レポート/資料

小規模事業場におけるストレスチェック義務化対応のポイント【人的資本・健康経営インフォメーション(2026年7月)】

[このレポートを書いたコンサルタント]

会社名
MS&ADインターリスク総研株式会社
部署名
リスクマネジメント第四部 
人的資本・健康経営グループ
執筆者名
上席コンサルタント 岡田 拓巳

2026.7.1

要旨
  • 改正労働安全衛生法の成立により、労働者数50人未満の事業場におけるストレスチェック実施義務化が決定された。
  • 小規模事業場におけるストレスチェックでは、従業員のプライバシー保護や実効性の観点から原則として外部機関への委託が推奨されている。
  • 本稿では、厚生労働省より公開された実施マニュアルを基に、小規模事業場におけるストレスチェック義務化対応のポイントを解説する。

1.小規模事業場におけるストレスチェック実施義務化の背景

2025年5月に改正労働安全衛生法が成立し、労働者数50人未満の事業場(以下、「小規模事業場」という)におけるストレスチェックの実施が義務化されることとなった。また、令和8年6月10日付官報(号外第128号)により、施行日は2028年4月1日であることが示された。これは、従来努力義務とされていた小規模事業場においても、メンタルヘルス対策を実効的に進める必要があるとの国の判断に基づくものである。

ストレスチェック制度は、労働者に自身のストレスの状態に気づくきっかけを与え、必要に応じて医師による面接指導や職場環境改善につなげることを目的としており、2015年12月1日より50名以上の事業場においては既に実施が義務付けられている。

今回、小規模事業場へ実施義務が拡大された背景には、図1のとおり精神障害の労災支給決定件数が増加傾向にある中で、小規模事業場では、メンタルヘルス対策やストレスチェックの実施率が十分とはいえない状況がある。

図1 業務災害に係る精神障害の請求、決定及び支給決定件数の推移

業務災害に係る精神障害の請求、決定及び支給決定件数の推移
業務災害に係る精神障害の請求、決定及び支給決定件数の推移

出典:厚生労働省「令和6年度過労死等の労災補償状況」

2.小規模事業場におけるストレスチェック実施の現状と重要性

令和6年厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、メンタルヘルス対策に取り組んでいる割合は、労働者数30~49人の事業場では69.1%、10~29人の事業場では55.3%にとどまっており、さらにストレスチェックを実施している事業場は、労働者数30~49人、10~29人のいずれの規模でも6割弱程度と低調である。

しかし、小規模事業場にとってのメンタルヘルス対策やストレスチェックの実施は、単なる法令対応ではなく、事業継続性を高める施策としても重要である。小規模事業場を対象とした調査ではないが、平成28年度厚生労働省「病休と復職支援に関する調査と分析」によれば、従業員にメンタルヘルス不調が生じた場合、1回目の平均的な休職期間は107日(約3.5カ月)とされている。さらに、復職後に再休職するケースも約半数とされ、仮に少人数体制の事業場でこのような事態が起きた場合、大規模な事業場に比べ事業運営における人的影響は大きくなると考えられる。

一方で、令和3年度厚生労働省「ストレスチェック制度の効果検証に係る調査等事業」報告書によれば、ストレスチェック受検者の約7割が「自身のストレスが分かったこと」を有効と評価している。また、医師による面接指導を受けた者の過半数が、その面接を有効と回答している。これらを踏まえると、ストレスチェックはメンタルヘルス不調の早期発見や早期対応につながることが期待される。ひいては、小規模事業場における従業員の長期休業リスクの低減を通じて、人材確保・定着や経営安定化に資する可能性がある。

そこで、本稿ではストレスチェック制度の概要を説明しながら、厚生労働省が公表した「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(以下、「実施マニュアル」という。)を踏まえ、小規模事業場に求められる対応と実施のポイントを解説する。

3.小規模事業場におけるストレスチェック制度の概要

本章では、小規模事業場におけるストレスチェック制度の概要について解説する。特に断りがない場合、以下の記載は実施マニュアルに基づく小規模事業場向けの内容である点にご留意いただきたい。

(1)ストレスチェックの対象者について

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