいえず、実際の行動につなげるための周知・啓発が引き続き求められる。デジタル遺品の整理やデジタル終活を身近な課題として捉えてもらうには、日常的に利用する各種サービスの契約情報やID・パスワードを整理しておく意義を、より具体的に伝えていく必要がある※5。
独立行政法人国民生活センターは、エンディングノートを活用してオンライン契約サービスやID・パスワードを整理しておくことを勧めており、デジタル遺品が十分に把握されないまま残されることによる不都合を憂慮している。今後は、こうした問題意識を広く共有し、デジタル終活の必要性について社会全体で理解を深めていくことが望まれる。本稿が、その一助となれば幸いである。
※5)例えば、デジタル終活の第一歩はパソコンとスマホのログインパスワードを共有することであり、それは5分もあればできるとの指摘がある。こういったことの周知が必要かもしれない。
【参考文献】
- 独立行政法人国民生活センター(2024)『今から考えておきたい「デジタル終活」-スマホの中の“見えない契約”で遺された家族が困らないために-』
- 萩原栄幸(2015)『「デジタル遺品」が危ない』ポプラ社
- 古田雄介(2020)『スマホの中身も「遺品」です』中央公論新社
- LIFULL senior(2026)『故人とのデジタル遺品に関する会話、9割が「不十分」|約半数が生前に「特に備えていなかった」と回答』
https://m-ihinseiri.jp/article-1/news/0004/ - KDDI(2020)『TwitterなどSNSの『休眠アカウント』を放置すると危険? 確認や削除の方法を解説』
https://time-space.kddi.com/mobile/20200407/2877.html - 日本生命(2021)『デジタル遺品とは? 安全に生前整理をしてトラブル回避する方法』
https://www.nissay-biz-site.com/article/dr_9iaxj8
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