GRCトピックス(2026年7月)
2026.7.1
G(ガバナンス)・R(リスク)・C(コンプライアンス)に関する国内・海外の最近の重要なトピックスを紹介します。
危機管理
会社法制見直し中間試案における責任限定契約制度の動向
2026年3月18日、法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会は、「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」(以下「中間試案」という。)を取りまとめた。同年4月2日から5月22日までパブリックコメントによる意見募集が実施され、現在は寄せられた意見の集約・検討が進んでおり、最終的な制度設計の行方が注目されている。
近年、企業には、新規事業への投資、DXの推進、サプライチェーンの再構築、地政学リスクへの対応など、高度かつ迅速な経営判断が求められている。他方で、部会での議論では、経営判断に伴う責任リスクも高まっており、役員が責任追及を過度に恐れることで、企業成長に必要なリスクテイクが阻害され、萎縮しないよう検討すべきとの意見も出ている。
こうした状況を背景に、中間試案では、経営陣による適切なリスクテイクの促進を図る観点等から、①株式の発行の在り方に関する規律の見直し、②株主総会の在り方に関する規律の見直し、③企業統治の在り方に関する規律の見直し、の3つのテーマについて幅広い検討が行われている。
特に、企業統治に関する見直し項目には、指名委員会等設置会社制度の見直しや、事業報告等と有価証券報告書の開示合理化に加え、役員の責任に関する論点の一つとして責任限定契約制度の見直しがある。
責任限定契約制度の見直しとして、次の1及び2の規律を設けるものとする。
- 株式会社が責任限定契約を締結することができる相手方に業務執行取締役等(会社法第2条第15号イに規定する業務執行取締役等をいう。以下同じ。)である取締役及び執行役を加える。
- 株式会社と業務執行取締役等である取締役又は執行役との利益が相反する状況にあるときに行われた行為(注1)に基づく当該取締役又は執行役の会社法第423条第1項の責任については、責任限定契約による責任の限定の対象外とする。(注2)(注3)
(注1)規定の具体的な文言については、法制的な観点を含めて引き続き検討する。
(注2)「職務を行うにつき善 意でかつ重大な過失がないとき」という責任限定契約における現行法上の責任の限定の要件は、業務執行取締役等である取締役及び執行役にも適用されることを前提にしている。
(注3)会社法第 425条又は第 426条の株主総会の決議又は定款の定めに基づく取締役等による責任の一部免除制度については、同趣旨の規律を設けないことを想定している。
(後注)潜脱防止のための追加的な手当ての要否については、引き続き検討する。
(出典:「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」より抜粋)
「責任限定契約制度」は、会社法第427条に基づき、会社が取締役や執行役などの役員等と契約を結び、任務懈怠があった場合に、会社に対して負う損害賠償額の上限を定める制度である。現行制度の対象は、社外取締役を含む非業務執行取締役や監査役等に限られる。中間試案では、対象を広げ 、業務執行取締役や執行役も加わる案が示された。なお、会社の利益と相反する場面で行った行為に伴う責任は、引き続き対象外とする案となっている。
2026年6月29日現在では、法務省によるパブリックコメント結果の取りまとめは未公表だが、責任限定契約の対象拡大については、日本経済団体連合会や日本弁護士連合会などがおおむね賛成の意見を表明している。 一方で、株主の責任追及権が実質的な制約を受ける恐れや、安易な経営判断につながる懸念などから、同制度の見直しについては慎重な検討を求める意見もみられる。
今後は、パブリックコメントの結果や法制審議会での議論を通じて制度設計が具体化していく。 企業としては、中間試案の背景や議論状況を踏まえ、自社のガバナンス体制や役員責任のあり方を検討し、必要な準備を進めることが重要だ。
参考情報:法務省HP https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00333.html
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